環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
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No. 第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
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Issued: 2008.01.16
H教授の環境行政時評(第60講 その2)
検証:COP13

Aさん―ところで12月の話題は何といってもCOP13、それに来年度の予算・税制でしょう。
COP13&COP/MOP3についてはいかがですか。

H教授―もういろんなところで言われているから、さらっと済ませるけど、インドネシアのバリ島で12月3日から始まり、予定より1日会期を延長して12月15日に閉幕した。
具体的な成果はバリ・ロードマップ(Bali Action Plan)が採択されたことが挙げられる【1】

Aさん―来年末までにポスト京都の枠組みを作り、それをCOP15で合意するということですね。

H教授―うん、で、そのために気候変動枠組条約の下で特別作業部会を作ることと、現在の京都議定書の下での特別作業部会も引き続き存続させることが決められた。これを2トラック方式というらしい。後者には当然のことだけど米国が入っていないことに注意しておく必要があるだろう。

Aさん―でも来年末までにポスト京都の枠組みを決めるということは、前から決まってたんじゃないですか。
【1】 COP13/MOP3 バリ・ロードマップを採択して閉幕
http://www.eic.or.jp/news/
?act=view&serial=17870&oversea=1
Bali Action Plan

H教授COPの場で採択されたということに意味がある。それに、その枠組みをどういうふうに作っていくかまでは決まってなかったんだ。
今回の会議では、今後の交渉の前提となる共通の認識を合意文書に盛り込もうということで、先にEUが仕掛けた。
つまり、最初の議長提案では、以前から言われていた「2050半減」以外にも、「先進国は2020年に90年比で25から40%のGHGの削減が必要」と明記していたし、さらに途上国の削減の必要性も述べていた。
だけど、前者には日米が反対、後者には途上国が反対。すったもんだの末、枠組み条約の下での特別作業部会に関する文書では、2050半減も含めてすべて消えた。
「途上国の削減の必要性」の明記に最後までこだわったのが米国で、こちらは途上国のすべてから激しいブーイングを浴びせられ、最後には口をつぐむしかなかったようだ。
合意文書に辛うじて残ったのは、IPCCの第4次統合報告書を尊重するという趣旨の表現。
だから名を捨てて実をとったといえるかもしれないし、それゆえに貧しい途上国はEUの主張に頷いたんじゃないかな。
それに京都議定書の下での特別作業部会に関する文書では「25〜40%削減」は明記された。これには米国は関与できないし、日本も反対しきれなかったようだ。
あと途上国でも中国、インドのような急成長真っ盛りの排出大国と、ツバルのような小島嶼国や最貧国とではかなり対応が違うことも明らかになったようだ。

Aさん―米国と日本は同じ主張だったんですか。

H教授―米国が京都議定書のような拘束力のある削減目標を掲げること自体に反対したのに対して、日本は削減目標やその性格は特別作業部会で議論すべきという主張だとして、その違いを強調しているらしいんだけど、対外的には同じ穴の狢に見えたんじゃないかな。

Aさん―なぜ日本はそんな主張をしたんですか。

H教授―経済産業省や経団連の主張はどちらかというと米国と同じで、環境省の意見はEUに近い。つまり日本としての統一見解がないんだから、数値目標については先送りを主張するしかなかったんだろう。

Aさん―なんだか情けないなあ。

H教授―だから不名誉な化石賞の1位から3位までを日本が独占したんだ。

Aさん―化石賞って、温暖化対策にもっとも後ろ向きな発言をした国に環境NGOが与える賞ですね。恥ずかしくなってくるわ。日本の代表団の自己評価はどうなんですか。

H教授―12月17日にCOP13&COP/MOP3の概要と評価について公表しているんだけど、概ね日本の主張が世界に認められたみたいな自画自賛をしているよ【2】

Aさん―へ?(しばし絶句)…。その他には何かなかったんですか。

H教授―途上国からは適応策に対する支援強化の訴えが相次ぎ、CDMクレジットの2%を原資とする「適応基金」の運営理事会設置を決めた。また、08年末のCOP14開催国がポーランドに決まった。
あ、それから森林の減少・劣化に由来するGHGの削減策を次期枠組みに組み込むことについて検討を開始することが決められた。

Aさん―それはどういうことですか。吸収源対策のことは決まっていたんじゃないですか。
【2】 気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)の結果について(平成19年12月17日 環境省報道発表)
http://www.env.go.jp/press/
press.php?serial=9178
H教授―依然として途上国の森林伐採は続いており、これに由来するGHGは人為による排出量全体の2割にも達するという試算があるらしい。
この対策として、植林についてはCDMにカウントされる一方で、既存の森林の保護のための支援はCDMにカウントされてなかったんだ。
あ、そうそう、これと直接は関係ないけど、カーボンニュートラルということで急速に需要が高まっているバイオ燃料については、その一つであるパーム油を抽出するアブラヤシの耕作地も急速に増えている。
耕作地にするために泥炭地の樹木を伐採したり、水路を掘ったりするんだけど、これが結果的にカーボンニュートラルどころか、パーム油で代替される化石燃料起源のGHGより3から10倍のGHGを放出することになると国際湿地保全連合が先月発表したそうだ。

Aさん―食糧との競合も深刻ですよね。トウモロコシのバイオ燃料化がメキシコの主食ソルティージャの値の急騰をもたらし、貧しい人たちを直撃しているという話もありますから、手放しでバイオ燃料・バイオ燃料と騒いじゃいけないですよね。
やはりエネルギー総需要の抑制をまず考えなくちゃいけないんでしょうね。
COP13の後に―目達計画見直し最終報告案

H教授―だいぶわかってきたじゃないか。また話を元に戻すけど、国内でもCOP13以降、いくつかの動きがあった。

Aさん―ひとつは京都議定書目標達成計画、いわゆる目達計画の見直しについて中央環境審議会と産業構造審議会の合同審議会で最終報告書案をまとめたことですね【3】
それによると、京都議定書の達成は環境税や国内排出量取引制度自然エネルギー固定価格買取制度の導入等の抜本的な対策なしでも達成可能だそうですね。

H教授―まあ、いっぱい条件をつけた上でのことだし、その条件がクリアされる担保は何にもないけどね。

Aさん―センセイはどう思われます。

H教授―そりゃあ、そういう条件がクリアされれば達成は可能だと思うよ。でも、その条件は到底クリアできそうにないし、数字の辻褄合せにすぎないと思うボクは思うけどね。

Aさん―他にも何かあるんですか。
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【3】 京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告(案) [PDF 357KB]
中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会 合同会合(第30回)資料
http://www.env.go.jp/council/
06earth/y060-73/mat01.pdf
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