環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第53講「今後の国立・国定公園のありかたをめぐって」
第52講「独断と偏見のキューバ社会論」
第51講『キョージュ、「拡大」国内排出権取引制度を論じる』
第50講「我、疑う故に我あり ──反温暖化対策論考」
第49講「IPCC第四次報告書と生物多様性保全」
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No. 第52講「独断と偏見のキューバ社会論」
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Issued: 2007.05.10
H教授の環境行政時評(第52講 その2)

Aさん―センセイは、何かご意見はありますか。

H教授―さっき、「気候変動は待ったなし、しかもその影響はまず途上国に現れる」と言っただろう。一方じゃ、中国やインドなどが豊かになりたいと思うのは当然だし、そのために1人当たりのGHG(温室効果ガス)排出量を先進国と同レベルにしたっていいじゃないかと思うのも、これまた当然だろう。
たとえ先進国がGHG排出量を減らしたとしても、それ以上に中国やインドなどがGHG排出量を増やして、トータルではGHG排出量が増えるのも、当面は仕方がない。

Aさん―そんなあ。じゃあ、どうすればいいと言うんですか。

H教授―だからこそ、将来ビジョンが必要なんだ。途上国の目標は現在の先進国だ。現在の先進国は化石燃料起源のエネルギーをじゃぶじゃぶ消費して、豊かな社会を形成している。
だから途上国の目標とする先進国像をなんとしてでも変える。50年先には先進国では人口も減少するんだから、国全体では化石燃料起源のものは3分の1にすることを目標とし、エネルギーそのものの需要も大幅に減らすことを明言する。
つまり、将来の目標の上位概念はエネルギー総需要抑制社会にする。その具体化が低炭素社会であり、自然共生社会であり、循環型社会ということになる。

Aさん―そのビジョンを実現させるための政策はどうなるんですか。全体主義国家はいやですよ。

H教授―「毎年対前年比X%の化石燃料起源エネルギーのカット」という国家の大枠だけを決める。全体主義国家じゃないんだから、その制約内で思いっきり各自が豊かさを追求すればいいんだ。そうすれば50年先には2℃上昇で食い止め、安定化させることができるんじゃないかな。

Aさん―でもそんなことができるんですか。

H教授―直接的なカットがムリなら、それと同じ効果を生み出すような環境税なり、キャップを設けることを考えりゃいいんだ。2050年はGHG排出半減とか3分の1を大原則として打ち出す。そうしてこそ、本当のコーゾーカイカクだと思うけどなあ。
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「拡大国内排出権取引制度」についての読者からのお便り
H教授―ところでそれとも関連するんだけど、前講で「拡大国内排出権取引制度」って話したろう【6】

Aさん―例の夢物語っていうか、得意の与太話ですね。

H教授―キミ、「拡大ミティゲーション」のときにもそんなことを言ってたけど、読者の熱い支持の声が挙がったのを忘れたのか【7】

Aさん―そりゃ、そうですけど…。
【6】 拡大国内排出権取引制度
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」
【7】 拡大ミティゲーション
第43講(その4)「拡大ミティゲーション論」
第46講(その4)「「拡大ミティゲーション」 ──読者のお便りから」

H教授―今度も、熱心なお便りを3通もらったぞ。
私も最近そのようなものが出来ないかどうか考えていたところです。
愛知博以降EXPOマネーなるものの導入を幾つかの自治体が行っているようですが、私の知る限りでは、制度・ルールがあるだけで、全く市民運動になっていないように感じます。例えば、そのようなエコマネーを一種の排出権と見做しては如何かと考えています。
議定書を守るためには、悪の枢軸である家庭・第三次産業にメスを入れない限り、達成は不可能と思います。
ボトムアップの発想から、家庭−>自治会−>地方自治−>第一次産業(遊休地或いは休閑地での菜の花作りを行い、光合成をし、且菜種油搾取する)−>第二次産業(より一層の技術革新による省エネの推進)−>第三次産業(レジ袋等などのプラスティク製消耗品の削減)等の連鎖を考え、その間に拡大排出権を存在させ、市民運動化させる。・・との考えです。

ちょっとこれだけでは、ボクのアイデアとの関連が読めなかったけど、あとのはどうだい。

「拡大国内排出権取引制度」ですか。
“エイプリルフールだ”と冗談めかしていますが、これはなかなかすごいアイデアですね。
まあ、環境税や(拡大ではない)排出権取引の実現にさえ大きな抵抗がある中では、なかなか産業界の理解や納得を得るのは難しいかも知れませんが。
参加・実現したときにどんな旨味が見出せるのかという辺りがイメージできるように示せると、実現の芽も見えてくるのかも知れません。
全国一斉にというのが難しければ、特区制度でも利用して、ある範囲内でモデル的にやってみると、具体的なアイデアや課題が浮き彫りになるんでしょうね。
ぜひ、実現してほしいと思います。

