環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
第56講「上方環境夜話 付:回想―役所新人時代」
第55講「政治の空白に直面する環境政策―と標題だけは大げさに」
第54講「猛暑を前に激動の環境行政あれこれ」
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No. 第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
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Issued: 2007.10.04
H教授の環境行政時評(第57講 その1)
安倍政権蒸発から福田政権誕生へ

Aさん―センセイ、自民党の新総裁は下馬評どおり福田サンに決まりましたが、それにしても安倍サンの辞任にはびっくりしましたね。

H教授―うん、いくらなんでもあんな辞め方はないよなあ。病院で自殺未遂を図ったなんて怪しげな情報がネット上で飛び交っているし、某週刊誌は自らの追及した安倍サン自体の脱税事件が安倍サンを追い込んだと称している。

Aさん―えー、ホントですか。新聞やテレビではそんなこと一切報道しないですね。

H教授―ま、多分ガセネタなんだろう。そんなことより次の総理大臣は誰かの方が重要には違いないんだけど…。

Aさん―え? なんだか意味ありげな言い方ですね。

H教授―今も首相は安倍さんだけど、入院中で首相としての機能は完全に喪失している。ところが首相臨時代行も置いていない。つまり、今現在、政治のトップは空白なんだ。

Aさん―それがどうかしたんですか。後継総裁が決まったんだから、間もなく福田サンが就任するでしょう。

H教授―2週間も政治のトップが空白でも、日本は日々動いていて、われわれの生活には何の支障もない。つまり日本には総理大臣なんていらないってことじゃないか。

Aさん―また暴論を。
でも安倍サンって「環境」には理解があった首相じゃないですか。

H教授―うん、それはそうだ。2050年には世界のCO2を半減と言い切って世界に発信したのは、安倍サンが経済界や経済官庁の言い分よりも、環境省サイドの振り付けに乗ったからだと思う。そして、それは国際社会の動向を見てのご自身での判断だったと思うよ【1】
福田政権になっても「2050年半減」路線から後退させることはできないだろう。

Aさん―でも、そんな安倍首相ですが、評価されず参院選で大敗したのはどうしてですか。

H教授―まあ、コイズミ改革の後遺症──格差拡大──に、年金事件や閣僚の不祥事が相次いだことだろう。
安倍サン自身は、新自由主義的で競争重視のコイズミ改革自体を推し進める気はなかっただろうけど、コイズミ改革を継承するという旗印を下ろすわけにはいかなかった。
で、むしろご本人は教育だとか憲法といった国家主義的な改革をやろうとしたけど、それは多くの国民の求める方向とはズレていたんだ。

Aさん―でも続投しようとしたわけでしょう。

H教授―ボク自身も安倍サンのそういう価値観や歴史観には反対だし、多くの国民も違和感を持ったけど、ご本人はそれなりにマジメな人だから、それを引き続きやろうとしたんだろう。
だけど、もはや与党内でも、従いていく人がいなくなっちゃった。で、疲労困憊のはてにプッツン。一番しちゃいけないときに辞任しちゃった。
もともと強い国家だとか、強いリーダーというのが安倍サンの主張だったけど、安倍サンの性格とは、実はミスマッチだったんじゃないかな。
本人は強い人じゃなかったんだ。基本的には善意の人だけど、線の細い人だったんだと思う。

Aさん―善意の人? その割にはメディアはけちょんけちょんですね。
【1】 2050年、CO2半減計画 ──安倍総理の「美しい星50」構想
第56講(その1)
第55講(その2)
第54講(その4)
第53講(その1)

H教授―当然だろう。「地獄への道は善意で敷き詰められている」んだもの。

Aさん―出ました、十八番が。マルクスの『資本論』第2巻ですね。

H教授―うるさいなあ、キミは(渋い顔)。

Aさん―後継は福田サンで決まりましたけど、センセイ、コイズミさんの再登板というのはありえなかったんですか。

H教授―パフォーマンスのうまさで、今だって国民の支持はかつてほどじゃないにしろ高い。だからご本人は固辞するだろうけど、自民党の中でコイズミさん再登板の声が挙がるかと思った。だが、チルドレンを除いて、一切コイズミコールがなかったのが印象的だったなあ。
福田サンだって口では改革を言うだろうが、少なくともコイズミ改革のような新自由主義的な「改革」を推し進める気はまったくなく、むしろ逆だと思うよ。

