環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第55講「政治の空白に直面する環境政策―と標題だけは大げさに」
第54講「猛暑を前に激動の環境行政あれこれ」
第53講「今後の国立・国定公園のありかたをめぐって」
第52講「独断と偏見のキューバ社会論」
第51講『キョージュ、「拡大」国内排出権取引制度を論じる』
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No. 第54講「猛暑を前に激動の環境行政あれこれ」
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Issued: 2007.07.05
H教授の環境行政時評(第54講 その4)
都が拡大排出権取引にチャレンジ?

Aさん―そういえば、第51講(その4)でセンセイ、拡大排出権取引だか拡大CDMだとかいう話をされたでしょう【16】。東京都がそのあとセンセイの言ったような方針を出しましたよ。なんでも大発生源に厳しいキャップをかけるそうじゃないですか【17】

H教授―うん、あれには驚いた。6月1日に石原サンが「気候変動対策方針」というのをぶちあげ、その中で大規模事業場に対してCO2等総量削減の義務付けと排出量取引制度の導入を表明。これから細部を審議会で詰め、来年度にも環境確保条例改正を行うとした。
国のように国民運動なんていうお仕着せがましいことは言わず、正面から切り込んだのは立派。
まずはお手並み拝見、うまくいけば他の自治体だって追随するかもしれない。どうやら昭和30年代後半から40年代の、自治体が先行して、政府が渋々それに追随するという時代がよみがえるのかも知れない。

Aさん―大阪ガスだって「エナジーバンク」という、中小企業のCO2排出削減を支援するファンドを設立するそうですし、削減したCO2に相当する排出権を大企業に販売できるようにするそうです。民間の動きも急ピッチですね【18】
まあ、センセイがおっしゃるように政府だけが、環境税にしたってずうっと先送りだし、国内排出権取引制度構築への対応が鈍いのが気になりますが、その政府だってあれよあれよという間に、「美しい星50」を組み込んだ「21世紀環境立国戦略」を閣議決定。それでもってG8ハイリゲンダム・サミットに打ってでて、サミットでは「2050年GHG半減を真剣に検討する」という声明にあの頑迷なブッシュさんまでが同意しました【19】
本当に、世界は激動しているということを実感させられました。
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【16】 拡大排出権取引(拡大CDM)と、都の気候変動対策方針
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」
第52講(その2)「「拡大国内排出権取引制度」についての読者からのお便り」
【17】 東京都の拡大CDM政策
『10年後の東京』の実現にむけて 〜「東京都気候変動対策方針」の策定について(平成19年6月1日東京都環境局報道発表)
東京都環境確保条例 on the web
【18】 「エナジーバンク」の設立
国内CO2削減ファンド「エナジーバンク」の設立と運用について(平成19年6月22日 日本政策投資銀行・株式会社日本スマートエナジー・大阪ガス株式会社)
「21世紀環境立国戦略」再説

H教授―うん、次講のときも何か新たな動きが出ているかも知れないね。いや、本講だって、アップされる頃にはどう変わっているかわからない。
でもねえ、変わらないことだってあるんだ。
例えば、閣議決定された「21世紀環境立国戦略」だ。

Aさん―ああ、結局のところビジョン作りであって、立国戦略とは言えないっておっしゃってましたね。でもビジョンとしてはどうなんですか。

H教授―そりゃあ、低炭素社会、循環型社会、自然共生型社会ってビジョンは正しすぎるほど正しいけど、定量性に欠ける。
そして今後1〜2年で重点的に着手すべき8つの戦略というのがあるけど、そのための予算や人員のことは一言も言っていない。

Aさん―8つの戦略って、「気候変動問題に向けた国際的リーダーシップ」「生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承」「3Rに向けた持続可能な資源循環」「公害克服の経験と智慧を活かした国際協力」「環境・エネルギー技術を中核とした経済成長」「自然の恵みを活かした活力溢れる地域づくり」「環境を感じ、考え、行動する人づくり」「環境立国を支える仕組みづくり」ですね。
どれももっともといえばもっともですが、なんとなく具体性に欠けるし、あまりにも総花的すぎるような気が…。

