環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第51講『キョージュ、「拡大」国内排出権取引制度を論じる』
第50講「我、疑う故に我あり ──反温暖化対策論考」
第49講「IPCC第四次報告書と生物多様性保全」
第48講「2006年の総括と2007年の展望 ―附:ハワイ秘話」
第47講「秋の夜の環境冗話 ―COP12、大阪湾青潮、読者のお便りを巡って」
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No. 第50講「我、疑う故に我あり ──反温暖化対策論考」
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Issued: 2007.03.08
H教授の環境行政時評(第50講 その2)

Aさん―さ、ぼちぼち本論にいきましょうか。
えーと、前講以降の主だったできごとですが、法律関係では食品リサイクル法改正案と温泉法改正案がまとまって、国会へ提出されるそうです。
SEAのガイドラインがまとまりパブコメにかけたという話もあります。
それから自動車NOx・PM対策の今後の方向についての審議会の意見具申も出されました。また、環境省と国立環境研究所が中心になった「2050日本低炭素社会プロジェクトチーム」が40年後にはCO2の7割削減が可能って発表をしました。
一方、自然の分野では自然公園法50周年を迎えて指定及び管理運営のあり方についての検討会の提言がまとまったそうです。
今回はどれを取り上げますか【3】

【3】今月の環境行政時事問題

1)食品リサイクル法改正案
2)温泉法改正案
3)SEAガイドラインのパブコメ募集
4)自動車NOx・PM対策に関する審議会意見具申
 <自動車NOX・PM法>
5)2050日本低炭素社会プロジェクトチーム発表
 <日本低炭素社会プロジェクトチーム>
6)自然公園の指定及び管理運営のあり方について
H教授―ひぇえ、そんないっぱいあるのか。今回はベトナムから帰ったばっかりだから、パス、パス。50回記念ということで、もっと気楽な漫談でいこう。

Aさん―もう、そうやってすぐさぼろうとする。
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我、疑う故に我あり―「水伝」ブーム
H教授―うるさい。ところでキミ、「水伝すいでん」って知ってるか。

Aさん―人を馬鹿にしないでください。幼稚園児だって「田んぼ」ぐらい知ってますよ。

H教授―いや、水田じゃないんだ。江本某の書いた「水からの伝言」の略で、同工異曲のフォトエッセイのようなものが何冊も出ているんだけど、数年前から秘かなブームになっているらしい。

Aさん―あー、水にきれいな言葉をかけると、雪になるときにきれいな結晶ができるけど、汚い言葉をかけると壊れた結晶しかできないという例のトンデモ本ですね。
道徳の授業で使われているって問題になりましたね。センセイ、読んだんですか。
マサカ、信じているんじゃないでしょうね。

H教授―お、よかった、よかった。その言い方だとキミも少しはマトモなんだな。

Aさん―当たり前じゃないですか。それがどうかしたんですか。

H教授―いやあ、ボクは数年前行きつけの歯医者の待合室でぱらぱらと見て、詐欺まがいの新手の宗教かオカルト商法だと思ったんだけど、最近ちょっとショックなことがあった。

Aさん―どうしたんですか。

H教授―「あの本を読んで、マジで感激した」って言うゼミ生がいて、気になって加入しているmixiのレビューを見てみたら、大学生のコメントが600近くもあって、実にその95%がもろ感激しているんだ。

Aさん―へえ、まあスナオっていえばスナオなんですね。アタシやセンセイみたいにひねくれてないんだ。

H教授―だって常識じゃありえないことだろう。だったら、どうしてまず「疑う」ってことをしないんだ。だから前講の「あるある」でも簡単にだまされちゃうんだ。
マイナスイオンがどうだとか言われるとすぐ信じ込んでしまう。今じゃ大手電機メーカーまでがマイナスイオンなるものを商売に使っちゃう。
EM菌なるものだってそうだ。生ゴミの堆肥化に際して有効なのは事実だろうが、「EM菌が地球を救う!」みたいなEM菌万能論者になっちゃうと、有害無益だ。
俗悪な麻原某に帰依したオウムの若者をみんなが嘲笑ったけど、本当に嘲笑えるのかどうか心配になってくる。

Aさん―ま、活字になって、しかも一見実験結果らしきものが写真であったりすると信じちゃいがちですもんね。

H教授―卒論でもそうだけど、本や資料に書いてあることをそのまま信じ込んでいて、文献批判、資料批判がまるでできていない。「我、疑う故に我あり」くらいのパッションを持ってほしいね。

Aさん―文献批判、資料批判ってどういうことですか。
H教授―捕鯨問題を考えてみよう。
クジラはオキアミを食べるというけど、それだけではなくて、実は大量の魚も捕食している。捕鯨を禁止し、クジラが増えた結果、今じゃ人類の消費量の何倍も食べていて、海洋生態系を破壊している。だから、捕鯨を再開して健全な海洋生態系の復元をすべきだ──これは日本の水産庁の主張【4】なんだけど、卒論でもこういう主張を鵜呑みにしてしまい、捕鯨再開論無条件支持みたいなってしまうことがある。

Aさん―ということは水産庁の主張はウソだってことですか。

H教授―ある種のクジラは増えたこと、そして大量の魚を捕食しており、そのため漁獲量が減っている状況も出現していることは事実のようだ。
【4】 捕鯨問題と水産庁の見解
水産資源の持続的利用を考えるページ(水産庁捕鯨班)

Aさん―じゃあ、水産庁の主張はもっともなんじゃないですか。センセイは捕鯨再開に反対なんですか。

H教授―これは前にも言ったことだけど、ぼくはどちらかというと消極的賛成派なんだ【5】。だけど、この水産庁の言い方はやはり正当化しすぎだと思うな。
だって、クジラが大量の魚を捕食して魚が減れば、今度はクジラの方が自然の摂理で頭数が減ってくる。クジラの頭数が減れば魚の方が今度は増えてくるのというのが本来的な自然の姿で、健全な海洋生態系の復元のために捕鯨をするなんていうのは、傲慢そのものだと思うよ。
クジラが減らない範囲内で捕鯨をするのはヒトの生存、食糧確保のためにやむをえない殺生だということで留めておくべきだと思うよ。
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【5】 捕鯨に対しては、消極的賛成派のキョージュ
第15講(その2)「獲るべきか獲らざるべきかそれが問題だ 〜クジラ〜」
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