環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
第56講「上方環境夜話 付:回想―役所新人時代」
第55講「政治の空白に直面する環境政策―と標題だけは大げさに」
第54講「猛暑を前に激動の環境行政あれこれ」
第53講「今後の国立・国定公園のありかたをめぐって」
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No. 第56講「上方環境夜話 付:回想―役所新人時代」
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Issued: 2007.09.06
H教授の環境行政時評(第56講 その1)
日本の一番暑い夏

Aさん―昨日(8月28日)、内閣改造がありました。環境大臣は鴨下一郎サン、お医者さんだそうです。ほかに舛添(要一)サンが厚生労働大臣、前の岩手県知事で改革派知事として名を馳せた増田(寛也)サンが総務大臣です。なにかコメントはありますか。

H教授―うーん、特にないなあ。とにかく暑くてアタマがまわらない。

Aさん―そうですねえ、8月16日に熊谷と岐阜の多治見で40.9℃が出ました。日本の暑さ記録更新です。一体どうなってるんですか、この暑さは。もう8月も末だというのに、相変わらず真夏日に熱帯夜が続いているし。ラニーニャか何か知らないですが、やはり地球温暖化だという俗説に与したくなりますよ。

H教授―ま、この会話がアップされる頃には少しは涼しくなっているだろう。それにしてもホントに暑いねえ。ボクは我が家では来客時以外はエアコンのスイッチを入れないという主義なんだけど、さすがに2〜3日は日中にエアコンを入れたもの。ま、ボクとワイフだけだったら我慢するんだが、ミオがぐったりして可哀想だったからな。

Aさん―ウソばっかり、ミオちゃんはぐったりしていてもエアコンの入っている部屋には入ってこないと先生ン家に行ったBクンが言ってましたよ。

H教授―はは、バレたか。前にも言ったと思うが、この暑さは地球の脈動みたいなもので、自然現象がメインだと思うが、その暑さを凌ぐためにエアコンを入れたりして電気の消費量が増えることでヒートアイランド現象温暖化を加速させているのは事実だろう。
前講でもちょっと触れたけど、柏崎・刈羽原発がダウンした東京電力管内の電力需給はパンク寸前だ【1】。で、ついに8月22日には随時調整契約と言って、料金の割引を行う代わりに需給逼迫時には電気の使用を控えるという契約を交わした23件の大口顧客に対して17年ぶりという電力カットを要請した。

Aさん―うーん、ケチなセンセイですらエアコンのスイッチを入れたくらいですから、「1人1日1kgのCO2カット国民運動」【2】なんて、それを支える何らかの仕組みがない限り、絶対ムリですよね。
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【1】 柏崎・刈羽原発の操業停止と電力供給
第55講(その1)「中越沖地震と柏崎刈羽原発」
【2】 1人1日1kgのCO2削減キャンペーンについて
「めざせ! 『1人、1日、1kg CO2削減』」のサイト(チーム・マイナス6%)
「1人1日1kgのCO2削減」応援キャンペーンについて(平成19年7月3日環境省報道発表)
「1人1日1kgのCO2削減」応援キャンペーンの協賛企業について(平成19年8月7日環境省報道発表)
京都議定書目達計画見直し中間報告が出る

Aさん―ところでセンセイは京都議定書の目標達成はまず不可能だって前からおっしゃってましたけど【3】、政府も事実上のギブアップ宣言を出したそうですね。

H教授―うん、閣議決定された京都議定書目標達成計画、いわゆる目達計画の見直しの中間報告を8月10日に中央環境審議会と産業構造審議会の合同会議で発表した【4】
すでに素案段階で新聞報道がなされていて、その内容は前講で触れたけど【5】、発表された中間報告の中で2010年の排出量の推計をしている。その推計自体、原発稼働率を甘めにカウントするなど、非現実的だという批判も強い──まさに今回の原発事故でもそれが立証されたと思う──んだけど、その推計ですら、京都メカニズムを目一杯活用しても達成は不可能だとしている。

Aさん―へえ、そうなんですか。まあ、推計は推計として、削減への提言もまとめたんじゃないですか。やはり前講で触れた素案通りなんですね。

H教授―うん、国内排出権取引制度は「総合的に検討していくべき課題」で、環境税も「真摯に総合的検討を進めていく」だけだそうだ。
ま、その代わり、安倍サンは内閣改造前だというのにせっせとインドやインドネシアを回って「美しい星50」への協力を要請して回ってきたみたいだよ。
インドでは、故パル判事をやたらにほめちぎってたな。

