環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第60講 『京都議定書第一約束期間初年』
第59講 『翼よ、あれがバリの灯だ! 付:拡大フィフティ・フィフティ』
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No. 第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
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Issued: 2008.02.07
H教授の環境行政時評(第61講 その4)
レアメタルのリサイクルと国内資源の確保
H教授―はは、もうとっくに飽きられているんじゃないかな。
でもキミにまでそう言われるのはちょっとシャクだなあ。じゃあ、レアメタル、レアアース、貴金属の話でもしようか。

Aさん―なんです、それ。

H教授―レアメタルは希少金属のことで、鉄や銅、鉛、亜鉛、アルミなどに較べると量が少ないが産業上欠かせない金属をいう。タングステンやビスマス、アンチモン、インジウムなどいっぱいある。
レアアースは周期律表の希土類、つまりごく微量にしかない稀な一群の元素類のことで、スカンジウム、イットリウム、ネオジムだとかタンタルだとか、こちらもいろんなものがある。
これらは産業用に重要なもので、いわば人体におけるビタミンのようなものといっていいかもしれない。ちなみに日本でスカンジウムを主成分とする鉱物を最初に発見したのはボクなんだぜ。

Aさん―(無視)脱線はいいですから、それで?

H教授―へいへい。レアメタルについては日本でもタングステンやモリブデンの鉱山もあったし、鉛・亜鉛の鉱山からの副産物としてもいろいろなものが得られたが、今じゃあすべて輸入に頼っている。
一方、貴金属というと金、銀、白金類なんかを指すんだけど、これも装飾用としてより、本当は産業用として欠かせないものなんだ。これらも電子電気機器などに微量用いられているんだ。
こうしたレアメタルなどは、アジアを中心にした需要の拡大と、原産国の資源囲い込みのせいで、この5年間でなんと国際価格が4から8倍にもなり、これからも急騰していきそうなんだ。
もう商社なんかは買い付けに必死らしい。

Aさん―うーん、そりゃあそうかも知れませんが、この時評には直接関係ないんじゃないですか。

H教授―ばか、「資源」と「エネルギー」は「環境」と表裏一体の関係にあるんだ。三位一体といっていいかも知れない。
で、それはともかくとして、日本には電子電気機器類、例えばケータイ(携帯電話機)やパソコンの中に、トータルでは膨大な量が蓄積されている。例えばインジウムは世界の埋蔵量の6割くらいが国内で蓄積されているそうだ。これを称して最近では「都市鉱山」などといわれることもある。

Aさん―わかった。それをリサイクルしなきゃいけないって話ですね。

H教授―うん、今までのリサイクルは資源問題というよりは、多くの場合、廃棄物最終処分場が逼迫しているから、ごみ減量のために行うというのが本音だった。
だがレアメタルなどは明らかにこうしたものと違い、資源確保のためのリサイクルの必要性に迫られてきたんだ。
機種交換後のケータイなんかを回収しようという話が今いろいろあって、モデル事業などが展開されている。
そのため経済産業省では資源有効利用促進法の改正を検討しているみたいなんだけど、ネックがいろいろある。
事業所からの回収はなんとかなっても、一般消費者からの回収は難しいし、コスト的にも割が合わない。そうしたものは廃棄物処理法で、市町村が埋立処理するのが一般的だ。市町村単位でこうしたレアメタルなどの回収はとてもできないしね。

Aさん―じゃあ、どうすればいいと?

H教授―それで悩んでいるらしいんだけど、そんなの簡単な話で、家電リサイクル法のスキーム、つまり逆流通ルートでの回収義務付けをやればいいんじゃないかと思うんだ。だけど、経済産業省としては電子電気機器メーカーや販売店の反対を恐れているし、環境省に関与されたくないんだろうなあ。でも、そんなくだらない省益にとらわれてる場合じゃない。資源有効利用促進法と廃棄物処理法と家電リ法の関係は複雑怪奇で、正直なところボクにもよくわからないから抜本改正した方がいいと思うしね。
ただ、もっと大切なことがある。

Aさん―なんですか。

H教授―第一点は「資源」と「エネルギー」と「環境」。これらは市場原理にのみ任せるわけにはいかないということだ。
かつて日本は「社会主義国だ」などと揶揄されたこともあったけど、今じゃあドイツなんかの方がはるかに強権的だ。でなければ自然エネルギー固定価格買取制度などできるわけがないし、またある程度強権的にやらなければ、それこそ人類は持続可能な社会はできないだろう。

Aさん―ご荒説として拝聴しておきましょう。第二点は?

H教授―その延長線上にあって、こうしたレアメタルを含めた国内の地下資源については、将来のことを考えて、ある程度私権を制限できるようにしておいて、いつでも再開発できるようにしておいた方がいい。
実は日本にはいろんな金属鉱山が昔は何千何万もあったんだ。レアメタルだって産出しなかったわけじゃない。それが軒並み閉山したのは、自由化により海外とのコスト競争に敗れたことと、鉱害問題だ。決して取り尽くしたせいじゃないし、今の技術なら鉱害は完璧に抑えられるはずだ。
日本の鉱業法というのは、相当ひどい法律で、今でも日本の鉱区面積は日本の面積よりはるかに広い。鉱種別に重複して設定されるからね。
にもかかわらず、日本の金属鉱山は鹿児島の金以外は壊滅状態。つまり今じゃ鉱区は単なる利権の道具になりさがっている。

Aさん―(話の展開についていけない)へえ、で、それで?

H教授―だというのに、今ではその所在地でさえ、かつての大鉱山以外はまったくわからない有様だ。そのくせ広い面積の鉱区だけは設定して放任というひどい状態なんだぜ。これをどうすればいいかを真剣に考える必要があるだろう。少なくとも、関係者が生存しているうちにそうした過去の鉱山の所在地を、将来に備えて国家として完全に把握し、公表すべきだと思う。

Aさん―(ぱっと閃く)わかった。わかりました。
要は所在のわからなくなった旧坑や廃坑の位置を、国家の責任で明示しろということですね。つまりセンセイの鉱物趣味の手助けを、税金でやれというわけだ。
H教授―…また、そんな身も蓋もないことを…(照れ隠しの笑い)。

Aさん―よくもそんな恥知らずなことを、EICネットのような公的なホームページに書けますね。
もう知らない。センセイのバカ!(憤然と席を立つ)

H教授―…それでも必要だと思うんだけどなあ(悄然と立ち尽くす)。

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(平成20年2月3日執筆、同年2月6日編集了)

註:本講の見解は環境省およびEICの見解とはまったく関係ありません。また、本講で用いた情報は朝日新聞と「エネルギーと環境」(週刊)に多くを負っています。
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