最後の記事はグッドアイディア!
行政にも読んでいただきたいですね(一部の行政でこのような動きが感じられるかも)
Aさんの好意的痛めつけにめげない教授に拍手。

どうだい大好評じゃないか。

Aさん―でも2〜3通じゃあねえ。それに「拡大ミティゲーション」のときだって、最後はSさんに面倒を見てもらったし、今度だって言いっぱなしに終わるんじゃないですか。

H教授―(弱々しく)いいじゃないか。ラフなアイデアを出すだけでも、意味がないわけじゃないだろう。

Aさん―でもセンセイの意見は、読者からの反応はあっても、アカデミズムの世界ではまったく取り上げられないですね。
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本時評がアカデミズムの世界に取り上げられる
H教授―そんなことはないぞ! 先日、J大学のO教授が「学術論文」で、この時評の第31講、つまりボクのアスベスト論【8】を取り上げてた。英文サマリーまで付いている論文だぜ。

Aさん―へえー、ほんとですか。スゴイじゃないですか。ちゃんとした先生なんですよねえ。

H教授―もちろんさ。マスコミでも売れっ子の博士で、環境社会政策学者。中国の環境政策がご専門の堂々たるキャリアをお持ちの先生だ。

Aさん―(わくわく)で、どんなふうに取り上げられてたんですか?
【8】 キョージュのアスベスト論
第31講「アスベストのすべて」

H教授―(苦りきった表情で)もうボロクソさ。ひどいこと言われちゃった。

Aさん―…やっぱりねえ。どういうふうに書かれたんですか。

H教授―直接この時評へお便りされたんじゃないから、紹介することは控えておこう。

Aさん―あ、逃げた。で、センセイは自己批判されたんですか。

H教授―自己批判か、懐かしいコトバだなあ。うーん、ただどんなエライ先生であっても、あの論文に対してだけは納得いかなかった。だから反論を書いた。

Aさん―えー、冗談でしょう。横綱にふんどし担ぎが挑むようなものじゃないですか。

H教授―こらこら、ひどい言われようだな。せめて、一寸の虫にも五分の魂と言ってくれ。でもねえ、頂門の一針ということだってある。言うべきことだけは言っておかなきゃ、精神衛生上よくないじゃないか。
それに反論しておかないと、ボクの読者でファンでもある多くの若い女性に顔向けできないからなあ。

Aさん―センセ、センセイ。心配しなくったって、そんな読者いないですって。
でも気になるなあ。なんて批判されたんですか。さわりだけでも教えてください。

H教授―ボクはアスベスト規制の妨害者だとさ。誤読か誤解か思い込みか悪意かはわからないけど、そう非難されていて、しかも未だにアスベスト管理使用論者だそうだ。

Aさん―えー、センセイが今でもアスベスト管理使用論者だって。そりゃあウソです。センセイが怒るのは当たり前ですね。

H教授―まあ、ボクだけだったら何言われたって面倒くさいから反論なんてわざわざしようとは思わなかったろうが、ボクの後任者もいるし、それになによりも一所懸命頑張っていただいた検討会の先生方の名誉の問題だからな。
だから反論せずにはおれなかった。心ある読者にジャッジをお願いするとしよう。
O教授の論文(「アスベスト問題は何故こんなに深刻になったのか?―被害の拡大を食い止められなかった「深因」の考察 (試論)」は学術誌だけでなく、ホームページでも公表されている【9】
それに対するボクの反論は4月15日付けのブログだ【10】
読者のみなさん、よろしく審判のほどお願いします。
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【9】 J大学のO教授の論文
「アスベスト問題は何故こんなに深刻になったのか? ――被害の拡大を食い止められなかった「深因」の考察 (試論)」
【10】 O教授に対するHキョージュの反論
日録──思いつくままに「上智大大和田教授に反論する」(2007年04月15日)
今国会での話題
H教授―それから今国会では、前講で述べた温泉法改正が原案通り可決された【11】
自動車NOx・PM法改正も通ることが確実なんだけど、PM2.5のことも付帯決議に入っていて、環境省もPM2.5の環境基準制定に向け、検討会を立ち上げるそうだ。第49講のNHK報道はまんざらガセではなかったということになる【12】
ま、検討会、審議会、各省協議、与党との調整と来るから、そう簡単に数ヶ月で終わるとはいかないだろうけど。

Aさん―あとは?

H教授―環境配慮契約促進法も通過確実らしい。国や独立行政法人の電力や大型耐久財の購入、ESCO事業導入、庁舎・設備設計時における環境配慮を義務付けるということらしいんだけど、だったら環境関係の調査やモニタリングなども対象にしてほしいね。今のやり方は、明らかに安かろう悪かろうだからね。
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【11】 温泉法改正
第51講(その2)「温泉法改正案」
温泉の保護と利用[環境省]
温泉法の一部を改正する法律案[環境省報道発表]
【12】 PM2.5環境基準制定等に関するNHK報道
第49講(その2)「PM2.5の環境基準制定へ動き出す?」
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