環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第62講 『ニッポン、国内排出量取引制度導入に政策転換』
第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
第58講「アフリカの心、日本の心―サンコン氏との対談」
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No. 第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
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Issued: 2008.02.07
H教授の環境行政時評(第61講 その2)
ガソリン税暫定税率延長をめぐる混迷
Aさん―ところで国会は混乱してますねえ。自民党は、例の暫定税率問題では「つなぎ法案」を出したり、引っ込めたりで醜態をさらけだしていますし、ガソリン価格が高い方が環境にいいと言っておきながら、その税収でCO2を撒き散らす道路づくりを延々とやるなどという辻褄の合わないことを言ってます。
一方の民主党も年末の税制改革大綱じゃいいことを言っていたのに【7】、今じゃ暫定税率廃止一本槍で、ガソリン代値下げしか言わないなんておかしいじゃないですか。地方は反発し、民主党議員にも造反する議員がいるし。
【7】 民主党の税制改革大綱
第60講(その3)「COP13の後に―ついに政府の方針転換か」
民主党「次の内閣」

H教授―あれは小沢サンの解散総選挙を睨んでの作戦だろうけど、馬鹿げているよね。
確かにガソリン価格は高くなったけど、国際的にみれば、EUなどよりまだ廉いんだし、ガソリン価格がある程度高い方が自動車利用を見直すきっかけになるかもしれないじゃないか。
ガソリンの値段を下げるより、その税収でもって公共交通にシフトさせたり、温暖化対策に充てるべきだと思うよ。そういう意味では民主党の年末に出した税制改革大綱は基本的に正しいと思う。年明けにガソリン値下隊なんてバカなことをし出したけどな。
問題はそんなに道路がまだ必要かどうかだ。ボクはキミも知ってるとおり鉱物オタクで、昔の中小鉱山跡を探して随分僻地にまで行くんだけど、ほとんどクルマが行き交わないようなところまで、道路は実によく整備されているよ。
そりゃあ、個人的には日本の津々浦々まで、道路網を張り巡らしてくれれば、ありがたいけど、やはり税金のムダ遣いだと思う。
人口減少時代になるというのに、今後10年間に59兆円も新たに道路に投資するなんてクニは聞いたことがないぜ。正気の沙汰とは思えないよ。
必要なのは道路じゃなくて道路工事、道路事業費じゃないかと思っちゃうな。

Aさん―出ました、持論が。

H教授―だから暫定税率を廃止するのでなく、道路特定財源自体を一般財源化し、暫定税率分は環境税の一部に組み替えるべきだと思うな。環境税でもって「環境特定財源」にするかどうかは別にして。
そして一般財源化した分は地方に手厚く配分し、「真に必要な道路」の整備を地域の判断でやりゃあいいんだ。

Aさん―でも、このまま行けば平行線のまま、強硬突破ということになるんじゃないですか。

H教授―ボクの意見とは異なるけど、暫定税率延長をとりあえず3年程度とし、その間に国土交通省の言う「真に必要な道路」が、本当にそうかどうか、地域住民も含めて徹底的に議論するという選択肢だってあるんじゃないかな。

Aさん―でもそうしたって、やっぱり地域の人は道路がほしいというんじゃないですか。

H教授―その場合、「真に必要な道路」とは、地域住民ひとりひとりが、そのために例え整備費の0.001%でも負担するとか、福祉や教育関係予算を減らしてもいいという覚悟がある場合に限るという前提にすべきだと思うよ。

Aさん―あと都市部だって、開かずの踏み切り対策だとか、安全対策、渋滞対策も必要じゃないですか。


H教授―先日テレビで見たんだけど、ロンドンじゃ、温暖化対策と渋滞対策を兼ねて、都心部に乗り入れるクルマには結構高い渋滞税をかけているんだって。
一般財源で対応できなければ、それくらいのことを考えりゃいいんだ。そうすれば開かずの踏み切り問題だって解消すると思うし、温暖化対策、安全対策、渋滞対策になるよ。

