環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第43講 「拡大ミティゲーション論」
第42講「キョージュ、今国会での成立法案を論じる」
第41講 「エコツーリズム推進法案と国立公園」
第40講「50年、過去と未来 付:第三次環境基本計画」
第39講「PSE法騒動やぶにらみー付:プルサーマル&水俣病再説」
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No. 第42講「キョージュ、今国会での成立法案を論じる」
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Issued: 2006.07.06
H教授の環境行政時評(第42講 その4)
容器リ法見直しの顛末

Aさん―さて、最後は容器包装リサイクル法ですね。

H教授―これは随分以前から議論されてきて、その議論の経過も公表されている。この時評でも何回か取り上げてきたし、詳しくは安井先生のホームページを参照してもらうことにして、簡単にいこう。

Aさん―結局、レジ袋の有料化はどうなったんですか。

H教授―直接法文ではうたっていない。
「小売業等について、「事業者の判断の基準となるべき事項」を主務大臣が定めるとともに、一定量以上の容器包装を利用する事業者に対し、取組状況の報告を義務付け、取組が著しく不十分な場合は勧告・公表・命令を行う措置を導入する」
──という条文が入った。
これを根拠に「事業者の判断の基準となるべき事項」をガイドラインとして定め、そのなかで有料化を示唆するような文言が入るんじゃないかなあ。わからないけど。

Aさん―もうひとつは自治体と事業者の負担区分の見直しですね。

H教授―これも随分と後退してしまったようだ。
「事業者が、再商品化の合理化に寄与する程度を勘案して算定される額の資金を市町村に拠出する仕組みを創設する」
──となっている。
分別などを熱心にやる優良自治体にご褒美をあげるみたいな書き方だね。

Aさん―ペットボトルの中国輸出が増え、せっかくできた国内リサイクルルートがうまく回っていないという問題もありました。こちらはどうなったんですか。

H教授―条文によると、
「廃ペットボトルの国外への流出等にかんがみ、「再商品化のための円滑な引渡し等に係る事項」を基本方針に定める事項に追加して国の方針を明らかにする。」
──そうだ。つまり先送りだ。
これに関連して、今までは自治体が回収した廃ペットを(財)日本容器包装リサイクル協会に無償で渡し、協会がリサイクル業者にお金を支払ってリサイクルさせていたんだ。その額は入札で低いところに決めていたんだけど、ついにオカネを渡すんじゃなくて受け取る、つまり売るようになったそうだ。
当たり前だといえば当たり前だけど、それでリサイクル業者がやっていけるかどうか心配になるねえ。

Aさん―他には?

H教授―「容器包装廃棄物排出抑制推進員」制度ができた。
どこまで実効性があるかわからないけど。

Aさん―つまり、抜本的な見直しからは遠いものに終わったということですか。

H教授―まあそういわれても仕方がないんだろうねえ。
昨日(27日)の朝日の夕刊記事によると、韓国ではかなり思い切った政策をとっているようだ。レジ袋にまでデポジット制度を導入、容器包装や電気製品など9つの製品群に拡大生産者責任を適用し、業種ごとにリサイクルの目標値を設定、未達成の業者から課徴金を徴収、過剰包装規制や飲食店・ホテルなどでの割り箸、つまようじ、歯ブラシの無料提供の禁止 ──などなど。
韓国と比べると、日本は循環型社会と騒いでいる割には随分と遅れちゃった気がするねえ。
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神戸製鋼の不祥事

Aさん―ところで話は変わりますけど、神戸製鋼の不祥事件が問題になってますねえ。

H教授―ああ、あれには驚いた。詳しくは中西準子先生のホームページを見てほしいんだけど、データ改ざんなんて絶対しちゃあいけないことを、随分昔からやっていたというんだから、あきれてものがいえない。
神戸製鋼といえば、関西の環境優秀企業と思われてたものなあ。
石原産業の場合は前科があるから驚かなかったけど、神戸製鋼はISO14001やら環境報告書やらでは常に関西のトップリーダーだったし、環境部の人とは昔から付き合いがあって、随分熱心だと常々感心していたんだけどなあ。
トップや本社環境部の人は知らなかったんだろうけど、現場ではああいうことが日常茶飯事だったとすれば、根本から見方を変えなきゃいけない。

Aさん―どういうことですか。

H教授―行政では抜き打ち検査をやったりしてるんだけど、それでも見つけられなかったとすれば、検査のやり方に問題があるんだろうと言われても仕方がない。それと同じだよ。
それと、中小企業はともかく、大企業では規制導入前は猛反対しても、いったん規制が始まれば遵法精神は人一倍あるというのがボクらの常識だった。つまり先日の耐震偽装のときもそうだったけど、今の法規制は基本的に性善説に立っているんだ。これを性悪説に立って法規制をやるとすれば、これまでの何倍も人手もかかるし、オカネもかかる。今の日本じゃ、そんなことは不可能だからねえ。どういう実効性のある再発防止策が取られるかだ。

Aさん―そもそもなぜ発覚したんですか。

H教授―経産省の内部調査が入って発覚したというんだけど、本当のところはわからない。内部告発でもあったのかもしれない。
各工場では明示していたかどうかはともかくとして、生産ラインをどんなことがあっても止めちゃいけないみたいな雰囲気が濃厚に支配していたんだろう。本社の環境部は知らなかったかもしれないけど、各工場の環境担当がまったく知らなかったとは思えない。
となると、本社と工場の関係、それぞれの指揮命令系統、各工場の環境担当と本社の環境部との関係がどうなってたか、建前でなく実態を知りたいところだねえ。

Aさん―なんか知事と自治体の環境部局と環境省の関係みたいですねえ。

H教授―だから、そこの実態を知りたいし、それを知るところからしか始まらないと思うんだ。
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さいごに
Aさん―だけど、今回の話、特に温暖化対策法と京都メカニズムの話は本当に先生の理解でいいんですかねえ。

H教授―正直言って、あまり自信がない。

Aさん―そりゃあ、無責任じゃないですか。読者に叱られちゃいますよ。
だいたいセンセイの理解が正しいかどうか、環境省に問い合わせれば済む話じゃないですか。

H教授―本来は、国会議員や国民が簡単に理解できるための資料が必要なんだけど、環境省OBのボクが法案の趣旨説明を必死に読んでもよくわからないところがあると言いたいんだ。だからあえて問い合わせはしなかった。
もしボクの理解が間違っていたら、それを指摘してもらうとともに、もっとわかりやすい説明資料をつくるよう心がけて欲しい。

Aさん―なんか変な理屈だなあ。とても大学キョージュとは思えないわ。
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(平成18年6月29日執筆、同月末編集了)
★本稿の見解は環境省およびEICの公的見解とはまったく関係ありません。
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