H教授―うん、だから前講で言ったように、世界のCO2半減とはいいながら、日本では半減を目指すのか、目指さないのかわからないままだ【20】

Aさん―環境税とか国内排出権取引制度の構築の話はどうですか。

H教授―やはり、前講の(その1)で予想した通り、検討課題として挙げられているだけだ。
で、さっきも言ったように、目玉は国民一人一日1kgのCO2の減少を目指す国民運動を展開し、ライフスタイルや価値観の変換を目指すとしている。
そんなの、大幅な減税をする代わりに、その減税分を補うだけの大胆な環境税をかけて、省エネしたやつが得をする仕組みでも作りさえすりゃあ、おのずとライフスタイルも価値観も変わってくると思うんだけどなあ。
そして東京都が宣言したように、大発生源に厳しいキャップをかけて、国内排出権取引制度と国内CDM制度を構築すれば、数年もしないうちにガラッと変わるよ。
【19】 「美しい星50」と「21世紀環境立国戦略」
美しい星50
 第53講(その1)「「美しい星50」戦略を祝す」
21世紀環境立国戦略
 第53講(その1)「「美しい星50」戦略を祝す」
21世紀環境立国戦略
 第52講(その1)「安倍サンの「環境立国戦略」雑考」
ハイリゲンダム会議(G8 Summit 2007)
G8ハイリゲンダム・サミット「2050年までの世界の温室効果ガス排出量半減」議長総括にも反映(EICネット国内ニュース)
【20】 国内排出権取引制度構築への危惧
第53講(その1)「「美しい星50」戦略を祝す」

Aさん―でも、その環境立国戦略って、もともとは中央環境審議会の答申だったわけでしょう。日本の環境知性の結晶がどうしてそういうふうになっちゃうのかしら。

H教授―審議会長のコメントが面白いよ。
「社会経済システムを持続可能なものに変革していくためには、公的部門自らが変革を進めるとともに、市場を始めとする私的部門の変革のシグナルを送る必要がある。このために、様々な政策手法を組み合わせた効果的かつ効率的な環境政策を検討するとともにすべての公的部門の政策に環境配慮が織り込まれる手法について早急に検討され、実施に移すことを期待したい」
だそうだ。

Aさん―でも立国戦略って、ビジョンだけじゃなく、そのビジョンを実現させるような「様々な政策手法を組み合わせた効果的かつ効率的な環境政策」と「すべての公的部門の政策に環境配慮が織り込まれる手法」を具体的に提言するものじゃないのかしら。

H教授―うん、だからそうならなかった口惜しさのようなものが滲み出ていると感じたなあ。
前にも言ったように、中央環境審議会に26名の特別部会を設置し、委員の意見をもとに事務局が案をとりまとめたものだと思うけど、委員が26名もいるとどうしても総花的なものになってしまう。
おまけに審議会メンバーには各省推薦枠があって、各省から環境省が暴走しないようお目付け役のような委員も入ってくる。各省が盛り込みたいことを代弁するとともに、盛り込んでほしくないことには徹底抗戦したんだと思うよ。

Aさん―え、審議会メンバーってそうなんですか。そんなこと、どこに書いてあるんですか。

H教授―マル秘の覚書のようなものがあるんじゃないかなあ。
ただ逆に言うと、だからこそ審議会の答申が実効性を持ってくるんだともいえる。各省協議を事実上先行してやってるようなものだからな。でなければ答申の数日後に閣議決定なんてありえないもの。

Aさん―じゃ、日本が大きく変わることなんかあり得ないじゃないですか。

H教授―政治のリーダーシップだろう。安倍サンがコイズミさんの郵政民営化のときのように、断固として主張すれば少しは変わったかもしれない。ま、ボクは郵政民営化が正しいことだとは思わないけどな。
ただ、現に自治体じゃ、首長のリーダーシップで変わることが結構あるからな。東京都は石原サンがリーダーシップを取ったかどうかは知らないけど、「国の鼻を明かし、皆がびっくりするような思い切った政策立案をしろ」くらいはハッパをかけたんだろう。

Aさん―へえ。でもセンセイ、今日は石原サンの評価が高いじゃないですか。

H教授―好き嫌いと評価は別だ。それに今だって、同じ石原なら、石原慎太郎よりも石原莞爾の方を百倍も評価している。

Aさん―うそばっかり。センセイ、本当に好きなのは石原さとみでしょう。ワタシ、知ってますよ、元サユリストが実は隠れサトミストだって。ほんと、センセイってロリコンなんだから!

H教授―…。
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(平成19年6月28日執筆 同月末編集了)
※本講の見解は環境省及びEICネットの見解とはまったく関係ありません。
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