Aさん―でも経済は立ち直ったじゃないですか。

H教授―それがコイズミ改革の効果かどうかはわからないが、確かにキミたち学生の就職氷河期は終わったし、多くの企業で景気がよくなったのは事実だろう。
だけどジニ係数を見てもわかる通り、格差は広がる一方だし、生活者が豊かになったという実感はほとんどないんじゃないかな。

Aさん―(小さく)ジニ係数か。…きっとまた名前を聞きかじっただけなのよね。

H教授―え?

Aさん―いえいえ。でも景気がよくなったら、いずれは給料もあがるんじゃないですか。

H教授―激しい競争社会になっちゃったからそうはならないんだ。収益はさらに競争に勝ち抜くために使わなきゃいけないからな。
だったら税金で召し上げればいいんだけど、国際競争力アップのためと称して、むしろ企業減税圧力の方が強くなってしまう。

Aさん―でも福田サンも前途多難ですね。参院では与野党逆転ですし、テロ特措法延長問題もありますし。前門の虎、後門の狼ですね。
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シドニー宣言―安倍サン最後の貢献?
H教授―ま、今のところはお手並み拝見と見守るしかないさ。
本論にいこう。まずはやっぱり温暖化だろうなあ。9月に入っての動きは?

Aさん―安倍サンの最後の晴れ舞台がオーストラリアのシドニーでありました。APEC、つまりアジア太平洋経済協力会議の首脳会議が開かれました【2】

H教授―うん、日米豪がASEAN(東南アジア諸国連合)と中国、韓国を取り込もうとしたんだと思うよ。

Aさん―はあ?
【2】 安倍さん最後の晴れ舞台 ──APECシドニー首脳会談
政府インターネットテレビ「2007/09/12 APECシドニー首脳会議出席 -平成19年9月7日〜10日」
APECシドニー首脳会議(概要と評価)[平成19年9月9日外務省]

H教授―EUはすでに90年比で温室効果ガスの排出量がマイナス数%にまでいってるし、先日来日したメルケル独首相の話を聞いてもわかるように、ポスト京都には野心的な案を出してくるだろう。
だが、日本の政府部内では環境省はEU的な動きに半ば共鳴するだろうが、政府与党内の大勢はそうじゃない。米国と一緒になって反EUの立場に同調、というか主導しようとする意図があったのかも知れない。
だから経産省や外務省なんかは、米豪と一緒になってASEANや中韓を取り込もうと必死になったんだと思うよ。環境省にしたって、アジア諸国との協調によって温暖化対策を進めること自体は大賛成だろうし。
Aさん―(小さく)またセンセイの独断と偏見がはじまった。
で、それが効を奏して、域内では初めてとなる温暖化対策宣言である『シドニー宣言』が出されたんですね【3】

H教授―「ポスト京都」として微温的だが、一応は数量的な、途上国も含めた何らかの枠組を作ってEUに対抗しようとしたんだ。
中国をはじめとした途上国が一切の数量的枠組拒否の姿勢を崩さず難航したが、結局、努力目標としての数量目標の明示に成功した。
「エネルギー効率を2030年までに05年比で25%アップ」、「域内の森林面積を2020年までに2000万ヘクタール増加」の2つだ。

Aさん―センセイはどう思われます?

H教授―そりゃいいことには違いないけど、米国にしても豪州にしても京都議定書離脱国だ。そんな国と組んでどうするんだという感は拭えないね。しかも、ブッシュさんは国際的な信用も今やゼロに近いというのに。

Aさん―じゃ、どうしろと?

H教授―環境外交はもちろんいいけど、それより、日本の排出量削減の目標を明示するとともに、それへのロードマップとそのための政策手段を明らかにする、そして途上国に対してCDMや環境ODAを充実強化していくことが最優先だと思うよ。
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【3】 シドニー宣言
気候変動、エネルギー安全保障及びクリーン開発に関するシドニーAPEC首脳宣言(骨子)[外務省]
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