環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
第56講「上方環境夜話 付:回想―役所新人時代」
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No. 第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
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Issued: 2007.12.06
H教授の環境行政時評(第59講 その4)
拡大フィフティ・フィフティ

Aさん―でもその手法は他にも応用が効くんじゃないですか。

H教授―うん、学校に限ることはなくて、いろんなところで応用は可能だと思うよ。
ボクはこの考えをもっと進めて、温暖化とか環境問題を超えた次元での「拡大フィフティ・フィフティ」はどうかと思っている。

Aさん―拡大ミティゲーション、拡大CDMの次は拡大フィフティ・フィフティですか【21】。何ですか、それは。

H教授―冒頭の話だけど、太田大阪府知事が高い講演料を貰って世間の批判を浴び、そうなると与党も突き放し、今や三選が危うくなっている。
だけど、実は講演は秘密でもなんでもなかったし、記者クラブや与党の連中だって、太田サンがタダで講演しているなんて思ってなかったはずだ。
有名人に講演してもらえば、50万円とか100万円とかの講演料というのは、決して稀じゃない。
故・宇井純サンだって中西準子サンだって講演をお願いすれば、世間から見れば高額の謝礼を払うことになるし、それはある意味当然という見方もできる。

Aさん―そりゃあそうかもしれないけど…。
【21】 拡大シリーズ
拡大ミティゲーション
第43講(その4)「拡大ミティゲーション論」
拡大ミティゲーション
第48講(その3)「拡大ミティゲーションの新展開」
拡大CDM
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」

H教授―太田サンの場合、その講演料は別に税金から出ているわけじゃあないよね。じゃあ、いいじゃないか。それで府の政策のPRなんかすれば、広報活動にもなる。もちろん、高額の講演料を自分から言い出したり、講演料目当てで自分の方から仕掛けたりしちゃいけないけどね。
問題はその額が、やはり庶民の目からみると高額すぎるうえ、それを全部自分のフトコロに入れていたことだ。

Aさん―じゃ、センセイはどうしたらいいと?

H教授―大阪府は赤字で困っているんだから、知事は講演依頼があれば公務に差し支えない範囲でどんどんやってもらい、講演料の半分を府の収入にすればいいんだ。そして残りの半分は太田サンの収入にすればいい。
ただ、そうはいっても公僕なんだから、常識外れの高額にならないように、上限──例えば1回10万円──を決めておいて、講演料の半額が10万円を越せば、10万円で打ち切りにするんだ。
100万円の謝礼だったら、10万円を自分のものにして、90万円は府の収入にする。10万円の謝礼だったら、5万円を自分のものにして、5万円は府の収入にすればいいんだ。

Aさん―…。

H教授―そして講演依頼や執筆依頼については窓口を決めておいて、すべてホームページで公表する。どの団体からいくらの講演料で講演依頼があり、どういう理由で受けたか、断ったかまで公表すればいいんだ。
公表しないからよくないんだ。堂々と公表してやればいいんだと思うな。
そうすると非常識なものは淘汰されるよ。
これが拡大フィフティ・フィフティだ。

Aさん―なるほど。そのやりかただったら、一般の役人にも適用できそうですね。

H教授―実は霞ヶ関の役人が講演して謝礼を貰うというケースは以前は日常茶飯事だったし、形を変えたワイロみたいなものもあったらしい。あくまで噂だけど、大蔵官僚なんてちょこっと講演してウン十万円の謝礼を貰い、そのあと宴席、翌日は接待ゴルフという、守屋みたいなのがゴロゴロいたという話も聞いたことがある。
でも環境庁じゃ、そういうのは聞いたことがない。せいぜい「お車代」くらいだった。
ところが、形を変えたワイロみたいなのが、世間にばれて批判を浴び、それからは役人は講演をしても一切謝礼を受け取ってはいけないことになった。いや、それどころか、交通費さえ講演先から貰うことは難しくなってしまった。
今度の太田サンの場合は、役人とはいえ特別職だから、そうしたルールに抵触するわけじゃないんだけど、「隗より始めよだろう」と批判を浴びて、今後は謝礼を貰わないと言い出している。
でもねえ、こうした内向きの発想はガラっと変えるべきだと思うよ。

Aさん―だから拡大フィフティ・フィフティですか。

H教授―だって特別職であれ指定職であれ一般職であれ、要請があれば公務に差し支えない範囲で、どんどん世間に出て行ってPRしたり講演するのは当然だ。今じゃあ、行政職員による環境出前講座なんてのもあるくらいだ。
だけど一円も謝礼を受け取っちゃいけない、交通費も受け取っちゃダメだなんてなれば、頼む方だって頼みづらいし、やる方だってやりたくなくなってしまうのは当然じゃないか。
それは決して国民にとっていいことじゃない。

Aさん―そりゃあまあそうかも知れませんけど、高給をとっておいて、さらに高額の謝礼をもらうなんて、反発を買うのも当然じゃないですか。

H教授―今まではね。だからさっき言ったように、限度額を越えない範囲で半額を貰えばいいんだ。知事が限度額10万円なら指定職は5万円、管理職は3万円くらいかな。
原稿料だって同じようにすればいい。これが拡大フィフティ・フィフティだ。そしてそれを完全にガラス張りにするんだ。

Aさん―センセイの役人時代はどうだったんですか。

H教授―もちろん頼まれれば引き受けたよ。といってもポストによってまったく依頼のないときもあったし──というかそちらの方が多かったけど──、多く頼まれたポストにいたときだって年数回程度だったけどね。
頼まれると、日曜に自宅で講演用の資料をせっせとつくっていた。忙しい部下に、そんなこと、とても頼めないからな。
で、宴席も招待ゴルフもなく、講演だけやって、まっすぐ帰ってきたけど、「お車代」をくれるときは貰った。大抵1万円、たまに2万円。
で、貰った半分を課の親睦会に寄付していた。拡大フィフティ・フィフティを実践してきたんだ。
環境庁では、来客に出すお茶だって、ボクら職員が自腹を切って積み立てた親睦会のカネを使っていたんだぜ。だから、お車代2万円なんて言うと課員一同大喜びしていた。
今じゃ、それも許されないというのはヘンだと思うな。

Aさん―蟹は自分の甲羅に似せて穴を掘るそうですね。なんだかいじましくて、涙が出そうだわ。拡大シリーズ、今度のが一番ショボイですね。

H教授―…(赤面)。

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(平成19年11月30日執筆 同年 12月4日編集了)

註:本講の見解は環境省およびEICの見解とはまったく関係ありません。また、本講で用いた情報は朝日新聞と「エネルギーと環境」(週刊)に多くを負っています。
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