環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
第56講「上方環境夜話 付:回想―役所新人時代」
第55講「政治の空白に直面する環境政策―と標題だけは大げさに」
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No. 第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
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Issued: 2007.11.08
H教授の環境行政時評(第58講 その2)
時評2 浜岡原発差し止め請求判決が出る

Aさん―それから浜岡原発の運転差し止め訴訟の判決が、26日に静岡地裁で出されました。国側の全面勝訴でしたね。

H教授―うん、全面的に国、電力会社側の言い分を認めた。03年の高速増殖原型炉「もんじゅ」の設置許可訴訟、06年の北陸電力志賀原発2号機の差し止め訴訟【2】と地裁段階での敗訴が続いていたから、国も中部電力もほっと胸をなでおろしただろう。

Aさん―でも当然原告側は控訴するでしょう。

H教授―あの手の裁判は一般的に高裁、最高裁と上にいくほど、現実容認になる傾向が強いから、逆転判決は期待できないと思うなあ。
ともあれ、昨年原子力安全委員会が新たな耐震設計審査指針を策定【2】し、それに基づいて中電が安全性の評価を終えていることや、柏崎・刈羽原発が先般の中越地震で想定以上の規模の震災にあったにもかかわらず、炉心部は一見それほど大きな被害を受けなかったこと【3】も、裁判官の心証形成に相当影響したんじゃないかな。

Aさん―うーん、でもそれでいいんですかねえ。

H教授―柏崎・刈羽原発の炉心部は、見た目はたいした損傷はないように見えるかもしれないが、実は核分裂反応を制御する制御棒の一本が引き抜けなくなっていることが先日わかったんだ。それほど安心できる状況じゃないと思うよ。
それに浜岡原発は、東海地震という、今後数十年内には確実に起きるとみられているプレート境界のひずみが解放されるタイプの大地震の震源想定地域のど真ん中に位置しているんだ。日本最大の活断層であるフォッサマグナにも近いから、直下型地震が襲う可能性だって否定しきれないんじゃないかな。
【2】 「志賀原発の差し止め訴訟」および「原子力安全委員会による耐震設計審査指針」に関する本講での話題
第39講(その3)「原発開発の新動向」
【3】 「柏崎・刈羽原発の中越地震による被害状況」に関する本講での話題
第55講(その1・2)「中越沖地震と柏崎刈羽原発」

Aさん―万一のときの不安は残るってわけですね。

H教授―うん、億一か兆一かわからないが、炉心崩壊が起きた場合の被害はちょっと想像がつかないものがある。だから判決は判決として、地震危険地域の既存原発は耐震度アップだけじゃなく、長期的には廃炉の方向に持っていかなきゃいけないと思うよ。
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「ポスト京都」の万華鏡
Aさん―さて、毎度おなじみ温暖化ですが、COP13の予備会合がいよいよ始まりましたね。本番前だというのに、すでにいろんな動きが出てきているようじゃないですか。

H教授―うん、いろんな動きが同時多発的に出ている。予備会合の動きは次回にみることにして、周辺部での動きのいくつかを見てみようか。
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万華鏡・その1 ──IPCCとゴア氏にノーベル賞

Aさん―まずは、今月12日、ノーベル平和賞がIPCCとアル・ゴアさんに与えられました。

H教授―これはCOP13に向けてのノーベル平和賞委員会の強いメッセージだろうし、ブッシュさんに対する手厳しい批判だと思うよ。

Aさん―でもゴアさんに対しては異議のある人もおられるようですね。

H教授『不都合な真実』で温暖化の深刻な影響を訴えているにもかかわらず、ゴアさんの私生活が必ずしも<環境に優しくない>という言行不一致への批判に加えて、その論にもオーバーな部分があって科学的に正しいとは言えないという話だね。
読者からもそういうお便りがあった。
いずれも納得しがたい部分があるのは事実だけど、前者は誰しも少しくらいは覚えがあるだろうし、ボクだってないわけじゃない。程度の問題で、その「程度」があまりひどければボクのゴアさんへの評価は変わるかもしれないけど、やはり温暖化対策の重要性をアピールし続けた功績は大きいと思う。
後者に関しては不正確な部分だけ指摘すればよいだけで、功績を全否定するには当たらないだろう。

