環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第65講 「08年5月、神戸のG8環境大臣会合をめぐって」
第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
第63講 「風雲急を告げる道路特定財源問題と温暖化問題」
第62講 『ニッポン、国内排出量取引制度導入に政策転換』
第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
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No. 第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
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Issued: 2008.05.15
H教授の環境行政時評(第64講 その1)
福田内閣低空飛行

Aさん―センセイ、ガソリン代が下がったかと思ったら、5月になった瞬間、GWのど真ん中だというのに、ぽーんと上がっちゃいました。一体、政府は何をやってるんでしょうね。
後期高齢者医療保険の問題でも世間から総スカンを食らっちゃってるでしょう。
だから、先月末の山口補選でも自民党は惨敗を喫しちゃったし、世論調査でも福田内閣の支持率は2割を切りそうな低空飛行。このままじゃ、福田内閣は洞爺湖サミットまでもたないんじゃないですか。

H教授―うーん、忍の一字で乗り越えようとするんじゃないかな。第一、福田サンに代わるタマがないだろう。
ボクは、安倍サンやコイズミさんより、よくやってると思うし、福田サンに対して好感を持ってるだけに、この低人気ぶりはちょっと残念だなあ。

Aさん―よく、やってる??

H教授―そうだよ。そもそも後期高齢者医療保険の問題は、福田内閣になって決めたわけじゃない。
道路特定財源の一般財源化問題については、コイズミさんも安部さんも何もできなかったというのに、与野党のねじれを利用して、一般財源化に大きく歩を進めたじゃないか。
それに気候変動問題では、国内排出量取引制度導入の方向に舵を切ったし【1】、国別総量目標についても洞爺湖サミットまでに決めると明言した【2】。セクター別アプローチについてはEU、米国それに中国まで、一定の評価を得られるようになったのも、福田サンの功績だと思うよ。
もっともセクター別アプローチはいろんな側面があって、自国に都合のいい側面だけをみて評価したというのが真相だろうし、前講でも言ったようにセクター別アプローチだけじゃダメだ、というのがボクの評価だけどね【3】

Aさん―でも、道路特定財源については、この時評がアップされる頃には特例法も再可決して、法律上は10年間の道路整備計画と道路特定財源制度の維持が決まっちゃうんでしょう【4】
それでもって来年度から道路整備計画を見直し、一般財源化するなんて、どう考えてもヘンじゃないですか。
【1】 国内排出量取引制度
第62講(その2)「国内排出量取引制度の検討開始へ」
【2】 国別総量目標の設定について
第61講(その3)「ダボス会議は政策転換の表明か?」
【3】 セクター別アプローチ
第63講(その2)「温暖化対策の国内動向」
鴨下大臣記者会見録(平成20年4月8日(火))
「2013年以降の気候変動枠組みに関する非公式対話:中国」の結果
気候変動枠組条約第13回締約国会議、京都議定書第3回締約国会合
【4】 道路特定財源
道路IR・財源(国土交通省道路局)
道路特定財源の暫定税率の撤廃(自民党)
道路特定財源制度改革(民主党)

H教授―うん、だからホントにそんなことできるのかって疑心暗鬼になる人もいるだろうし、道路特定財源制度の維持に巻き返しを図る連中もたくさんいると思うよ。
だけど福田サン自身の一般財源化という方針は本気だと思うよ。だからもう一歩進めて、環境税創設を言ってくれればと思うんだけどねえ。

Aさん―そんな無茶な。これだけ不人気なのに増税なんて言い出せるわけないじゃないですか。

H教授―減税部分を振り替えることだって考えられるし、既存税を模様替えするだけで増税しなくても財源をつくることは可能だ。要はガラポンすればいいんだ。
暫定税率の部分は目的税として環境税というか温暖化対策税の一部にする。あと自動車・道路関連以外の化石燃料にも課税すればいい。とはいっても化石燃料には、エネルギー関連の税がかかっているから、これの大半を環境税に切り替えるだけで済ませるという考え方もできる。

Aさん―じゃあ、「減税部分」っていうのは?

