環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第40講「50年、過去と未来 付:第三次環境基本計画」
第39講「PSE法騒動やぶにらみー付:プルサーマル&水俣病再説」
第38講「文明崩壊」を読む
第37講 「新春呆談」
第36講 「本時評の2年半を振り返る(その4)付:2005年環境十大ニュース」
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No. 第39講「PSE法騒動やぶにらみー付:プルサーマル&水俣病再説」
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Issued: 2006.04.06
H教授の環境行政時評(第39講 その3)

Aさん―でも実際にはそんな規制はまったくしてなかったんでしょう?

H教授―うん、中古業者には周知期間が極端に短かかったなんて批判されてるけど、周知期間が短いも何も、経産省自体が去年か今年に入ったあたりに、この条文だったら中古業者・中古品も規制対象だと解釈できるな、じゃそう解釈しよう、と決めたんじゃないかな。マサカこんな騒ぎになるなんて夢にも思わずに。
なんでも大手リサイクル業者から問い合わせがあったそうだから、それがきっかけだったかもしれない。
役人は規制対象を広げるのが好きだし、その方が国民の安全にもより寄与することになると強弁できる。そして、その方が登録検査機関の仕事が増えて天下るチャンスも増えるかもしれないなんて浅知恵もあったんじゃないかと邪推したくもなる。
つまり、当時はリユースとかリサイクルを阻害したり、レトロ音楽文化を妨害する一面を持つといったことは、きっとまったく念頭になかったんだと思うよ。
だから文化人やリサイクル業者などから非難を浴びると、土壇場になって次々と後退させていく。だけどいったん中古品や中古業者も規制対象だと公言した以上、それだけはどうしても引っ込めるわけにいかないというのが事の真相じゃないのかな。

Aさん―マサカ〜! それはセンセイのとんでもない憶測、妄想じゃないですか。
それに中古品といえど、やはり一定の安全性の確保は必要なんじゃないですか。

H教授―その辺りは、大きな政府か小さい政府かということに係わってくる。
「小さい政府」原理主義だと、それは消費者の自己責任だし、そもそも安全性を無視するような業者からは誰も買わなくなって市場から淘汰されていく。その間に被害にあった消費者は法廷で争えばいいということになる。

Aさん―そう言われればそんな気も...。

H教授―しかし、少なくとも中古業者も含めた製造・輸入・販売業者と消費者の責任範囲についての理念的なルールぐらいは作る必要があるだろう。
PSEマークのようなマークシステムも意味がないとは言わない。エコマークなんてのもあるしな。
だけど、マークがなければ販売できないというのはやりすぎだと思う。それに、下衆の勘繰りげすのかんぐりかも知れないけど、マークの認証料をアテにしたり、天下りと連動させようという意図も感じられるもんなあ。

Aさん―じゃセンセイはどうすればいいと?

H教授―平成7年には製造物責任法、略称PL法が施行されている。
PLとはProduct Liabilityのことで、製造物の欠陥で事故が起きたときはメーカーや輸入業者が損害賠償責任を負うという法律だ。
従来の民法の大原則であった過失責任を欠陥責任原則に転換した被害者保護の法律なんだけど、これを改正して製造者、輸入業者、販売者、消費者の責任の理念的な分担を中古品も含めて盛り込めば、そもそも電気用品安全法なんて法律自体不要じゃないかと思うし、それこそが真の規制緩和だと思うけどね。
まあ、まったくのド素人がいうことだから、ボクの言ってることがどこまで的を得ているかは、わからないけど。

Aさん―ご高説かご荒説かはわかりませんが、拝聴しておきましょう。
でもきっと、「根拠のない憶測妄想やデタラメを公的なウェブに載せるのは何事か!」なんて苦言がどっと来ますよ。

H教授―いいじゃないか、そうすれば労せずに勉強できる。それに意外と真相の一端を衝いているかも知れないという変な自信もないわけじゃないんだ。

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原発開発の新動向
Aさん―ところで第18講で畑違いの原発、とりわけ核廃棄物とプルサーマルの問題をとりあげてちょっと話題を呼びました【6】けど、どうやらプルサーマルが動き出したようですね【7】

