環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第39講「PSE法騒動やぶにらみー付:プルサーマル&水俣病再説」
第38講「文明崩壊」を読む
第37講 「新春呆談」
第36講 「本時評の2年半を振り返る(その4)付:2005年環境十大ニュース」
第35講 「本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他」
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No. 第38講「文明崩壊」を読む
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Issued: 2006.03.02
H教授の環境行政時評(第38講 その2)
温暖化四方山話

Aさん―まずは温暖化の話題からいきますか。
ロシアの天文学者が、近年太陽活動が停滞しており、6〜7年先には小氷期、ミニ氷河期に入るかもしれないという予測を発表しましたね。
だとしたら、むしろ温暖化したほうがいいんじゃないですか。

H教授―そのニュース、どこまでホントかわからないし、たとえホントだとしても、温室効果ガスを人為的に増やして小氷期入りを防ごうなんて傲慢なことを考えると、とんでもないしっぺ返しを食らうよ。
太陽や地球の大循環は受け入れなきゃしかたがないし、一方じゃ、大気や水などの環境条件を人為で変化させようなんて考えちゃいけないんだ。
つまり温室効果ガスの排出抑制は必要なんだ!

Aさん―ま、お説はお説として伺っておきましょう。じゃ、これはどうです。
(最近のネーチャーに発表された論文によると)森林はメタンガスの増加に寄与していることになり、植林をすればするほど温暖化ガス発生量が増えてしまうことになります。森林総研が追試を行い、スギとカシの葉からのメタン放出を確認したとのことで、環境省や林野庁はどう対応したらよいのか、パニック状態に陥っているとのうわさを聞きました。H教授のご意見を。
前回のお便りです。

H教授―もともと樹木からは微量のテルペン類炭化水素が放出され、それが森林浴効果をもたらすというフィトンチッドの本体だという話もある。だから同じ炭化水素のメタンを樹木が放出しても不思議じゃあない。
問題はメタンの発生量だよ。そりゃあメタンは二酸化炭素に比べると温暖化係数は高いけど、二酸化炭素の吸収量に比べれば微々たるもので、吸収源としての効果のほうが圧倒的に高いんじゃないかな。ま、その話は専門家に今度聞いてみるよ。
それより、温暖化絡みの国際政治のほうがおかしくなってきている。

Aさん―どういうことですか?

H教授―カナダの政変だ。1月末の下院選挙で保守党が勝利し、ハーパー政権が成立した、このハーパーさんは京都議定書を蛇蝎のごとく嫌っているという話だ。

Aさん―じゃあ、そのハーバーさんがブッシュさんと手を組むと、大変なことになるじゃないですか。
H教授―保守党勝利の原因が自由党政権の京都議定書批准にあるとは思えないし、いったん批准したものをそう簡単に反故にはできないと思うけど、第二約束期間のことを考えると心配ではあるね。
ただ、一方ではそのブッシュ政権が1月末の一般教書演説【5】で、米国は石油依存症から脱却すべきだなどと言い出している。2025年までに中東から輸入する石油の75%を代替するという目標を掲げているそうだ。そのための技術的なブレークスルーに全力をあげ、クリーンエネルギーを開発するとのことだ。

Aさん―やっと温暖化対策に取り組むということですか。

H教授―温暖化のことは正面からは言ってないけど、温暖化対策に不熱心だという米国内の批判を気にしてるのは間違いないだろう。もちろんメインは中東をめぐる国際情勢にあると思うけどね。一方じゃ、アラビアが中国と急接近しているという話もあるそうだ。

Aさん―そういえばブッシュさんは原子力開発にも熱心ですね。

H教授―うん、スリーマイル事故以降、米国は新しい原発建設はやめたけど、ブッシュさんになってから方向転換し出したし、最近は日本同様、核燃料の再処理路線に舵を切り替えたという報道もあった。
バイオエネルギーにも力を入れるそうで、トウモロコシからのエタノール生産などに本格的に取り組むかもしれないなどいう話もある。
飼料からエネルギー資源になるってわけだ。

Aさん―そうなると世界の食料事情や、米国のトウモロコシを飼料にしている日本の畜産業にも影響するんじゃないですか。驚かしっこなしですよ。

H教授―ま、それが実用化するようになる前に米国の水資源が枯渇するかもしれない。農業で膨大な地下水を使っているんだが、地下水位の低下が米国農業にとって危険領域に入りつつあるなんて話もある。
【5】 一般教書演説(State of the Union Address)
米国大統領が、両院の議員を対象に行う演説で、国の現状(State of the Union)についての大統領の見解を述べ、主要な政治課題を説明するもの。アメリカ合衆国憲法に規定されている。慣例として、1月末の火曜日に行われることが多い。
 日本における内閣総理大臣の施政方針演説に相当。
 なお、2003年1月29日にブッシュ大統領によって行われた一般教書演説は、「悪の枢軸」発言を含んでいたこともあり、米国内メディアだけでなく国際的にも注目を集めた。
PRESIDENT GEORGE W. BUSH'S ADDRESS BEFORE A JOINT SESSION OF THE CONGRESS ON THE STATE OF THE UNION (January 31, 2006)(2006年1月末の一般教書演説(2006/1/31))
Past Presidential Addresses to Congress(歴代大統領の一般教書演説)(演説の映像と文書を閲覧できる)
ジョージ・W・ブッシュ大統領による一般教書演説(米国議会、ワシントンD.C. 2003年1月28日)[在日米国大使館]

Aさん―センセ、センセイ。話が拡散しすぎです。大体センセイの話は、みんなどこまでホントかわからない又聞きでしょう。

H教授―又聞きかどうかが問題じゃない。たとえ又聞きをつなげ合わせただけにしても、それが論理的かどうか、きちんと整合したストーリーになっているかどうかが問題なんだ。

Aさん―もっと、なんか夢のある話はないんですか。
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パプアニューギニアの大秘境
H教授―そうそう、パプアニューギニアで一気に二十数種の動物の新種がみつかったという話があった。百万ヘクタール以上の熱帯雨林が広がり、うち30万ヘクタールは人跡未踏の地だそうだ。こういうところは永遠に保存して欲しいねえ。

Aさん―日本じゃ考えられないですね。

H教授―もう30年以上昔の話のことだけど、自然環境保全基礎調査の一環で都道府県にお願いして「原生流域調査【6】」というのをやったことがある。人為的な道路やダムなどの工作物が一切なく、森林にも人手が入ってない流域がどの程度残っているか、調べたんだ。西日本、南日本にはほとんどなかったけど、中部・東北日本にはかなり残っていたよ。今でも結構残っているんじゃないかな。

Aさん―えっ? 人跡未踏の地が日本に?

H教授―いやあ、釣り人なんかは当然入っているから、人跡未踏とはいえないけど、それでも貴重だよね。

Aさん―そういうところは国立公園だとかの保護地域になっているんでしょう?

H教授―いやあ、なっていないところも結構あった。

Aさん―どうしてですか。
【6】 原生流域調査
自然環境保全基礎調査の河川調査の一環として実施
H教授―どうしてったって、マスコミも騒がなければ、保護団体の陳情もないようなところを保護地域にするってのは容易じゃなかったんだ。そうしたところは大抵国有林なんだけど、当時、林野庁のガードは固かったからなあ。
ま、そのなかの最大の「原生流域」が秋田と青森の県境に広がる白神山地だった。これは、なんとか国内法で自然環境保全法の「自然環境保全地域」になり、その後、世界遺産に登録されたけどね【7】
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【7】 自然環境保全地域と白神山地
第26講(その4)「自然環境保全地域等の蹉跌」
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