環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第42講「キョージュ、今国会での成立法案を論じる」
第41講 「エコツーリズム推進法案と国立公園」
第40講「50年、過去と未来 付:第三次環境基本計画」
第39講「PSE法騒動やぶにらみー付:プルサーマル&水俣病再説」
第38講「文明崩壊」を読む
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No. 第41講 「エコツーリズム推進法案と国立公園」
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Issued: 2006.06.02
H教授の環境行政時評(第41講 その3)
環境省提出法案

Aさん―そういう意味では時代の犠牲者なんですねえ。
ところで、今国会で環境省はどんな法案を出しているんですか。

H教授―2月に石綿新法とそれに関連する大気汚染防止法改正が成立したけど、今、審議中が5本。容器リ法(容器包装リサイクル法)鳥獣保護法フロン回収・破壊法温暖化対策法(地球温暖化対策推進法)国立環境研究所法の改正らしいけど、次回にまとめて話そう。なんでも容器リ法の成立が微妙らしいけど、あとは成立しそうだという話だよ。

Aさん―議員立法の方では何か動きがないんですか。

H教授―前講でちょっと話した水俣病認定業務促進法改正案とカネミ油症救済新法案は与党内調整が難航、時間切れのまま提出できない可能性が強そうだ。ま、カネミ油症救済新法による返済義務免除については必ずしも新法がなくても対応可能だそうだけど。
あ、そうそう。前講でカネミ油症の死者を300人と最初書いたら、読者の方からさっそく間違いだとの指摘を受けた。
二次情報をもとに書いたんだが、調べてみたら、急性中毒による死者はゼロ、訴訟を起こした多くの被害者の方のうち、長期に渡る裁判期間中に300名が亡くなられているんだけど、必ずしもカネミ油症が原因ではなかったらしい。
この情報が、いつのまにか「死者300名」として独り歩きしたらしいとわかったので、削除しておいた。(読者に向かって)どうもご指摘ありがとうございました。以降、気をつけます。
あとねえ、やはり議員立法でエコツーリズム推進法案が出ている。

Aさん―へえ、なにか背景があるんですか。

H教授―まあ、これはボクの想像だけど、観光を地域活性化の目玉にしたいという話があって、観光基本法を43年ぶりに全面改正した「観光立国基本法」というのを議員立法で進めているようなんだ。それとの関連じゃないかな。

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回想―総理府審議室の日々
Aさん―観光基本法ってセンセイ、一時期関わっていた法律なんじゃないですか。

H教授―うん、カクさん(田中角栄)全盛期の頃だ。昭和47年から49年まで内閣総理大臣官房兼内閣官房審議室というおどろおどろしい名前の部署にいた。各省にまたがる課題の連絡調整や、どの省にも属さない課題を処理するという名目の部署だ。内閣調査室って聞いたことあるだろう。

Aさん―ああ、日本のCIAといわれているものですね。

H教授―(苦笑して)そんな大層なものかどうかはわからないが、この内調と同格の組織で室長は大蔵省(当時)からの出向で局長と同等の扱いだった。
面白いのはその組織で、審議室の大半は各省エリートの出向組から構成されていた。
課長級の参事官というのが各省から10人くらい出向していて、そのもとに参事官補佐が各1名、主査が数名という組織なんだ。
こんな場合、普通は参事官−補佐−主査でひとつの部屋に入るんだけど、ここの場合参事官だけが一堂に会した参事官室というのがあって、その他大勢は全員大部屋という構成なんだ。だからまったく関連のないバラバラの仕事を持った者の集まりで、各省のエリートの発想なんかがわかって面白かった。

Aさん―そんな話はいいですから、早く話を進めてください。

H教授―へいへい。で、ボクは観光・事故担当参事官のもとで観光担当主査。

Aさん―事故担当?