Aさん―ま、いずれにしても、今後も当分、国会からは目を離せないですね。

【参考】 
Pick Up!「ロンドン交通混雑税」
古紙配合偽装発覚
Aさん―ところで製紙会社が軒並み再生紙の古紙配合率を偽装していた事件が発覚しました。

H教授―日本型システムは半ば崩壊したと思ってたけど、談合体質というか横並び体質というか、「みんなで渡れば怖くない」体質はしっかりと健在だったよね。

Aさん―アタシャ、腹が立つんですけど、「品質確保のために製紙会社がわざわざ高いバージンパルプを用いていた」「できもしない基準を押し付けた環境省の責任が大きい」なんて、製紙会社が被害者だと言わんばかりの議論が一部にあるじゃないですか。
これでグリーン購入法の基準を下げたりしたら、偽装してきた製紙会社の焼け太りみたいになっちゃうじゃないですか。

H教授―その代わり、製紙業界は10億円だかを環境対策、つまり植林なんかのために拠出するとしているみたいだ。ぼくに言わせりゃあ、桁がひとつかふたつ違うだろうと思うけどな。

Aさん―古紙の配合率をグリーン購入法の基準までアップすることは、技術的に不可能だということは事実なんですか。

H教授―知らない。だけど本当に不可能なら、はじめからそう主張すればよかったじゃないか。
ボクは製紙の技術みたいなことは知らないけど、大体、求められている品質を確保するために、あえてコストのかかるバージンパルプを多く使ったという製紙会社の言い訳自体、ボクは怪しいんじゃないかと直感的に思っているよ。

Aさん―え? 本当ですか。

H教授―だから真相は知らないってば。
だけど、古紙を多く混ぜれば、品質は下がるのはある意味当たり前なんだ。繊維は短くなっているし、インクを落としたり、挟雑物を除去したりしなきゃいけない。
それでも品質を維持しようとすれば、いろんな薬剤を用いたり、エネルギーを投入したりしなければいけない。これが熱力学の第二法則、増加するエントロピーを減少させるために必要なことだ。
つまり品質を維持しつつ、古紙を多く配合させることは、バージンパルプを用いるよりも、余計にコストがかかるんじゃなかったかな。

Aさん―ウッソー。

H教授―だから、本当のところは知らないよ。でも、そう考えた方がわかりやすい。
質のいい古紙は中国に流れて、なかなか入手しにくくなっているなんていう話もあるしね。
でもねえ、中西先生のホームページによると、製紙会社は大昔は「100%バージンパルプだ」と言いながら、実は安価に入手できる古紙を配合させていたらしいんだ。
で、今じゃ一種の環境ブームで、その逆。だけど、製紙会社の嘘つき体質は一向に変わっていないということだ。CSRが聞いて呆れるし、ISO14001の認証を取得してたって、これじゃあねえ。

Aさん―でも、現実的な解決策は製紙業界にペナルティを科すとともに、古紙配合率の基準は下げずに、むしろ求められる品質、つまり白色度だとかを下げることの方を容認するってことですか。

H教授―そこは難しい。あまり好きなコトバじゃないが、「環境にやさしい」ってことの指標が古紙配合率でいいかどうかだ。

Aさん―え? だって古紙をリサイクルした方が資源の節約になるし、よけいな森林伐採を減らすことになりますよね。古紙配合率が高い方がいいに決まっているじゃないですか。
H教授―そんなことはないよ。古紙をリサイクルする方がCO2排出量は増えるという試算もある。もっともこれには反論もあって、どちらが正しいかボクには判断しかねるけどね。詳しくは、安井先生のホームページをみてほしい(→ http://www.yasuienv.net/R100PaperLCA.htm )。
ただ、古紙をリサイクルすると言うことは、薬剤を使用したり、エネルギーを投入したりするから、別の意味での環境負荷は増えるということは十分にあり得ると思う。
まあ、“もったいない”というのはその通りだけど、あまりにも質の悪い古紙はサーマルリサイクル、つまり燃やしてしまうか、思いっきりカスケードしたリサイクルをした方がいいかも知れない。
それにバージンパルプったって、利用されていない間伐材だとか、端材、あるいは家屋の廃材だとかだったら別にいいんじゃないかな。現時点ではそれらを利用する方がコストがかかるだろうけど。

Aさん―つまりバージンパルプでも、天然林を伐採したチップを用いなければいいということですか。

H教授―それだけじゃないさ。循環型林業をやっている人工林だって、主伐材はパルプになんかせずに、建材などに用いるべきだと思うよ。

Aさん―天然林でなく、かつ人工林の主伐材をゼロにするという指標を考えればいいというご意見ですね。その場合、その証明を行う国際的な認証システムが必要になりますね。

H教授―そういうことだな。木材についてはある種の認証制度がすでにあるから、それとの連携・活用などを考えればいい。
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