環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第48講「2006年の総括と2007年の展望 ―附:ハワイ秘話」
第47講「秋の夜の環境冗話 ―COP12、大阪湾青潮、読者のお便りを巡って」
第46講「動物愛護とミティゲーション」
第45講 「安倍新内閣発足と日本の超長期ビジョン」
第44講 「夏の夜の四方山話―附:富栄養化断章」
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No. 第47講「秋の夜の環境冗話 ―COP12、大阪湾青潮、読者のお便りを巡って」
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Issued: 2006.12.07
H教授の環境行政時評(第47講 その1)

H教授―すっかり寒くなったけど、このひと月、いろんなことが起きた。米国中間選挙で民主党が圧勝したし、イラクは完全な内戦状況に突入。国内に目を向ければ地方自治体首長の不祥事が続出するし、教育基本法の改正だとか防衛庁の省昇格だとかが、あれよあれよという間に決まってしまいそうだ。造反議員の復党問題で自民党は大揺れだし…。

Aさん―(遮って)センセイ、これはあくまで環境行政時評ですから、関係ない床屋政談はダメですよ。読者からのお便りにもあったじゃないですか。

H教授―うーん、環境問題にまったく関係ない事件などない、ムリにでも環境という視点から眺めたり斬ったりするというのがボクのスタンスだけどな。

Aさん―ダメです。読者にはセンセイの欲求不満の捌け口くらいにしか見えないんです。だから、一般世評はせいぜい一つ二つにしてください。
それにしても地方自治体の不祥事が続いていますねえ。福島県知事が逮捕されたかと思ったら、今度は和歌山県知事。間もなく宮崎県知事も逮捕されるかもしれませんね。こんなんで地方分権なんてできるんですか。

H教授―逮捕されたからって、有罪が確定したわけじゃない。それまでの間は“推定無罪”というのが本来の原則だけど、マスコミはそんなことお構いなしだね。どこまでホントかわからない記事を垂れ流している。

Aさん―そりゃあそうかも知れませんけど、「火のないところに煙は立たない」って言いますよ。

H教授―「一犬虚に咆ゆれば萬犬実を伝う」とも言うぜ。
ま、それでも和歌山の木村知事逮捕には驚いた。名うての改革派知事だったからなあ。「緑の雇用」だとか「緑の公共事業」というコトバを流行らせたり、和歌山港下津地区の埋立凍結【1】等、環境派としても目されていたから、残念だねえ。推定無罪の原則は原則として、脇が甘かったことは否めない。
これでまた埋立復活なんてことにならなきゃいいけどねえ。

Aさん―でも、どうしてこう不祥事が続くんですかねえ。

H教授―そもそも議会がオール与党体制みたいになっちゃって相互牽制機能が働かないからだろう。やはり健全な反対派がいて、きちんと監視しておかないとこのままじゃ、地方に任せられないなんて声が出て、地方分権の目がつぶされかねない。
中央じゃ、野党はあるし、会計監査も機能しているけど、地方はこのままじゃちょっとーと思っちゃうよなあ。

Aさん―その中央だって、国民の声を聞くっていう建前ではじめたタウンミーティングがまるっきりの“やらせ”だったってわかったじゃないですか【2】。茶番もいいとこだわ。あんなことに税金を何億も使うなんて許せない。あんな“やらせ”が担当の役人の勇み足なんて信じられないじゃないですか。上から命じられたんでしょう?

H教授―上からは露骨な指示はなかったと思うけど、上の意向を汲んでうまくやるのが昔の優秀な役人だったんだし、そういうのをやらなきゃダメ役人のレッテルを貼られたんだ。
“やらせ”に関しては気をつけてみていると、そういうのがいまだにいろんなところにあると思うよ。予算査定だって馴れ合いの田舎芝居みたいなものだった。株主総会だってたいていシナリオがあるんじゃないの。
あのタウンミーティングでひどいのは、そういう“やらせ”だけじゃない。オカネの遣いかたがデタラメで、あまりにひどいよ。受託した広告代理店なんかが暴利をむさぼったと言われたり、それとつるんだ役人が甘い汁を吸ったんじゃないかと疑われてもしかたがないほどだ。
随意契約一般をどうこう言うんじゃなくて、こういう悪どい仕事の仕方を叩くべきだと思うよ。

Aさん―米国なんかじゃどうなんですか。
【1】 和歌山港下津地区の埋立凍結
第4講(その3・4)「或る港湾埋立の教訓」
【2】 タウンミーティング
タウンミーティング動画配信[タウンミーティング・ホームページ]
小泉内閣の国民対話[内閣府ホームページ]

