環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第52講「独断と偏見のキューバ社会論」
第51講『キョージュ、「拡大」国内排出権取引制度を論じる』
第50講「我、疑う故に我あり ──反温暖化対策論考」
第49講「IPCC第四次報告書と生物多様性保全」
第48講「2006年の総括と2007年の展望 ―附:ハワイ秘話」
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No. 第51講『キョージュ、「拡大」国内排出権取引制度を論じる』
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Issued: 2007.04.05
H教授の環境行政時評(第51講 その2)

H教授―あと冒頭のクジラについても面白い二つのお便りがあったので、これも紹介しておこう。

特に日本では、残念ながら捕鯨に関して(私はこれらの研究者とも顔をあわせることもあるのですが)バランスの取れた論評が少なく、なかなか素晴らしいと思いました。
特に「鯨害獣論」については「鯨が魚を食べる」ということだけがクローズアップされていて、例えば、ほかに思いつくだけでも
1.それがそもそも「資源の競合」なのか(クジラが魚を食べていることと、人間の漁獲に影響することはイコールではない。古からクジラは魚を食べていたはず)
2.仮に競合だとして、魚類もクジラも(ミンクは増えているがそれ以外の種類や鯨類全体のバイオマスはかつてより減少している)減っている状況で
 2−1.それを「害獣」として認識することが妥当であるかどうか(単に少なくなったパイの奪い合いの場合「害獣論」はほとんど言いがかりに等しい)
 2−2.「害獣」と認識したところで、捕鯨をすれば解消されるのかどうか(単に餌があるところにクジラが引き寄せられている場合、有害鳥獣駆除のように前線で捕獲しても意味がない)
…などの疑問点が出てくるにもかからず、生態学の専門家からは明確な批判があまりなかったように思います。あまり「専門外」のことには口を出さないという、科学者の「美徳」であるのかもしれませんが…
食糧事情についても、せいぜい日本の最盛期でも30万トン/年以下の鯨肉の供給しかできなかったのにまるで蛋白源の救世主のような物言いがされてしまうのには驚きます。
学生が大真面目にそう言っていたのには耳を疑いました。彼らは、日本が年間500万トン以上の肉類を消費していることすらも知らないのでしょうか。
それよりも、よほど沿岸を含めた魚類資源の保全に注力したほうが有益だと思いますが…
いずれにせよ、今回の指摘は重要だと思います。
適切な「資料批判」というか…、
身もフタもなく言えば、思考力がないということなのかもしれません…。
もう一通はこうだ。
「──これは日本の水産庁の主張なんだけど」と捕鯨再開についての水産庁見解について紹介していますが、本当に「健全な海洋生態系を復元するために捕鯨を再開すべき」という主張を水産庁はしているのでしょうか。捕鯨問題と水産庁の見解を読む限り、水産庁の主張の骨子は、
・捕鯨反対の立場が科学的根拠に基づかない暴論によって決定されるのは間違っている、
・持続可能な資源の利用の原則に反する主張であって、これを質すことが野生生物資源の合理的な利用の秩序維持に向けた貢献につながる、
・世界の食糧資源の保存・管理が必要、
・伝統文化の尊重、
とされていました。
食糧資源の保存・管理というのも、(表面上は)特定の鯨類を除いて、資源量が回復しているからそれを活用するべきではないか、ということのようですし、むしろ比重としては持続可能な開発の原則を遵守することの重要性を打ち出しているのではないかという印象を受けます。ですから、「クジラが魚をやたらめったら捕食してしまうのが問題だから間引かないとならないという論法で、捕鯨再開を求めている」というのは、それこそやや暴論に近く、バイアスのかかった決め付けになってはいないでしょうか(そんな下手な理論武装で説得できるわけがないということぐらい、水産庁もわかっているのでは?)。
まあ、本論のメインテーマである「我、疑う故に我あり」という観点からは、(読者は)H教授の主張も鵜呑みにしちゃあいかんよ!と言われそうですから、あえてねらっているのかも知れませんが...。

Aさん―センセイ、まな板の上の鯉ならぬクジラですね。

H教授―(苦笑して)ま、評価は読者にお任せしよう。

Aさん―で、いよいよ本論ですよ。

H教授―うーん、そうだなあ。とりあえず前講で編集部がまとめてくれたものを片付けておくか。
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食品リ法改正案
Aさん―というと、まずは今国会提出法案ですね【2】
最初が食品リサイクル法改正です【3】
【2】 国会提出法案
第166回国会(平成19年通常国会)に環境省が提出した法律案

H教授―大規模な食品メーカーや外食チェーン店について食品廃棄物や再生利用状況の報告を求めることにするそうだ。
多分、容器リ法改正と同様に、具体的な規制というよりは、マスコミ等の報道による社会的制裁を恐れる企業の体質を見越して自主削減を促す手法なんだろう。
あわせて、肥飼料など農業に再生利用される場合の廃棄物処理法の規定の緩和というアメとセットになったものじゃないかな。

Aさん―そういえばローソンでは、賞味期限が切れる2〜6時間前に早い目に販売棚より引き上げ、廃棄=飼料再生に回すという取り組みをしていて、一部ではそのタイムラグを利用して、貧しい人向けのNGOがやってる食堂に直接無料で提供しているというのをテレビで見ました。
その後半では、米国じゃ、ラベルや外箱だけが痛んでいるだけで中身は何ともない食料を寄付する「フードバンク」という運動があって、それを貧しい人たちに無料で提供する仕組みがあると放映されていました。日本でも同様の取り組みがはじまっているそうです。

H教授―へえ、息子がコンビニでアルバイトしているときは、期限切れの弁当はバイトのお腹の中に入ったそうだけどな。
ま、いずれにしてもそうした直接お腹の中にいく取り組みの方が、食料廃棄物の再生利用としては有効なのは事実だから、そうした取り組みに対する税制の面の優遇措置などもセットで考えた方がいいんだろうな。もっとも、財務省がうんと言わないんだろうけど。
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【3】 食品リサイクル法改正について
食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律の一部を改正する法律案
温泉法改正案

Aさん―次が温泉法改正ですね【4】

H教授―こちらは温泉をめぐる不祥事件への対応だね。
今までは成分分析を一度やれば何年経ってもOKだったんだけど、定期的に行って、その都度、表示を行うことを義務付けた。
それと、温泉法に基づく掘削や利用を許可する際、条件を付せられるようにした。
ちゃんとアメの方も付いていて、従来は温泉の権利者が相続や合併等の際に許可を取り直さなければいけなかったんだけど、それを緩和するそうだ。

Aさん―これに対するご意見は。

H教授―もちろん、いいことだと思うよ。
あとねえ、温泉に行けばいつも成分分析表というのがあるんだけど、普通の人が読んでも意味不明だよね。いろんなイオンの値がずらーと書いてあって、あとpHの値が出てきて、弱酸性とか弱アルカリ性とか書いてある。
だけど、高校の理科では水素イオンと水酸イオンの比で酸性かアルカリ性か決まるって習ったんだけど、あのイオン分析表ではそれがよくわからない。

Aさん―わからなくたっていいじゃないですか。きちんと分析表があって、専門家が太鼓判を押してあるんだったら。

【4】 温泉法改正について
温泉法の一部を改正する法律案

H教授―そういういい加減なことを言ってるから、「あるある」なんかにコロっと騙されるんじゃないか。
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