環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
トップページへ
第54講「猛暑を前に激動の環境行政あれこれ」
第53講「今後の国立・国定公園のありかたをめぐって」
第52講「独断と偏見のキューバ社会論」
第51講『キョージュ、「拡大」国内排出権取引制度を論じる』
第50講「我、疑う故に我あり ──反温暖化対策論考」
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. 第53講「今後の国立・国定公園のありかたをめぐって」
page 1/4 
1
234
Issued: 2007.06.07
H教授の環境行政時評(第53講 その1)
談合と天下り余聞

Aさん―センセイ、独立行政法人緑資源機構の官製談合事件が摘発されましたね。理事長は林野庁からの天下りのようですけど、責任を取るつもりはまるでないみたいですね【1】

H教授―自分は直接関わってないということだろう。新聞報道によれば、林野庁からの天下り組は談合に関しては蚊帳の外で、何も知らないって言ってるそうだ。天下り組には汚れ仕事はさせないって不文律だったらしいから、具体的には知らなかったかもしれないけど、まったく知らないなんていうことはありえないと思うけどね。
緑資源機構は、かつて森林開発公団と言ってたところで、林野庁から多数の技官が天下っている。林野庁としては大事な天下り先としてこれからも確保しておきたいところだろうが、これからは厳しくなるだろうな。

Aさん―天下りといえば民営化された成田空港会社のトップに役人OBが再任をしようとしたら、官邸に阻止されましたね。

H教授―住友商事の元副社長がなったね。でもこれだって天下りだろう。官の天下りがいけなくて、民の天下りならいいというのも不思議な話だ。
緑資源機構にしたって次の理事長ポストは事務官が虎視眈々かもしれないし、一方じゃ官邸サイドは民からの天下りでそれを阻止しようとするかもしれない。技官、事務官、官邸の三つ巴の暗躍がもう始まってるかもしれない。でもねえ、本当に天下りがいけないんなら、プロパーがなるべきだろう。
ま、いずれにしても、以前も言ったように、国でも25年50歳で天下りという体制はほぼ完全に崩壊した。財務省や公共事業を抱えている省庁は必死に抵抗するだろうが、長期的にみれば、大半の職員は地方自治体と同じように定年まで勤めることになるのは間違いないだろうし、定年もそのうち65歳まで延伸になるだろう。

Aさん―地方自治体じゃ定年後だって天下りしているんじゃないですか。

H教授―部課長クラスじゃ天下りたって給料は半額どころか3分の1にダウンじゃないかな。あれを天下りって言っちゃ気の毒な気がする。
それと、天下りの構図って、決して役所だけじゃない。むしろマスコミも含めて大手民間の方がもっとおおっぴらにやっているよ。一部のトップは定年後も役員になってとんでもない高給。トップへ行くコースから外れたエリートは取引先の弱い立場の会社のトップへ行き、多くの一般の社員は実質的な社内定年制で55歳になったら賃下げ。こういう構造の方にもきちんとメスを入れてほしいね。

Aさん―ま、いずれにせよ、少なくとも安倍さんは財務省を筆頭とする霞ヶ関旧体制を打破しようとする面だけはコイズミさんの衣鉢を継いでいるわけですね。

H教授―衣鉢を継ぐ? また古い言葉を。
【1】 独立行政法人緑資源機構
1999年10月に、「森林開発公団」と「農用地整備公団」を統合して前身の「緑資源公団」が発足。2003年10月には、「緑資源公団」を解体して「独立行政法人緑資源機構」が設立された。農林水産省所管の独立行政法人。
 06年10月に、林道整備事業の受注を巡る常態的な談合の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受け、07年5月に公取委からの告発により理事らの逮捕や本部の強制捜査が行われた。林野庁出身で元長官の理事長は給与の一部を自主返納するものの、辞任しない考えを示す。
 本稿脱稿後、受注業者等による政治献金問題等が発覚したのと前後して、疑惑の渦中にいた関係者が相次いで自殺するなど、より大きな問題へと発展してきている。緑資源機構自体についても、「主要2事業廃止」「事実上解体」などと報じられている。

Aさん―へへ、アタシだって教養のあるところを見せなくっちゃ。

H教授―じゃ旧体制はアッチのコトバでなんというんだ。

Aさん―え? オールドシステムですか?