H教授―今だってグリーン税制で、ある程度は自動車の排気量に応じた課税がされているけど、それをもっと徹底してやるんだ。
だいたい、普段は一人でしか乗らないというのに、2,500ccだとか3,000ccだとかいった、でっかくて立派なクルマに乗っている人って、結構いるよなあ。何を考えているんだろうって思うよ。

Aさん―センセイのクルマはあまりにもオンボロすぎます。それにセンセイのクルマが小っちゃいのは、小回りが利いて鉱物採集で山に行くのに便利だからでしょう。

H教授―(無視して)例えば、自転車は、消費税も非課税。軽自動車やコンパクトカーは現状程度の課税でよいけど、大型の乗用車は大幅に税金を重くして、都心へのクルマの乗り入れにも課税する。一方で、公共交通機関用の燃料や電気料金は非課税にする──なんて具合に、アイデアはいくらでもあると思うよ。
どうせ不人気なんだから、もっと思い切った政策提言を国の内外にすればいいんだ。

Aさん―うーん、また暴論を。
…読者のみなさん、センセイは経済学オンチですから、マジに受け取らないでくださいね。

H教授―うるさい。ま、いずれにしても今後の環境問題の焦点は洞爺湖サミットを控えて、温暖化対策になると思うけど、道路特定財源の一般財源化問題や、あと国際的に問題になっている食料危機の環境問題への影響についても目を離さないことだ。
 
道路特定財源の一般財源化で変わること変わらないこと
Aさん―ところで、道路特定財源を一般財源化したところで、現状から大きく変わると思いますか?
一般財源化した税収を、国税じゃなくて地方税にして、使途を自治体に任せない限り、財務省の査定で大半が従来どおりの道路整備になる可能性だってあるんじゃないですか。

H教授―おっ、いいところを突くねえ。このままいけばキミの言う通りになってしまい、財務省の力が増すばかりだろう。
ただねえ、今だって一部は地方税になっているけど、全額地方税化は不可能だと思うよ。そんなことしちゃえば、都市と地方の格差は広がるばかりだ。だから国税中心にした上で、一定の計算式で地方に手厚く配分できるように、交付税として再配分した方がいいと思うな。
ただ、地方が本当にそれを望んでいるかどうかだ。

Aさん―そんなもの望んでいるに決まっているじゃないですか。現在の特定財源制度だと国土交通省、一般財源化しちゃうと財務省が一方的に決めちゃうんでしょう。

H教授―そうとも言えないんじゃないかあ。
現在でも、府県別の割り当ての予算はおおよそ決まっている。国土交通省だって、補助金のみならず直轄施行分も含めて、府県の要望の優先順位を勘案して割り振っていると思うよ。
府県には市町村から要望がいっぱいあがってくる。その中でどう考えてもムリな要望だと思っても、市町村に対して「ムリだ」とは言わずに、優先順位こそ低くするものの、一応は国土交通省に要望するんじゃないかな。そして、「国土交通省がウンと言わなかったから」ってあきらめさせる。つまり、国土交通省を悪者にしちゃうことが結構あるんじゃないかって思うな。
同じように、市町村だって市町村内のいろんな地域からのムリな陳情に対して、「ムリだ」とはっきり言わずに、優先順位を低くして県に要望を出す。そして、「県(あるいは国土交通省)がカネをつけてくれなかった」って言ってあきらめさせる。つまり、県や国を悪者にしている面があると思うよ。
市町村は市町村なりに、また都道府県は都道府県なりに、内々の優先順位を決めていて、市町村は県に、県は国土交通省に要望していると思うけど、その優先順位は公表しないのが普通だからなあ。
真の地方分権とは、国を悪者にしたりせず、自らが責任を負うということなんだ。これは結構キツイものがあると思うよ。

Aさん―じゃあ、道路と福祉と教育と、といった予算の配分なんて、どうしているんですか。

H教授―国の場合、各省が予算要求を出して、財務省が査定する。県の方は各課が要求を出して財政課が一次査定を行う。
とはいっても、そもそも要求段階でシーリングがかかるから、青天井で予算要求ができるわけじゃなく、基本的にはドラスティックな割り振りの変更はない。ただ自治体の場合は首長が覚悟を決めれば、ドラスティックな変更も可能だ。
あと、国の場合も自治体の場合も、査定案に対してどちらも復活折衝がある。ただ──今は知らないけど──、ボクの現役のころはそれも99.9%は筋書きの決まった猿芝居だった。

Aさん―じゃあ、国も県も予算案の決定の仕方はまったく同じなんですか。

H教授―違う点といえば、国の方は各省が要求案を出した時点で世間にオープンにするけど、県の方はそれもオープンにしないのが一般的だ。だからボクが県にいたときには、県会の委員会やマスコミに、「要求したけど財政課が認めてくれなかった」という台詞を言わせてくれなかったのが口惜しかった。
国の場合は各省と財務省、県の場合は各課と財政課の折衝や査定過程をオープンにしたら、随分変わると思うよ。鳥取県などではすでにそういう取り組みを始めているらしい【5】
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【5】 鳥取県「予算編成過程の公開」について
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?
menuid=27182
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