Aさん―ああ、東京裁判で唯一日本無罪論を唱えた人ですね。

H教授―うん、だけどそれは日本の行為をなんら是認したわけじゃない。歴史を紐解くと、「欧米戦勝国に日本を断罪できる資格はない」ということなんで、パルさんは日本の侵略行為自体には厳しい目を向けていたことも知っておくべきだ。

Aさん―ま、それはそれとして、国内でやるべきことをやらずになんだと思っちゃうけど、そのアジア来訪に成果はあったんですか。

H教授―ま、抽象的な協力は取り付けてきたみたいだよ。リップサービスの域は出ていないと思うけどね。
だって8月10日に閣議了解された概算要求基準、いわゆるシーリングなんだけど、ODAも聖域にあらずとして、今年もまた対前年△3%だもんな【6】
ま、「重点施策推進要望」という別枠の方である程度補填するつもりかも知れないけど、ODAを年々減らすようじゃ、途上国の信頼は勝ち取れないと思うよ。もちろん、ODAの中身はきちんと審査して、途上国の住民の生計と信頼の向上につながるような、そして環境にきちんと配慮したODAにしなければいけないけどね。
ところでキミ、ODAとかJICAとかって知ってるだろうな。
【3】 京都議定書の目標達成の可否
第26講(その2)「温暖化対策最新動向」
第30講(その4)「温暖化対策最前線とデ・カップリング」
【4】 京都議定書目達計画見直し中間報告の発表
中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会 地球環境小委員会合同会合(第21回)
産業構造審議会環境部会地球環境小委員会・中央環境審議会地球環境部会合同会合(第21回) 議事要旨
同 配付資料
【5】 京都議定書目達計画見直し中間報告(素案)について
第55講(その2)「エネルギー問題と温暖化」
「京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する中間報告(素案)」(平成19年7月中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会)[PDF]
中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会 地球環境小委員会合同会合(第20回)
【6】 平成19年度概算要求基準の閣議決定について
平成19年度予算の編成・審議過程(財務省)
平成19年度一般歳出の概算要求基準の考え方[PDF]
同[PDF]
平成19年度環境省重点施策(環境省)

Aさん―バカにしないでください! ODAは政府開発援助、JICAは独立行政法人国際協力機構に決まってるじゃないですか。そんなの中学生でも知ってますよ。

H教授―あ、ワルイ、ワルイ。
でもねえ、大学の編入試験では必ず面接をするんだけど、国際協力に興味あるって受験生に「ODAって知ってる」って聞いても「?」、「JICAって知ってる」って聞いても「?」…だ。
環境問題をやりたいって言う受験生に「温暖化について知ってることを言ってごらん」というと、「ゴミを燃やすとオゾン層が破壊されて温暖化が起きます」っていうのが結構多いんだ。いやになっちゃうぞ。

Aさん―つまらないことを言わないでください!
ま、そりゃあ、アタシだって、昔はそうでしたけど。
でも、センセイだって、ついこの間までは「UFJ銀行」を「USJ銀行」だなんて言って、アトラクション施設とごっちゃにしていたじゃないですか。

H教授―う、うるさい。ボクはどっちにも興味ないんだ。UFOと間違わなかっただけでもよしとしろ。
それよりも前講で政治のリーダーシップが不在になるんじゃないかと危惧したけど【7】、内閣改造間近の頃、防衛省では次官人事を巡って大臣と次官が対立し、大騒動になっていた。

Aさん―あのドタバタ劇は面白かったですね。センセイはどちらに非があると?

H教授―ま、どっちもどっちとしか言いようがないね。
次官在任4年で、なおやめようとしなかった次官も次官だけど、その次官に面と向かって申し渡さずに、闇討ちのように後ろから切りつける大臣も大臣だと思うよ。
以前、外務省でもいろいろあったけど、まだあのときのマキコさんの方が、事務方に直接対決しようとしただけマシじゃないかな。

Aさん―ま、改造以前の話ですから。
ところで観光庁っていうのができるそうですね。
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【7】 政治のリーダーシップ不在に関するキョージュの危惧
第55講(その1)「自民党政治の終焉か?」
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