H教授―うん、先行していた関電や東電の原発はプルサーマル計画について国の許可や地元了解を得ていたが、トラブル隠しだとか燃料データ改竄などが発覚して頓挫、地元了解は白紙撤回・凍結状態になっていた。
しかし、玄海原発(九電)をトップに伊方原発(四電)、浜岡原発(中電)が動き出した。玄海原発では国の許可も昨年とったし、今日、地元佐賀県も事前了解を出したというニュースが流れていた。早ければ2010年度までに全国初のプルサーマルが運行されるようになるかもしれない。

Aさん―海外でも原発復帰の動きがあるようですね。
【6】 畑違いの原発論
第18講「キョージュ、無謀にも畑違いの原発を論ず」
【7】 動き出した、プルサーマル計画
九州電力 プルサーマル計画
四国電力 プルサーマル計画の申し入れ
中部電力 浜岡原子力発電所におけるプルサーマル計画について
志賀原発2号機(北陸電力)で発生したトラブル

H教授―うん、米国はブッシュ政権になってから急展開したし、このところ温暖化対策優等生の英国やドイツでも自然エネルギーだけじゃどうにもならないと、脱・原発路線を見直す動きが出てきたと新聞にあった。

Aさん―日本で動き出した背景は何かあるのですか。

H教授―やはりオカネじゃないかな。原発所在地はおおむね豊かでない地域だ。昨今の景気回復も多分及んでいないだろう。
電源立地地域対策交付金など原発関連の交付金【8】はプルサーマル実施予定自治体には手厚く配分するそうだから、のどから手が出るんだろうな。
でも電力会社も国策だからお付き合いしているだけで、本音のところでは原発から手を引きたがっているという話をよく聞く。どこまで本当だかわからないけど。

Aさん―そうしたときに原発に水を差すような判決が出ましたね。
石川県の志賀原発2号機(北陸電力)の運転差し止めを求めた民事訴訟で、3月24日、富山地裁は原告勝訴の判決を下しました。
プルサーマルや炉自体の危険性については原告の主張は採用しませんでしたが、現在の耐震設計は不十分で、想定を超えた地震が起きた場合、事故が起り原告等が被曝する可能性があるとしています。

H教授―この2号機は今月運転開始したばかりの新しい原発で、国の原子力安全委員会【9】が'81年に決めた原発の「耐震設計審査指針【10】」にのっとった設計をしているんだけど、地裁はこの審査指針自身がその後の地震や活断層研究の成果を踏まえていない、つまり甘すぎるとしたんだ。
原子力安全委員会もこの指針が古くなってきたこと自体はわかっていて、'01年から見直し作業を始めたんだけど、いまだに成案を得ていない現状らしい。
ちょうどその間隙を縫った大胆な判決だったな。

Aさん―ただちに控訴したらしいですね。

H教授―そりゃあそうだろう。それにこの判決は仮執行宣言がついていないから、最高裁までいって判決が確定しない限り効力を発しない。
今までの同種の訴訟では概ね原告敗訴になっているし、被告会社や経産省は高裁、最高裁では当然ひっくりかえるとタカをくくってると思うし、またそうなる可能性は大きいと思うよ。

Aさん―いくら地裁段階とはいえ、判決ってそんな軽いんですか。三権分立で司法の役割は重大だし、それなりにきちんと受け止めなきゃいけないんじゃないんですか。
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【8】 原発関連の交付金
電源地域に交付される主な交付金、補助金の概要について[資源エネルギー省]
パンフレット「電源立地制度の概要」(平成16年度版)[(財)電源地域振興センター]
電源三法活用事例集[財団法人電源地域振興センター]
【9】 原子力安全委員会
 原子力関連の行政府からは独立・中立した国の機関。原子力基本法、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法及び内閣府設置法に基づいて、内閣府に設置されている。
 主な活動として、
 ・原子炉の設置許可などに関する安全審査の実施
 ・設置許可のあった原子力施設に対して規制行政庁が実施する「後続規制」活動の監視・監査と、不断の改善・向上促進を目的とした「規制調査」の実施
 ・原子力安全に関する指針類の整備
 ・原子力施設に関する事故などへの対応
原子力安全委員会(Nuclear Safety Commission of Japan)
【10】 耐震設計審査指針
安全審査指針集「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和56年7月20日原子力安全委員会決定)」
原子力安全規則 発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針[原子力百科事典 ATOMICA]
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