環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第47講「秋の夜の環境冗話 ―COP12、大阪湾青潮、読者のお便りを巡って」
第46講「動物愛護とミティゲーション」
第45講 「安倍新内閣発足と日本の超長期ビジョン」
第44講 「夏の夜の四方山話―附:富栄養化断章」
第43講 「拡大ミティゲーション論」
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No. 第46講「動物愛護とミティゲーション」
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Issued: 2006.11.09
H教授の環境行政時評(第46講 その1)
狂育問題を論ずる

H教授―いやあ、いよいよ紅葉の秋、勉学の秋だな。一所懸命勉強しているか。
(じろっと見て)まさか食欲の秋じゃないだろうな。

Aさん―いやらしい目つきで見ないでください! それより新聞じゃあ、多くの高校で必修科目を履修してないことが発覚しただとか、イジメ問題だとかで大変じゃないですか。

H教授―必修科目の未履修問題だけど、やはり日本は建前社会だと思ったなあ。

Aさん―え、どういうことですか。

H教授―だってそうじゃないか。発覚した高校側は例外なく申し訳ないと謝罪しているし、自殺した校長先生までいた。

Aさん―悪いことをしたんだから、謝罪するのは当然じゃないですか。

H教授―そうかなあ。高校の評価は大学進学率で決まるんだ。だったら受験に関係ない科目なんてやらない方がいいと高校側は思うだろうし、生徒だって保護者だって、それを望むに決まってるじゃないか。
「どこが悪いんだ。必修科目にしておきながら大学受験科目にしない大学や、それを許している文科省の方が悪い!」って居直ればいいんだ。

Aさん―えー、センセイはそんなこと思ってたんですか。

H教授―違うよ、まずは本音をぶつけあうことが必要じゃないかってことだ。

Aさん―でもうちの大学だってそうでしょう。そんなんでいいんですか。

H教授―いいとは思ってないよ。だけど現実に受験科目が一科目増えると受験生がガクンと減るのが現実なんだ。となると受験料収入が減り、ひいてはわれわれの給料にも響いてくる。

Aさん―だったらどうしたらいいと?

H教授―就職試験でよくやっているような「教養」という受験科目を設け、それと今までぐらいの受験科目にすればどうかと思うけどなあ。そういうふうにすれば一般教養や時事問題に強い学生が集まるし、そうした学生ばかりになると切磋琢磨もするだろうから就職にも強くなるだろう。そうなれば受験生も殺到、学校経営もうまくいき、ボクの給料も上がる…ということにならないかなあ。

Aさん―風が吹けば桶屋が儲かるというわけですね。で、その「教養」という受験科目のレベルはどうするんですか。

H教授―中学生低学年の全教科書レベルと時事問題でいいんじゃないかな。そうすれば佐賀県が四国にあるとか花崗岩をハナオカガンと答えるトンチンカンな学生はいなくなるだろう。

Aさん―だって地理とか地学の授業はなかったし、受験科目じゃなかったからです! 古い話持ち出さないでください! センセイだって「循環型社会」って黒板に書くとき漢字を書けなくて「じゅんかん」なんてかなで書いたじゃないですか!

H教授―(真っ赤になって)ちょ、ちょっと。あれこそ寄る年波で度忘れしただけじゃないか。なにもこんなところで言わなくたって。

Aさん―へん、これでオアイコだわ。あとイジメ問題はどうですか。

H教授―イジメは昔からあった。特に増えたわけじゃないと思うよ。イジメの被害者の駆け込み寺みたいなところがあれば問題の大半は解決すると思うけどなあ。
それよりも、なんでこういう教育の話が今頃大問題になっているかを考えた方がいい。結局のところ、安倍内閣の主要課題として教育基本法の改正だとかの教育問題を打ち出したからじゃないか。
Aさん―なあるほど、教育再生会議を立ち上げたり、教育担当の首相補佐官を任命したりしましたからねえ【1】
でもやはり教育って国の要ですよね。