H教授―アンシャン・レジームだ。それくらいは知っておくんだな。

Aさん―(小さく)えらそうに。アタシの3倍も生きてきたからといって、くだらない雑学を振り回さないでよね。フン。

H教授―え?
 ページトップ

「美しい星50」戦略を祝す
Aさん―いえいえ。
でも、それだけじゃないでしょう。一昨日(5月24日)には突然「美しい星50」戦略をぶちあげ、2050年までに世界のCO2排出量を現在の半分にすることを呼びかけたそうじゃないですか【2】。なかなかやりますねえ。

H教授―「美しい日本」からいよいよ「美しい星」か。
いやあ、ゴールデンウィーク直後の朝日新聞にちらっと出ていて、てっきり誤報だと思ってたからびっくりだね。大英断と言っていいだろう。ただねえ…。

Aさん―現状からの半減じゃなくて、90年からの半減にしろと言いたいんでしょう。
【2】 美しい星50
安倍首相、「2050年までの温室効果ガス半減」を目標とする気候変動政略を提案(EICネット国内ニュース)
平成19年5月24日 国際交流会議「アジアの未来」晩餐会での内閣総理大臣演説  美しい星へのいざない「Invitation to 『 Cool Earth 50 』」 〜3つの提案、3つの原則〜

H教授―そんなケツの穴のちいさ…。

Aさん―センセイ!

H教授―うっ、言い直そう。そんな細かなことを言う気はないさ。ただねえ、どうして「日本が先頭に立ってまず半減させる」って言わなかったんだろう。

Aさん―え? だってそんなこと当然でしょう。言い出しっぺがまず手本を見せるのは、当たり前じゃないですか。

H教授―うーん、だといいんだけどねえ。

Aさん―なんか奥歯にモノが挟まったような言い方ですねえ。

H教授―単位GDP当たりのエネルギー使用量――これをGDPエネルギー原単位というんだけど――は、日本が現状では世界でもっとも少ないらしい。日本を1とするとEU平均や米国は2で、カナダが3という話がある。
とすると、世界のCO2排出量を半減させるんだったら、現状で各国のエネルギー使用量を凍結して、世界各国が日本並みにエネルギー効率をアップさせるだけで可能かもしれないじゃないか。その場合、日本は削減の必要はないということになる。

Aさん―センセイ、それはいくらなんでも勘繰りすぎでしょう。

H教授―そうかなあ。だったらなぜ国内排出量取引制度の構築とか炭素税の導入とか全面的な税制のグリーン化とか再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入とかを言わないんだろう。そういう具体的な政策手段をいっしょに言えばいいのになあと、一瞬思ったんだ。
ま、杞憂に終わればいいけどね。
実はその翌日、つまり昨日だね。前講でも言った「環境立国戦略」の原案がまとまった【3】。なんでも「SATOYAMAイニシアティブ」など重点的に着手すべき8つの戦略を挙げているらしい。
その原案を見れば杞憂かどうかはわかる話なんだけど。

Aさん―じゃ、それを読めばいいじゃないですか。

H教授―うーん、そこまでは新聞に出ていなかったし、環境省のホームページにもまだ提示された原案はアップされていないからわからないんだ。

Aさん―環境省に電話一本かければ済むことじゃないですか。ほんとにケチっていうか、面倒くさがりというか…。

H教授―ま、そういう面は皆無だとは言わないが、誰でも知れる報道だけからどこまで真相に迫れるかを試してみたいんだ。
【3】 環境立国戦略
「21世紀環境立国戦略」(環境省)
第52講(その1)「安倍サンの「環境立国戦略」雑考」

Aさん―(独り言)勝手なこと言ってるわ。
で、その提示された原案には日本自身がCO2排出を半減化させるという目標が明示されていると思います? 論点整理ペーパーには両論併記でしたけど。
また、8つの戦略に、今おっしゃった国内排出権取引制度や炭素税や税制の全面的なグリーン化や再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入は入ってると思われますか。

H教授―遠回しにそれを暗示するようなことは書いてあっても、ズバリとは書いてないんじゃないかな。だって、国民に負担を強いたり産業界が抵抗するようなことを、参院選挙前には言わないだろう―― というのがボクの読みなんだけど、外れてほしいねえ。

Aさん―センセイの予測はいつも悲観的ですねえ。

H教授―予測通りだったら、オレの予測は当たったと自慢すればいいし、外れたらそれこそ大喜びすればいいんで、どちらにしても落ち込むことはないから、その方がいいんだ。

Aさん―ヘンな理屈。ま、それはともかくとして「美しい星50」の発表の翌日に「環境立国戦略」原案提示というのは、偶然の一致ですか。

H教授―さあなあ。環境省かその周辺に誰か智恵者がいて、安倍サンの懐に相当深く食い込んでいるのかもしれないなあ。
 ページトップ
page 1/4 
1
234
次のページへ

Copyright (C) 2004 EIC NET. All rights reserved.