環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第43講 「拡大ミティゲーション論」
第42講「キョージュ、今国会での成立法案を論じる」
第41講 「エコツーリズム推進法案と国立公園」
第40講「50年、過去と未来 付:第三次環境基本計画」
第39講「PSE法騒動やぶにらみー付:プルサーマル&水俣病再説」
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No. 第42講「キョージュ、今国会での成立法案を論じる」
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Issued: 2006.07.06
H教授の環境行政時評(第42講 その2)
エコツーリズム推進法案をめぐって

Aさん―その顛末はあとで聞くとして、前講で取り上げた議員立法の「エコツー推進法案」はどうなったんですか。

H教授―うーん、事前調整の段階で野党から異論も出て、時間切れのまま提出できずに終わった。次期国会までに調整を終えて提出したいといってるらしい。
これに関して、前講でお便りをいただいた。
「今回のエコツーリズム推進法案ですが、ちょっと、ブログ「コモンズ的視点を欠いたエコ・ツーリズムでいいのか?」に、感想を書いてみました。」とのことだ。ボクも読んでみたけど、地方からの視点でのなかなか鋭い切り口だと感心させられた。

Aさん―それだけじゃなんのことだかわかんないじゃないですか。それに他人のブログのURLを勝手に公開していいんですか。

H教授―公開に関してはエコツー協会の理事もされている公人の方だから問題はない。
いくつか指摘されているが、大きくは以下4点に集約できるのではないか。
第1に、自然観光資源を守り育んできたオーナーへの換金回路がなく、推進法でなく規制法になっているのでないのかということ。
第2に、「特定自然観光資源」が点的保全で、ネットワークでの保全という観点が欠如しているのでないかという指摘。
第3に、市町村単位だとダブルスタンダードになる危険があるのでないかという懸念。
第4に、「特定事業者」というエコツー業者の役割として、「全体構想の素案を添えて、協議会の組織を提案することが可能」と法案ではしているんだけど、リゾート法全盛期のように、東京のコンサルが結局のところ跳梁跋扈するんじゃないかという懸念だ。
事実、80年代末期のリゾート法に基づく全国各地の計画なんて、ほとんどが似たり寄ったりの三点セットだったもんな。

Aさん―三点セットって?

H教授―山岳地帯だとスキー場、ゴルフ場と分譲別荘。海岸だとマリーナ、ゴルフ場と分譲別荘。この三点セットで東京のコンサルが地方のリゾート計画を立ててまわったんだ。

Aさん―ところで先の4点のご指摘、センセイはどう思われるんですか。

H教授―いずれも傾聴すべき論点だと思う。
第一点目に関してだけど、民有地とか土地所有者と一口にいってもいろいろだ。特に山間僻地へ行けば行くほど、近代以前からの入会慣行に起源を発する昔ながらの共有地、部落有地が少なくない。
このような自然観光資源は、コモンズ的な意味合いを持ち、「使いながら育てる」という、長年の地域の人の知恵に支えられているものなのであり、決して、プレパラートのごとく、凍結的保存をし、特定の許可されたものだけが、その希少性を享受するという、閉鎖的な環境観光クラブ的な発想では、その自然観光資源なるものの本来持つ、コモンズ的な社会的意義は、失われるのではなかろうか。
──という指摘は鋭いし、だからこそ、このスキームではそうした「コモンズ」が協議会の主要メンバーとしての役割を期待されるんだと思う。だけど、一方じゃ、農林漁業を捨て「使わず育てず」だのに既得権だけに乗っかって、法外な換金回路を要求されても困る。漁業権とか「みなし水利権」などでしばしばそういう例を耳にする。
現法案では、東京のコンサルや観光業者が、「独自の企画力」を持ち得ない自治体に対して、「中身を変えずに、表紙だけを変えた提案書」を売りつけるようなことを避ける手だてはない。ただ、そもそもこの法案で具体的にイメージしている“地域”ってのは、多分、現にエコツー業者が存在しているところじゃないかな。

Aさん―センセイは、どうすればいいとお考えですか?

H教授―ご指摘の点も含め、さまざまな問題があることを念頭に置きつつ、みんなで議論することからスタートするしかないだろう。
まずは議員立法の案がまとまれば、それを叩き台としてパブコメを求めたり、全国行脚して地元の意見を汲み上げればいい。
あとこういう問題だと、これまでは地元の意見を基礎自治体、つまり市町村がある程度は汲み上げてきたんだけど、この平成の大合併で市町村と地元の距離が遠くなったのがマイナスにならなければいいなあと思う。

Aさん―なんだかピンと来ないなあ。

H教授―うん、こういう問題はものすごく地域性が強いんだ。だから一般論は抽象的過ぎてしまう。具体的なケースごとに論じなければ仕方がない。「神は細部に宿る」んだ。
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環境省提出法案の概要
Aさん―また、わけのわからないことを。
じゃ、あとは他の法案ですね。国立環境研究所法の改正って?

H教授―独立行政法人には役職員の身分を公務員とする公務員型のものと、そうじゃない非公務員型のものがある。今回の法改正では、前者から後者にするということらしい。
具体的に何が変わるのかよく分からないけど、少なくとも「研究官」とかいうような名称は使えなくなったようだ。

Aさん―じゃあ、まったくの民間というわけですか。

H教授―そんなわけないだろう。守秘義務だとかなんだとかはまったく変わりがない。
官批判の一環で「公務員の数」がすぐ問題にされるから、公務員削減という実績を稼いで矛先をかわそうという意味はあるかも知れない。
ま、国民向けの意味はあっても、国民にとっての意味はなさそうな感じがするけど。

Aさん鳥獣保護法改正は?

H教授―狩猟者が年々減ってきており、しかも農作物被害が増えているところもあるという現状に鑑み、規制緩和するという面、一方じゃ、個体数が減ったり生息環境が悪化している面に対応しようとする両面があるみたいだ。
具体的には、(1)休猟区における狩猟の特例制度創設、(2)狩猟の免許区分を見直し、農家のわな猟をやりやすくすること、(3)県による入猟数調整制度の創設、(4)危険性の高いわな猟の禁止制限区域制度の導入、(5)網やわなの設置者表示義務付け、(6)鳥獣保護区における保全事業の創設、(7)輸入鳥獣を識別するための標識(脚環等)装着の義務付け ──ということらしい。
この分野は詳しくないので、それ以上は聞かないように。

Aさん―へえ、なにか詳しい分野があるかのようなおっしゃり方ですね。
フロン回収・破壊法は、確か業務用冷凍空調機器からの回収率アップを目指して、回収工程管理制度の導入だとかを図ろうとするものでしたよね。いわば、フロン・マニフェストが義務付けられるということでしょうか。

H教授―うん、第29講の(その3)で述べたように検討会報告書に沿って法改正がされたということだ。現在の回収率はたったの3割らしいからね。
それと、これはオゾン層保護対策だけじゃなく、温暖化対策の意味もあるんだ。「京都議定書目標達成計画」にも明記されている。
じゃ、その温暖化対策法改正の話をしてごらん。
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