H教授―よくは知らないけど、そういう馴れ合いの文化は希薄なんじゃないかな。
もっとも向うはトップそのものが石油利権や軍需産業の代弁者だったりする…。

Aさん―センセイ、言い過ぎ! ところで米国の中間選挙、民主党が勝利しましたね【3】

H教授―うん、でもあの開票結果を見ていると、確かにトータルでは二大政党だけど、地域別に見ると、8:2とか2:8のところがざらにある。つまり米国は中に二つの国があるようなもんだ。
いずれにせよ、愚かなイラク政策で、イラクはもはや内戦に突入したといって過言ではない状況だ。これがブッシュ政権の息の根をとめ、もはやレームダック化したといっていいだろう。
このことが日本経済にとっていいかどうかどうかはわからないけど、米国も国際協調路線に戻らざるを得なくなり、地球温暖化問題にもかすかな光明の兆しがみえてくるかもしれない。
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【3】 米国中間選挙
2006 Midterm Elections[US Department of States]
米国中間選挙2006[在日米国大使館]
COP12の顛末
Aさん―そうそう、温暖化といえば第12回気候変動枠組条約締約国会議つまりCOP12と、同条約の京都議定書締約国会議の第2回会合COP/MOP2が開かれたんだったですね。

H教授―うん、11月の6日から17日まで、ケニアのナイロビで開催された【4】。最終日近くになって、ようやく新聞でも取りあげるようになったけど、もっと早くからきちんと報道してほしいね。

Aさん―なんかあまり芳しい結果じゃなかったようですね。途上国側と先進国側の前回の対立をそのまま持ち越されたようで。

H教授―それははじめから予想されたことだったから落胆することはないさ。
ただ、15日からの締めくくり閣僚級セッションで、京都議定書の見直しを2008年のCOP/MOP4で行うことが同意された。第一約束期間終了後の2013年以降の温室効果ガス削減のスキームづくりが動き出すことだけは確からしいから、一歩前進と評価されるかもしれない。

Aさん―へえ、そんな解釈も可能なんですか。
【4】 COP/MOP2
気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)(11月6-11月17日)─概要と評価─[外務省]
COP12特集[全国地球温暖化防止活動推進センター]
COP12・COP/MOP2終了 EU議長国フィンランド、ドイツ、イギリスのコメント[EICネット>海外ニュース]

H教授―先進国側は次期枠組みづくりに途上国をなんとか入れたいと主張。一方、中国をリーダーとする途上国側は先進国側の一層の温室効果ガス削減と途上国への「適応」策や技術移転等への具体的な支援が先決と平行線で終始したようだ。ただ、後者はある程度の道筋がついて同意がなされたらしいから、途上国も枠組み参加を完全拒否という硬い姿勢は若干緩んだんじゃないかな。
CDMは中国が独り占めに近いようだし、途上国も一枚岩じゃないということだろう。中国が近い将来世界一の排出国となるのは目に見えているから、いくらなんでも強硬には突っぱねられなかったんだろう。

Aさん―米国の復帰はどうなったんですか。

H教授― 前回以降、拘束力はない「対話」を米国も含めて開始することとされ、COP/MOPに併せて2回目の「対話」がなされたらしい。米国内では民主党の勝利もあったし、徐々に軌道修正がなされるんじゃないかなあ。すでに州政府レベルではいろいろ動いているしね。
いずれにせよ、本格的な方針変更は2008年の米大統領選挙を待たなければ仕方がないだろう。米国が復帰すれば同じ京都議定書離脱組の豪州も追随するよ。

Aさん―ポスト京都議定書なんですけど、米国や豪州の復帰もさることながら、途上国が削減の数量的枠組みに加わることってあるんですか。

H教授―現行の京都議定書も温室効果ガスの増加を容認している国だってある。削減でなく、大幅にプラスになるにしても、そういう拘束力のある数量的な枠組みに加わることが重要なんだ。
数量的な枠組みといったって京都議定書のような対90年比何%という枠組みにこだわることだってなく、まったく別の枠組みだって構わない。
いずれにせよ結果として先進国がさらに大幅な削減をすること、そして途上国も第三約束期間か第四約束期間には逐次減少に転じるような仕掛けを考えなければならない。

Aさん―そんな悠長なこと言ってたら、海面上昇がどんどん進んで間に合わなくなりますよ【5】

H教授―もちろん平行して「適応」策をやっていかなければならないが、ボク自身は割りと楽観的なんだ。
地球温暖化がヒト社会に壊滅的な打撃を与える前に化石燃料、特に原油の生産がピークを越したことが誰の目にもはっきりとするだろうと思う。
その頃から、原油の価格高騰が生じ、一方で再生可能エネルギーの価格競争力が増して、徐々にシフトしていくんじゃないかな。
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【5】 海面上昇の影響
(参考)Pick Up!「小さなツバルの向かう道」
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