環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
第57講「第三次生物多様性国家戦略案をめぐって」
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No. 第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
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Issued: 2008.01.16
H教授の環境行政時評(第60講 その3)
COP13の後に―ついに政府の方針転換か

H教授―福田ソーリが日本独自の中長期的な削減目標の設について、1月末のダボス会議の場で明言することにしたそうだ【4】
COP13の日本の不甲斐ない対応、途上国からの評判の悪さが相当に利いたんだろうね。
年末の4大臣会合で、環境大臣、外務大臣、官房長官が方針転換を主張。経済産業大臣は沈黙を決め込む中、方針転換が決まったと新聞にはあった。事実とすれば朗報だね。

Aさん―へえ、具体的な数値まで明示するんでしょうか。

H教授―いや、それは間に合わないから、7月の洞爺湖サミットまでに詰めるそうだ。
とすると経済産業省と環境省との猛烈なバトルが始まるだろうし、いよいよ福田サンの真価が問われるね。

Aさん―どうしてですか。

H教授―経済産業省や経団連は、国別の削減目標を明示することに一貫して反対してきた。そしてそれに代わる指標として、拘束力のない産業部門別の省エネ効率目標だとか単位GDP当たりの排出量とかを模索してきた。
そうした予想される国内の反対を突破できるかどうか、突破したとしてどの程度の削減目標を明示できるか、明示できても削減のための有効な政策手段として、毎年検討課題とするだけで先送りしてきた環境税や国内排出量取引制度や国内CDM制度、さらには自然エネルギー固定価格買取制度などの導入を打ち出せるかどうかだ。
【4】 ダボス会議
世界経済フォーラム(World Economic Forum;略称WEF)の年次総会のこと。
第49講(その2)「IPCC第四次報告書の波紋」

Aさん―センセイの予想は?

H教授―そりゃあ、福田サンにはリーダーシップをとってがんばってほしいけど、それまで福田内閣自体が持つかどうかという問題がある。
両院での与野党ねじれの中で、税制だって予算だって強行突破できるかどうか。不安材料は山ほどあるよ。
ただねえ、民主党は温暖化対策として「国内排出量取引市場創設法案」を出すそうだ。また税制改革では「温暖化対策税」の創設も提出するそうだ。
国際的にもポストブッシュで米国の政策転換もほぼ確実だ。
だったら、政局安定のために、ここで民主党案を取り込むという手法もあるんじゃないかと思うんだけどねえ。

C型肝炎と水俣病
Aさん―福田サンの発案かどうかは知りませんが、血液製剤によるC型肝炎問題については、厚生労働省の頭越しに、議員立法で全員の救済と国の責任を認めようという方向を打ち出して、ようやく解決の兆しが見えてきたじゃないですか。あれと同じような方法は取れないんですか。

H教授―C型肝炎の場合、相手は製薬会社だけだったけど、温暖化の場合は産業界全部を敵に回すことになるんだぜ。だから簡単にはいかないと思うよ。
でもねえ、実際には産業界だって一枚岩じゃないはずで、経済同友会は国際的な波に乗り遅れまいとしているみたいだから、ウルトラCの可能性もあるかもしれない。
事実、諸外国ではその方向で動いている。前講の(その2)で述べた米国の「気候安全保障法案」【5】は、下院のみならず上院委員会でも可決されたらしいし、ドイツじゃあ2020年までにGHGの4割削減という目標を定め、そのために14の法案や通達をまとめたエネルギー・環境包括案を閣議決定したそうだ。今年中に議会承認を得て、来年度から実施していく方針みたいだぜ。
まあ、そうは言ってもC型肝炎と同じ手法は、日本の場合、温暖化問題じゃ難しいと思うな。ただ、この手法がすぐに使える環境問題が他にあると思うんだ。なんだかわかるか。
【5】 気候安全保障法案
第59講(その2)「温暖化をめぐる攻防―バリを目前にして」

Aさん―わかった! 水俣病ですね。

H教授―ピーンポン。その通り。だって構造が実によく似ている。
どちらも国の責任を認めるかどうか、時効だとか判断基準にとらわれず被害者全員の救済を認めるかどうかが争われてきたんだ。
これをやれば福田サンの評価はもっと上がると思うんだけど、非公式にそういう知恵をつける奴が環境省にはいないのかなあ。まあ、財務省はいやがるだろうけど。
道路特定財源の結末
Aさん―センセイ、ところで前講の(その1)でおっしゃってた道路特定財源の話の結末はどうなったんですか【6】
【6】 道路特定財源の結末
第59講(その1)「道路特定財源をめぐる混迷」

H教授―まあ、予想通りだねえ。というか、ほぼ国土交通省の描いた絵図通りだったんじゃないかな。
国土交通省の言う「真に必要な道路」の整備費総額は1割縮小して59兆円になったけど、国土交通省にとっては当初から織り込み済みだったんじゃないかな。
そして暫定税率は十年間延長。余剰分は一般財源化ということで、来年度はとりあえず今年度の1800億円を上回る額を一般財源化するそうだ。
ただねえ、今までだったらこれで決まりだったけど、そう簡単にいくかどうかはわからない。

Aさん―どうしてですか。

H教授―参院与党の民主党が真っ向から反対している。
年末に発表した民主党の税制改革大綱によると、暫定税率を全廃するだけじゃなく、道路特定財源自体も廃止する。揮発油税は温暖化対策税に吸収し、自動車取得税は廃止、重量税と自動車税は地方税である保有税に一本化し、地方の一般財源にするそうだ。

Aさん―すごくドラスティックじゃないですか。もう道路整備で毎年何兆円も使わないという脱道路宣言といっていいんじゃないんですか。

H教授―はは、ところがそうじゃないらしい。現在の整備水準を維持するとしているから、財源をどうするのか摩訶不思議だね。

Aさん―で、今後どうなるんですか。

H教授―このまま行けば、衆院で政府案が可決されても、参院で否決。そのあと衆院で再可決すれば強行突破できるが、対立法案を片っ端からそうやって強行突破するわけにはいかないだろう。
次の衆院選で与野党逆転すれば、ネジレはなくなって民主党政権が誕生するし、運よく自民党が勝ったとしてもネジレ状態が続くだけだから、福田サンも薄氷を踏む思いの毎日じゃないかな。
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