環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第62講 『ニッポン、国内排出量取引制度導入に政策転換』
第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
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No. 第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
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Issued: 2008.02.07
H教授の環境行政時評(第61講 その1)

Aさん―センセイ、まったく正月明けからいろんな事件がつぎつぎと起きていますね。
9日に日本製紙グループの賀状の古紙配合率偽装問題が発覚しました。ところがさらに、18日には大手製紙会社の大半がコピー用紙などのいわゆる再生紙について、古紙配合率を偽装していることが判明して大混乱。グリーン購入法の運用見直し論議にまで発展しています。
また、過激な反捕鯨団体シー・シェパードは、オーストラリア近海で日本の調査捕鯨を妨害していましたが、15日にはそのうち2人が捕鯨船に乗り込み、ついに捕鯨船に拘束される事態にまで至りました。
26日にはダボス会議、つまり世界経済フォーラム年次会合【1】で、福田サンが日本の温暖化対策について演説。27日には大阪府知事選でトンデモ弁護士の橋下徹サンが圧勝。
30日には中国製のギョーザによる有機リン中毒事件が発覚、パニック状態が継続中です。

一方、政界は年明けからガソリンの暫定税率延長問題【2】で擦った揉んだしていましたが、30日には与党が「つなぎ法案」なるものを提出、委員会で可決したかと思ったら、その午後には一転取り下げというドタバタ劇。
きっとアタシたちのこの会話がアップされる頃には、また何か起きていますよ。

H教授―仕方がない。じゃあ、一個一個片付けていこう。

【1】 ダボス会議について
第49講(その2)「IPCC第四次報告書の波紋」
【2】 ガソリンの暫定税率延長問題について
第35講(その2)「環境税と特会見直しと第二約束期間」
第59講(その1)「道路特定財源をめぐる混迷」
日本を揺るがせた謎のギョーザ騒動
Aさん―もっともホットな話題は中国製ギョーザ問題ですね。中国から輸入された加工食品のギョーザが原因で被害者が続出、スーパーなどから中国製品が一斉に姿を消すなどの大騒動になっています。

H教授―うーん、あの事件は謎だらけだなあ。今の時点で変な憶測を述べるのはやめておいた方がいいだろう。

Aさん―謎だらけって? だって製造流通過程のどこかで、有機リン系の農薬である「メタミドホス」が混入したから起きた事件だということは、はっきりしているんじゃないですか。
中国産ホウレンソウでも、基準を越す残留農薬が検出されたこともあったし、中国の食品についてはかつてもいろんな事件が報じられました。だったらああいうことがあっても不思議じゃないんじゃないですか。
一方じゃ、加工食品については日本の検疫体制も整っていないそうじゃないですか。

H教授―それは事実だけど、基準値を越すような残留農薬があっても、一回食べたぐらいでは何ともないのがふつうなんだ。毎日食べ続ければ慢性中毒症状が出てくる可能性があるけど、一回の摂食で中毒症状を起こすなんてことはめったに起こることじゃない。
問題の工場は中国でも衛生管理のしっかりしたところだったそうだし、急性の中毒症状を起こすほど大量の農薬が製造工程で混入した可能性はあまり考えられないんだよなあ。
被害の訴えは現時点で1,000人程度になっているそうだが、明確な農薬中毒と断言できるのは、今のところ千葉と兵庫の3家族どまりだそうだ。
メタミドホスは中国でも製造使用が禁じられている。急性中毒患者を出すほどの大量のメタミドホスがもし製造工程で混入したんなら、三家族にとどまらず、想像を絶するような悲惨な大事件になったんじゃないかと思う。

Aさん―じゃあ、流通過程で混入したというんですか。

H教授―事故か意図的かはわからないが、その可能性はあると思うな。ニュースじゃあパッケージに穴が開いていたという話もあった。
緊急避難的に中国製の加工食品が棚から引き上げられたり、消費者が中国製のものを食べ控えるのはやむをえないとしても、しきりに中国非難や検疫体制批判をしているマスコミに関しては、もう少し事実関係がわかってからにした方がいいんじゃないかな。
もし、日本に輸入されてから意図的に混入されたものだったとしたら、今度は猛烈な反日運動を引き起こしかねない。

Aさん―ま、それはそうかもしれませんが、検疫体制が不十分なのはその通りじゃないですか。

H教授―もちろんそうだけど、一方じゃ「小さな政府」だとか、「官から民へ」だとか、さんざん煽っておきながら、急にそんなこと言い出すのは自己矛盾じゃないか。
仮に中国でなんらかの事故で混入したものだとしよう。しかし、今回の場合、急性中毒を引き起こすほど高濃度に混入していたのはどうやらごく少数らしい。だったら断言しておくけど、検疫体制がどんなきちんとしていても、今回のような事件の摘発は不可能だ。

