環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第47講「秋の夜の環境冗話 ―COP12、大阪湾青潮、読者のお便りを巡って」
第46講「動物愛護とミティゲーション」
第45講 「安倍新内閣発足と日本の超長期ビジョン」
第44講 「夏の夜の四方山話―附:富栄養化断章」
第43講 「拡大ミティゲーション論」
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No. 第46講「動物愛護とミティゲーション」
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Issued: 2006.11.09
H教授の環境行政時評(第46講 その4)
再び動物愛護管理法
H教授―人間の管理下にある哺乳類、鳥類、爬虫類の愛護や管理は動物愛護管理法、野生の哺乳類、鳥類の保護は鳥獣保護法、絶滅が危惧される動植物の保全は種の保存法、外来種による生態系の撹乱を防ぐには外来生物法といろんな法律があるんだけど、その間の関係が今ひとつすっきりしないし、それらでもカバーされていない隙間の部分があって一般国民にはきわめてわかりにくい。だけどこれらは全部環境省所管の法律なんだ。
だったら、これらをすっきりとわかりやすい一本の法律にできないのかなあというのが一点。

Aさん― 一本化したってわかりやすくなるとは限りませんよ。

H教授―うるさい。
もうひとつ、動物愛護管理法も鳥獣保護法も対象動物の範囲をもっと広げるべきだ。衛生害虫などを除いて一定の大きさ以上になる全動物種を対象とすべきだろう。
鳥獣保護法は動物保護法あるいは野生生物保護法に名称も変更する。

Aさん―小さい動物への差別じゃないですか。

H教授―そりゃそうかもしれないけど、数ミリの動物を愛護しろたって、まずぼくの老眼じゃみえないもの。ぱっとわかる程度のものでなけりゃムリさ。

Aさん―まあ、そういうこと以前に、現行法のPRが足らなさ過ぎるんじゃないですか。
動物愛護週間というのがあるみたいですけど、ほとんどの人が動物愛護管理法なんて知らないでしょう。

H教授―うん、今回の動物愛護管理基本指針についても案の段階でパブコメ、即ちパブリックコメントを募集したんだけど、来たのはたったの264通なんだぜ。そういうものを作ろうとしているなんて、ペット関係業界団体の人と一部の動物愛護団体くらいしか、そもそも知らなかったんじゃないか。

Aさん―センセイは知ってました?

H教授―…知らなかった。

Aさん―やっぱりねえ。どうすればいいんですかねえ。
そうだ!「動物奇想天外」とか「志村動物園」といったテレビの人気番組がありますよね。ああいうところで5分間でいいから取り上げてもらえばいいんだ。
他にも動物園やペットショップでわかりやすい掲示をさせてもらうとか、いろんなアイデアがあると思うんだけど。

H教授―それ以上に問題なのは、そもそも役所側はパブコメがどっと来たら対応に困るから、一応はパブコメ募集をしましたという形だけのものにして、本気でパブコメを募集する気がないことだと思うよ。
だってパブコメが来たからって案を変更するわけじゃないんだもの。
つまり、案の段階でパブコメするんじゃなく、案を作成する審議過程の段階でパブコメを募集し、それを審議の場で披露するというような、パブコメがフィードバックできる体制をつくることをしなければいけない。

Aさん―なあるほどねえ。事業アセスから戦略的アセスへの転換が騒がれているように、案パブコメから戦略的パブコメへ、ですね。

H教授―ま、それはともかくとして、やはり動物愛護は語るものでなく、実践するものだ。早く帰ってミオと遊んでやろう。

Aさん―「ミオに遊んでもらおう」でしょう。
その前に、最近何かお便りありました?
いつだったか「内容の劣化が甚だしい」なんて厳しいクレームがついてましたね。

H教授―うん、でも嬉しかったよ。だって、だとすると以前は内容が結構よかったということだから、キミとの対話はまったく無駄じゃなかったということになる。

Aさん―ほんと、うらやましいぐらいポジティブシンキングなんですね。
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「拡大ミティゲーション」 ──読者のお便りから

H教授―それより43講で「拡大ミティゲーション」を論じたろう。キミは馬鹿にしてたけど、こういう長文のお便りをもらったぜ。やはり見る人は見ているんだと思ったね。
「拡大ミティゲーション」構想、興味深く拝見しました。
これまでのミティゲーションバンキング構想に、空間だけではなく「時間」という要素を取り入れて考えてみては、というお考えですね。
ミティゲーション・バンクの考えかたは、生態系を有する土地の持つ価値をCreditsという単位で評価し、開発によって喪失する生態系の価値を、Debitsという単位で換算し、このDebitsと同数のCreditsを、ミティゲーション・バンクから購入することで、開発許可を得ることができる。
というものといえますが、先生の考え方は、これに時間的要素を加味しようとするもののようですね。
すなわち、単なるミティゲーション・バンクの考えかたに、オプション取引的考えを取り入れるようなものとも、見えます。
生態系を有する土地の持つ価値Creditsと、開発によって喪失する生態系の価値Debitsそれぞれに時間的価値を持たせて、取引する、という考え方ととらえてよろしいでしょうか。
一般のオプションの考え方では、タイム・ディケイ(Time Decay、時間価値の腐食)という概念があり、売り建てたオプションは、それによって、時間的価値を失い、これを安く買い戻すことができることによって、利益を得、買い建てたオプションは、これを転売することによって、時間的価値の腐食の進行を免れる、という考え方ですね。
開発許可を利得と考え、環境価値には、タイム・ディケイが発生する、と、考えていくと、これまでのミティゲーション・バンキングの考え方では、環境価値を買い建て(買ったものをより高く転売する。─環境価値を高めて売る─)という考え方のみでしたが、それだけでなく、環境価値が高いうちに、売り建てしておき、環境価値が下がった時点で、買い戻すことによって、開発許可という利得を得る。という考え方になるでしょうか。
排出権取引にも、単純なスポット売買に加えオプション取引もできるように、世界的には、なっているようですので、この排出権オプション取引のミティゲーション版を考えれば、先生の考えられる構想に近いものが得られるものと思われます。(ひょっとして、ノーベル賞もの???)
このようなパラダイムの構築で、オルタナティブな環境価値のオプション取引形態が生まれるような気がしていますが。
先生の言葉から連想しただけのスキームですので、たぶんに、荒っぽい、または、先生のご意図とは異なったデザインとなっているかも知れないことをお許しください。
ミティゲーション・バンキングについては、だいぶ以前に『日本にミティゲーション・バンキングは可能か』http://www.sasayama.or.jp/policy/S_2_06.htm
にまとめてありましたので、御笑覧ください。

以前、エコツーリズムについても鋭いご指摘をされた方だけど、どうだい、ひょっとするとノーベル賞ものかも知れないとまで、仰ってるんだぜ。エヘン。

Aさん―へえ、で、センセイ、この方の仰るオプション取引についてはどう思われるんですか。

H教授―いや、悲しいかな、そっち方面はチンプンカンプンなんだ。

Aさん―やっぱりねえ。たまたま「犬も歩けば棒にあたる」だったんだ。

H教授―そういうこともあるから犬や猫を大事にしなけりゃいけないんだ。
さ、じゃあ、ミオが待ってるから帰るぞ。
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(平成18年11月2日執筆 同月7日編集了)
註:本稿の見解は環境省及びEICの公的見解とは一切関係ありません。
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