H教授―うん、大きな事故など──ハイジャックもそうかな──が起きた場合は、ここが関係各省の連絡調整の中心になるってことなんだけど、ボクの在任中は1回もそういうことはなかったから、中身はよく知らない。
あとボクの班には、ボクの他に主査が二人いて、彼らは一応名目上は事故担当主査なんだけど、実際は事故がなかったから全員観光担当主査。一人は運輸省からの出向だったけど、後に国土交通省の事務次官になった。

Aさん―へえ、三流キョージュとえらい違いですね。

教授―四流院生にゃ言われたかないね。それにマージャンはボクの方がうまかった。

Aさん―で、観光担当の仕事ってなんだったんですか。アタシャ、これでも忙しいんだから、手短に話してください。

H教授―わかった、わかった。この観光基本法の庶務ということで、観光白書の編集と観光政策審議会の事務局というのがメインの仕事だった。

Aさん―あ、見たことあります。あんな分厚い観光白書をセンセイが書くんですか。

H教授―ばか、書くわけないだろう。スケルトンっていって、詳細な目次とそれぞれの執筆担当省庁を決めたものをつくって、各省に書いてもらうんだ。もっとも前年のものをなぞるのが普通なんだけどね。

Aさん―なんかトラブったことはなかったんですか。

H教授―ちょうど自然環境保全法ができた年だったから、環境庁に頼んで「観光資源の保護」の章に絡めて長文の文章を書いてもらった。そしたら大蔵省の主計局の主査に呼びつけられた。
あわてて、参事官補佐と一緒に行ったんだけど、いやあ、机の上にデーンと足を乗せて、観光ごときと自然環境保全法を一緒にするとは何事だ、全文削除しろって、いきなりどやしつけられた。あれほど居丈高で傲慢な役人というのは見たことがなかったなあ。
今じゃあ観光と自然環境保全を結びつけるキーワードとして「WISE USE」だとか「エコツーリズム」があるけど、当時は観光は所詮物見遊山と安っぽく見られていたんだ。

Aさん―で、どうしたんですか。

H教授―全文削除なんてできるわけがないから、短くして載せるということで、なんとか納得してもらったけど、いやあ、一週間くらいは悔しくて眠れなかったな。

Aさん―ふうん、でも白書っていっぱいありますねえ。

H教授―白書といっても各省庁が自主的につくるものと、法律で作成と国会への報告が義務付けられているものがあって、環境白書や観光白書は後者。白書は俗称で正式名称は別にあるんだ(例えば、平成17年度版観光白書は、「平成16年度観光の状況」及び「平成17年度観光政策」として国会に報告されたものの俗称)。
この国会に報告する報告書(白表紙の簡易製本)の表紙だけを変えたものを、観光白書として大蔵省印刷局から発行して市販していた。結構白書のなかでは売れ行きのいい方だったよ。

Aさん―その場合の印税はどうなるんですか。

H教授―いやなことを聞くなあ。印税は出ないけど、その代わり編集料という名目でオカネが入ってくる。それで各省庁の実際の執筆してくれた人たちを集めてパーティをやり、そのほかにも大量に書いてくれた部署にはビール券などを渡していた。

Aさん―(疑わしそうに)それだけですか。

H教授―うーん、ボクが財布や帳簿を管理していたわけじゃあないから詳しくは知らないけど、残りは審議室や観光班の“ウラガネ”にもなったみたいだ。
その後、こういうウラガネ作りが世間の批判を浴びることになったので、現在じゃあ、どこの役所もウラガネは作っていないと思うけどね。

Aさん―もうひとつ観光政策審議会の庶務もやっていたんですね。

H教授―うん、若き日の堤義明サンなんかもいた。なんだか超大物ぞろいだから、委員センセイとの付き合いはまったくなかった。ただ当時、国際観光のあり方とかなんとかの諮問があって、答申の起草を任されたのが川喜多二郎先生。
小委員会形式だったかどうか今じゃ記憶はないけど、しょっちゅう観光班全員と川喜多二郎先生とで国際観光の現状と課題と展望はなにかを議論して宿題を出されるんだ。ところがそれを例のKJ法でやれってくるんだ。最初はマジメにKJ法でやってたけど…。

Aさん―けど?

H教授―後になると、宿題の答えのストーリーを考えて、それをわざわざKJ法でやったかの如くに図化して、先生のところに持っていった。「キミ達はこれでKJ法免許皆伝だ」と言われてムズムズしたことを覚えている。

Aさん―ぷっ。さすが、手抜きの天才ですね。
今でもその審議室とやらはあるんですか。

H教授―組織改変が何度かあって、外政審議室と内政審議室に分かれたりしたけど、中央省庁再編で解体した。観光班もなくなり、観光基本法の庶務は国土交通省に移った。

Aさん―センセイご自身は、審議室のあとは?

H教授―運輸省から出向してきた参事官に、環境本庁じゃなくレンジャーに戻してくれるよう環境庁にかけあってくれと陳情。それが実って、九州は霧島の「えびの高原」のレンジャーに赴任した。
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