Aさん―どうしてですか。

H教授―全数調査なんて不可能だし、やれるのはせいぜい抜き取り調査ぐらいだろう。そんなやり方で発見できるとしたら、それこそ奇跡だ。

Aさん―じゃあ、検疫体制の強化は不要だというんですか。

H教授―そんなことはない。残留農薬だとかポストハーベストだとか、いろんな問題が輸入食品にあるのは事実だし、食料自給率が4割を切るようになった今、加工食品も含めて検疫体制の強化は必要だ。でもねえ、この事件を直接の理由にするにはまだ早すぎると思うよ。

Aさん―でも事実関係が明確になるまでだって、言えることはあるでしょう。

H教授―うん、ひとつは最初の中毒事件が起きてから、それが公になるのに1ヶ月も時間がかかったという情報伝達の問題。
あと、もうひとつこれは前にも言ったが、食品安全委員会のだらしなさだな【3】。ホームページを見ても、関係機関の発表内容を貼り付けてあるだけで、安全委員会がどう考え、関係機関に対してどんな指示をしたのかまるでわからない【4】

Aさん―事件の真相はどうあれ、中国の受けた打撃は深刻でしょうね。
【3】 安全食品委員会
第55講(その3)「食品不祥事と食品安全委員会」
【4】 中国産冷凍ギョーザに関する安全食品委員会の情報提供
2008.01.30 中国産冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害事例の発生について[PDF]

H教授―今回の事件は別にしても、中国は成長を重視するあまり、環境や安全が軽視されてきたのは事実のようだ。だからこそ今回の事件もその文脈で報じられた。いわばツケが回ってきたともいえる。
もちろん中央政府のトップはオリンピックを控えて、環境や安全重視に舵を切り替えようとしているが、面従腹背というか、下に行けば行くほど、地方に行けば行くほど成長重視のまま、暴走している嫌いも一部にあるようだ。
格差が広がる中でデモや騒擾事件などが頻発しているという話もある。北京の大気汚染もまだまだひどいようだし、北京オリンピックで世界から人が集まった結果、顰蹙を買うようなことがなければいいけどね。
ま、いずれにしても今回の事件は、真相がどうあれ、あまりにも急激な中国の高度成長に歯止めをかける結果になるんじゃないかな。

Aさん―それとやはりこんな不安な事件が起きると、日本は食糧の自給率アップを目指し、地産地消ということをもっと考えるべきじゃないかと思ってしまいますね。

橋下サン圧勝―大阪府知事選

Aさん―ところで注目の大阪府知事選挙ですが、橋下サンが圧勝しました。

H教授―これまでの官僚上がりや旧態依然たる政治屋や学者などより、新鮮に写ったんじゃないかな。宮崎の東国原知事の例もあるしね。

Aさん―大阪府は吉本興業の本拠地で、セクハラのノックさんを知事に選んだという過去もありますしね。

H教授―橋下サンに関しては、公約を見てみると、実現不可能というか、そもそも市町村行政と都道府県行政の違いもわかってないんじゃないかと思わせるようなものが並んでいるから心配だねえ。
府民の受けをよくするため、徹底的な役人いびりをする可能性だってある。大幅な賃金カットだとかね。でも、マジメな役人の志気を阻喪させるようなことをすれば、ろくなことにならないと思うよ。

Aさん―ノックさんもそうだったんですか。

H教授―いやむしろ逆で、ノックさんの場合は、あまりにも役人の言うがままになりすぎたという批判もあった。だから、そのあたりは難しいところだけど、ま、とりあえずはお手並み拝見だろう。
できれば東京都の向こうをはって、拡大排出権取引や拡大CDM【5】にチャレンジしてほしいけどね。

Aさん―でも核武装論者が知事だなんて、イヤですねえ。おまけに「アジアでの日本人男性の買春はODAだ」なんてヒドイ発言もしているでしょう。

H教授―ま、突飛な発言をして、世間の注目さえ浴びればいいというテレビタレントの性癖が言わしめた台詞で、本心からそう思っているかどうかはわからないさ。なんせ彼は出馬直前に「2万%出馬はない」と言い切ったんだからな。
まあ、公職に付いた以上はそういうバカな発言は控えてほしいと思うけどね。
これからは一所懸命メデイアに露出したり、講演したりしてカネを稼いでもらって、それを前に言った『拡大フィフティ・フィフティのルール』【6】で、赤字に悩む府財政に貢献してくれればいいんじゃないかな。

Aさん―あ、それは厳密に言うと公職選挙法か何かの違反になるんじゃないですか。

H教授―法律とか条例は人間のつくったものだから、そんなものは変えればいいんだ。
ついでに言っておくと、あのルールの応用版として、首長や議員で副職があったり副収入のある人は歳費をどんどん切り下げ、その代わりそうしたもののない、つまり首長や議員の職に専念する人は歳費を上げるみたいな措置も考えるべきだと思うよ。
【5】 拡大排出権取引・拡大CDM
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」
第54講(その4)「都が拡大排出権取引にチャレンジ?」
【6】 拡大フィフティ・フィフティのルール
第59講(その4)「拡大フィフティ・フィフティ」

Aさん―またバカなことを…。
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