環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
トップページへ
第56講「上方環境夜話 付:回想―役所新人時代」
第55講「政治の空白に直面する環境政策―と標題だけは大げさに」
第54講「猛暑を前に激動の環境行政あれこれ」
第53講「今後の国立・国定公園のありかたをめぐって」
第52講「独断と偏見のキューバ社会論」
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. 第55講「政治の空白に直面する環境政策―と標題だけは大げさに」
page 1/4 
1
234
Issued: 2007.08.09
H教授の環境行政時評(第55講 その1)
自民党政治の終焉か?

Aさん―センセイ、参議院選挙すごかったですね。

H教授―ああ、自民党は改選64議席のうち40を割り込んで結党以来初めて参院第一党の座を明け渡すという歴史的な大敗だ。民主党の一人勝ちで、自公の与党は非改選を含めても過半数割れとなった。年金問題やさまざまな不祥事が続いた上に、コイズミ改革の後遺症――格差拡大、地方切捨て――が地方の反乱を起こしたんだろう。
後者は安倍サンの責任とは必ずしも言えないからちょっと気の毒な気もするけど、今度の惨敗には安倍サンの国家観、歴史観が多くの国民に違和感を覚えさせた面も影響したと思うから、自業自得というものだろう。

Aさん―このあとどうなるんですか。

H教授―安倍サンが続投できるかどうかだよねえ。続投するとは言ってるみたいだけど、遠からず辞任に追い込まれるんじゃないかな。いずれにせよこれからの政局は目を離せないし、一方じゃ政治空白が続くから、政治の行政に対するリーダーシップは落ちざるを得ない。ということは環境政策の方は環境省単独でやれること以外、大きな変化は期待できないんじゃないかな。

Aさん―もし安倍さんが辞任するとしたら、ポスト安倍さんはどうなるんですかねえ。
コイズミさんの再登板という声が強くなるんじゃないですか。

H教授―ご本人が固辞するだろう。
それに純然たる二大政党制に近づいたように一見すると見えるけど、まだまだどうなるかわからないぜ。

Aさん―どういうことですか。

H教授―そもそもが自民党と民主党の政策の違いが実はよくわからない。環境政策も然りだ。安倍サンのユニークな国家観、歴史観で自民党内がまとまっているとは思えないし、小沢サンの民主党にしてもそれは同じ。だからこれから政界再編成が起きるかも知れない。
いずれにせよ個人的には二大政党よりは3〜4ぐらいの中政党が競い合って、そのうちの一つを日本版緑の党みたいなものが占めるというのが健全な姿だと思うけど、その夢は遠のいた。

Aさん―(小さく)また、現実離れした世迷言を言ってるわ。

H教授―それよりもテレビ各局とも選挙特番と銘打って報道しているけど、投票締め切り直後から出口調査の結果だけでバンバン当確を出すのはやめてほしいねえ。開票速報をみる楽しみがなくなるじゃないか。

Aさん―そんなこと、どうでもいいじゃないですか。

H教授―いずれにせよ、日本の今後をどうするかというビジョンと戦略で各党が競い合ったとは思えない。もうこれ以上の自民党政治は耐えられないという民意は明らかになったとはいえるし、、それはぼくも同じだ。だけど、有権者の大半も民主党の政策に賛同して投票したとは思えない。というか、民主党が実現可能な政策を提示したと思えない。
どの党も膨大な財政赤字をどうするのか具体的な政策を語らず、一方で役人叩き・公務員減らしを言うのはどこも同じだ。
温暖化対策のために社会システムをどう変えるのか具体的にはどの党も語らないし、経済成長あってこその環境対策なのか、環境保全の大前提のもとで経済を考えるのかについても語るところがないというのは寂しいねえ。

Aさん―はいはい、次の話題にいきましょう。
 ページトップ

中越沖地震と柏崎刈羽原発

H教授―7月16日に中越沖地震が発生、幸い死者は少なかったものの、今も多くの人が避難所暮らしで、水道・ガスなどのライフラインも一部ではまだ復旧してないようだ。
被災者のみなさん、心よりお見舞い申し上げます。

Aさん―で、その地震で柏崎刈羽原発も火災だの放射能漏れなどがあって大騒ぎになりましたね。

H教授―うん、それが今度の選挙で安倍サンにトドメを刺したといっていいかも知れない。
何と言っても、東電の対応も国の対応もあまりに悪すぎた。
まず変圧器の火災では自治体の消防車が来るまで何の対応も打てず、発電所の消火機能・体制がゼロだということを満天下に知らしめた。
しかもその言い訳が、“想定外”の大地震。
原発の場合、「想定外」のことなどそもそもあってはならないことだ。活断層などの立地調査がいかにいい加減なものだったかが露呈してしまった。
当初、「放射能漏れはない」と発表しておきながら、実はあったことも判明した。
「発電所本体は無事」と言っておきながら、実は発電所屋内のクレーンの破損などが、その後に見つかっている。
早々と、国の原子力委員会委員長は内部調査もせずに、「原子炉本体は無傷で安全機能は維持されている」などと言っているが、こんな調子じゃあ、アテにはならない。廃炉も視野に入れて、何年かかろうと徹底的に検査した方がいいだろう。
記者が東電社長に「責任は?」と聞いたときに、社長が傲然と「何の責任?」と聞き返す姿がテレビで放映された。心証が悪すぎる。これで原発の信用は地に落ちたね。

Aさん―でもこれから真夏、電力供給は大丈夫なのですか。

H教授―うん、だから他の火力発電をフル稼働させたり、福島原発の定期点検を先送りして稼動させたり、よそから買電してなんとか凌ぐつもりらしい。
でもねえ、こんな事故があったんだから、全国の原発を一斉にストップさせて緊急点検をさせるのが本来じゃないかなあ。定期点検先送りなんて、とんでもない話だと思うよ。

Aさん―そんな無茶な! 停電が頻発して、大混乱に陥っちゃいますよ。

H教授―前にも言ったけど、日本は地震と火山の巣なんだ。どこの原発でも「想定外」の大地震が来る可能性があるし、どこの原発でも同じような状況にあることは間違いない。だとすれば、安全が第一優先じゃないか。
エアコンなしで、汗をだらだらかきながら打ち水したりと“スローライフ”とかいうのを経験するのも悪くないだろう。40年前までは皆、そうしていたんだ。
我が家では今だって、来客のとき以外はエアコンを使っていない。

Aさん―そりゃセンセイがケチなだけでしょう。大学の研究室じゃあ遠慮なくエアコン使ってるじゃないですか。

H教授―…うっ、うるさい。
今度の原発事故は国際的に話題になり、IAEA(国際原子力機関)が緊急調査を申し入れた。それをいったんは断っておきながら、新潟県知事が異議を申し立てたりして世間の批判を浴びると、あわてて受け入れを表明するなど、国の方の対応もあまりにお粗末だ。
ところで、各原発の近くには「緊急事態応急対策拠点施設」──略称オフサイトセンターという国の施設があって、ここがそういう緊急時の対策本部になるはずなんだ。当然柏崎・刈羽原発にもあるんだけど、ネット情報によると、今回の事故ではまったく機能しておらず、本部も立ち上がらなかったそうだ。事実だとすれば、まったくのムダガネだったよねえ。11億円をかけた施設だというのに…。
 ページトップ
page 1/4 
1
234
次のページへ

Copyright (C) 2004 EIC NET. All rights reserved.