Aさん―「環境」でおカネを稼ぐっていえば、某先生の『環境問題はなぜウソがまかり通るのか・2』がヒットしているそうですね。センセイはもう読まれましたか?
H教授―まだ読んでないけど、大体どんな内容か想像がつくよ。第14講(その3)でも一度取り上げたことがあるけど、部分部分は正しい内容をつないで壮大なウソを作り上げているアクロバットはみごとだよね【4】
でも安井先生の以下のブログを読んで、買ってまで読もうという気もなくしちゃった。

先日、毎日新聞の某記者と、この著者について雑談をしました。その記者が言うには、「その著者は、『今回の著作で4000万円の所得を得た』と言っていたそうだよ。考えてみると、世の中意外とチョロイのかもしれない。
※「市民のための環境学ガイド」の今月の環境:
 http://mntrav.cocolog-nifty.com/kankyo/2007/10/post_b320.html

Aさん―4000万円なんて想像もつかないから、うらやましいとは思いませんけど、この時評が本になって、10万円くらい印税が入ればうれしいなあ。
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【4】 部分部分は正しい内容をつないだ壮大なウソ
第14講(その3)「ダイオキシンの余波と、リサイクルの功罪?」
安井至先生のブログ
万華鏡・その2 ──米国上院の動き

H教授―バカ。
話を元に戻すぞ。18日には米国上院で「米気候安全保障法案」が提出されたという記事が出ていた。温室効果ガス排出量取引や技術開発の積極的な投資で2050年には対05年比で63%減らすというもので、自主的削減に期待するというブッシュ政権に真っ向から異議を唱えている。
この法案は従来温暖化対策に消極的と言われた共和党議員も共同提案者に入っているし、なによりも電力業界最大手などの産業界からも支持されているということだ。

Aさん―へえ、日本じゃ排出権取引にも環境税にも産業界も経産省も反対で、ブッシュ政権と同じく自主的削減に任すべきだという考えですよね。
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万華鏡・その3 ──経済同友会の動き
H教授―うん、で、今月に入って経産省と環境省の大臣、次官が公然とバトルを開始した。ま、それでも10月11日の中央環境審議会と産業構造審議会の合同部会では、産業界の自主行動計画の目標を13業界について年1300万トン上積みすることに決めた。
ただねえ、産業界の代表と言えば経団連と思われているけど、経済4団体といって、日経連とか商工会議所とか経済同友会とかがあるんだ。面白いのは、そのうちの経済同友会の代表幹事が、(10月)16日の記者会見でポスト京都について、経団連の各国の自主的な目標設定という方針に反対、義務的な目標にすべきだとし、環境税や排出権取引制度にも賛成の意向を表明した。
環境省はわが意を得たりと思ってるんじゃないかな。
経済同友会の方が世界をよく見ているという気がするよね。いずれにせよ産業界も一枚岩じゃないことが鮮明になった。
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万華鏡・その4 ──松下電器の場合

Aさん―松下電器が今後3年間で二酸化炭素排出量を総量として30万トン減らすと発表したそうじゃないですか【5】

H教授―うん、それまで個別各社では単位生産量当たりのCO2排出量を減らすこと、つまりエネルギー効率のアップを目標としていた。それをはじめてCO2絶対量の削減という形で目標を明言した。こうした動きが産業界全体に広がるきっかけになればいいよね。
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【5】 松下グループの温暖化対策
松下グループ 「eco ideas」戦略
松下電器CSR報告書 第三者意見(ナチュラルステップ/2007年4月)
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