H教授―国の要には違いないけど、お上が先頭に立って教育、教育なんて言い出すと、大体ろくなことがないってことも知っておいた方がいい。

Aさん―また天邪鬼がはじまった。
【1】 首相官邸「教育再生会議」
教育再生会議
教育再生ホットライン

H教授―うるさい。だって、200年前に識字率が一番高かった国がどこか、知ってるか。

Aさん―イギリスかな? 大英帝国の時代ですもの。

H教授―ニッポンだよ、ニッポン。読み書きそろばんは江戸時代後期には9割の人ができたらしいよ。そんな国は他にないぜ。

Aさん―どうしてですか? 江戸幕府が教育に力を入れたからですか。

H教授―とんでもない、庶民向けには、まったく何もしなかった。今でいう文部官僚なんて一人もいなかったんだ。けれど世界一教育レベルが高かった国民だったんだぜ。いや、だからこそ世界一教育レベルが高い国民になったのかもしれない。つまり文科省なんてのは、廃止してもいい唯一の省庁かもしれない。
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安倍政権の滑り出し
Aさん―また暴論を。
そんなことより安倍政権発足一月、いろいろ見えてきたことがあるんじゃないですか。

H教授―ここでは二つだけあげておこう。
ひとつは選挙向けでもあるんだろうけど、来年の選挙までは増税路線を取らないことがはっきりした。むしろ企業減税をして成長率を上げたいと言っているぐらいだ。
つまり、環境税はまたも日の目をみないということだ。

Aさん―もうひとつは官邸主導型の政治を目指すということですね。さっきの教育再生会議だとか首相補佐官制度だとか。でもうまく行くのかしら。

H教授―ムリだと思うよ。

Aさん―またあっさりと切り捨てましたね。

H教授―法律で目一杯の5人にしたけど、スタッフがほとんどいない。その数少ないスタッフも各省からの出向。おまけに教育担当とか外交担当とかという担当区分じゃ、文科省とか外務省とかともろにオーバーラップする。屋上屋を重ねるだけでプラスマイナスを考量すれば、圧倒的にマイナスが大きいに決まっているじゃないか。

Aさん―他のやり方はなかったんですか。

H教授―要するに各省庁は縦割りになってるんだから、補佐官がいくつもの省庁に関連しているなんらかのシングル・イシュー、つまり単一課題を担当し、それで各省を横に串刺しするようにすりゃあいいんだ。そして補佐官ひとり当たりスタッフを最低でも何十人か付けて、そのシングル・イシューに関する指揮命令権を持たせりゃあ少しは変わるかもしれない。
例えばバイオマス担当補佐官とかね。ことバイオマスに関する限り、農水省も経産省も環境省も、担当官はそこの大臣よりも担当補佐官の指示を優先するシステムでも作らなきゃあ、動きっこない。最終的にはすべての役人は縦の序列で動くとともに、新たにできた横の系列からの指示にも従わなければならないようにすればいい。

Aさん―また無茶苦茶を。ヘッドが二つできるとなりゃ、大混乱するに決まってるじゃないですか。

H教授―混乱はあるだろうが、一度そういう形でシャッフルすれば、日本も少しは変わるかもしれない。

Aさん―いいですねえ、大学キョージュって。無責任に好き勝手言えて。
安倍外交はどうですか。前講直後に北朝鮮の核実験なんてとんでもないことがありましたが。

H教授―安倍サンにとっては神風みたいなものじゃなかったかな。表向きマイルドにしていたけど、もともと持論だった制裁一本槍の強硬路線を公然と言えるようになり、それが支持を集めて大阪、神奈川の補選勝利にも結びついたんだから。
だけど国際的なリアルポリティックスの観点からは拙劣だったというしかない。6者協議が再開しそうだけど、まるで蚊帳の外みたいだからなあ。
ま、これ以上は長くなるから言わないけど。

Aさん―だって、核を持とうなんてトンデモない国なんだから、強硬路線も当然じゃないですか。

H教授―核実験が成功したかどうかも定かじゃないんだぜ。それにいくつかの国々は持っていいけど、あとの国は持っちゃいけないという倫理的根拠なんてないじゃないか。

Aさん―日本は持ってません!

H教授―だけどアメリカの核の傘の下にいるんだから、他国はそうは思わないよ。
核保有国が制裁とかなんとか言える倫理的な根拠があるとするならば、自らが核軍縮を続け、最終的には核全廃を目指し努力する場合だけだと思うよ。

Aさん―じゃあ、センセイは北朝鮮が核を持つことに賛成なんですか。

H教授―反対に決まってるだろう! だけど“飴と鞭”の鞭だけじゃあ難しいし、そもそも北朝鮮のねらいは何か、どう対応すればいいかという、もっと冷静で戦略的な思考が必要なんだ。
あとは福島、和歌山といった自治体トップの不祥事続発だけど…。

Aさん―(遮って)今頃、編集部のMさんの禿げ上がった額のこめかみがピクピクしてますよ。
もういい加減に環境行政時評にいかないと。
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