環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第65講 「08年5月、神戸のG8環境大臣会合をめぐって」
第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
第63講 「風雲急を告げる道路特定財源問題と温暖化問題」
第62講 『ニッポン、国内排出量取引制度導入に政策転換』
第61講 『日本列島、1月の環境狂騒曲』
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No. 第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
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Issued: 2008.05.15
H教授の環境行政時評(第64講 その3)
エコツー法と特定自然観光資源
Aさん―この生物多様性基本法とも関係あるかもしれませんが、エコツーリズム推進法 …ええい、まだるっこしい、エコツー法がこの4月から施行されたそうですね。

H教授―うん、第41講(その4)で取り上げたことがあったけど、結局時間切れで一年延び、昨年の6月に議員立法として成立した【12】。エコツー法とセットだろうと言った観光立国推進基本法の方は一足早く、一昨年暮れに成立したそうだ。

Aさん―エコツー法案のそのときの内容と、最終的に成立した法案の内容はだいぶ変わったんですか。

H教授―いや、ほとんど同じだよ。その後、施行規則が今年に入ってからパブコメを経て定められたので、細部がだいぶはっきりしてきた。
そして今年に入って、エコツー法で定められるとされた「政府の基本方針」(案)がパブコメに出され、つい先日締め切られた。

Aさん―じゃ、市町村中心で関係者を集めた協議会で策定する「エコツー全体構想」を、環境省や国土交通省などの主務大臣が認定すれば、それに則って市町村が条例により「特定自然観光資源」を指定でき、いろんな規制ができるんですね。

H教授―土地所有者の同意が得られればね。中でも市町村は特定自然観光資源について必要があれば立入り制限ができることが目玉といえば目玉だ。
立入り制限することにより、自然環境を保全するだけでなく、認定されたガイド付きツアーに限って立入りを認めることにより、エコツーの推進を図ろうとしているんだろう。

Aさん―特定自然観光資源の規制と、自然公園など既存の規制との関係はどうなっているんですか。

H教授―うーん、そこのところは釈然としないんだけど、二重規制は避けるということで、自然公園の特別保護地区原生自然環境保全地域などの厳しい規制がなされているところには、原則として指定できない。
ただ、こっからがややこしいんだけど、ただし書きもあって例外を認めている。これについては後で話そう。

Aさん―じゃあ、自然公園の特別地域自然環境保全地域内での指定はOKなんですか。
それよりは厳しい規制を特定自然観光資源ではやるんですね。

H教授―自然公園の特別地域や、自然環境保全地域の野生動植物保護地区では指定動植物への規制を行っているので、同じ規制はできないが、それ以外はOKということのようだ。
ただ、自然公園や自然環境保全地域内の特定自然観光資源については、厳しい規制というよりは、自然公園法や自然環境保全法での規制以外の規制、つまり横出し規制のようなイメージじゃないかな。
エコツー法では特定自然観光資源での規制自体の内容が漠然としていて、最終的には条例で決めるみたいだ。
【12】 エコツーリズム推進法と観光立国推進基本法
第41講(その4)「エコツーリズム推進法案」
第41講(その3)「回想―総理府審議室の日々」
エコツーリズム推進法
施行規則に対するパブコメの実施結果
政府の基本方針(案)パブコメ
エコツーリズム推進に関する基本方針検討会
観光立国推進基本法

Aさん―はあ?

H教授―つまり規制の具体的内容は条例で決められるんだ。
また、必要な場合には立入りについても規制できることになっていて、これがいわば目玉だ。
ところが、自然公園の特別保護地区や原生自然環境保全地域は、落葉落枝の採取のような細かい行為まで規制、つまり事実上の禁止としているんだけど、地区内や地域内への立入りまで規制していない。それを規制しているのは、自然公園の場合は利用調整地区、原生自然環境保全地域の場合は立入制限地区だけなんだ【13】

Aさん―はあ、だからただし書きで例外的に自然公園の特別保護地区や原生自然環境保全地域でも「特定自然観光資源」の指定をして、立入り制限ありうべしというわけなんですね。

H教授―自然公園の利用調整地区と原生自然環境保全地域の立入制限地区以外はね。

Aさん―なんだかよくわからないなあ。
【13】 利用調整地区制度について
第54講(その2)「国立公園ヌーベルバーグ」
西大台利用調整地区ガイド(環境省近畿地方環境事務所)

H教授―うん、ボクも役人をやめて13年だ。法律を読まなくなって久しいから自信はないけど、ま、そういうことじゃないかな。

Aさん―でも、自然保護の観点から立入り制限が必要な箇所があって、それが自然公園内にあるんなら利用調整地区に、原生自然環境保全地域内にあるんなら立入制限地区に、どんどん指定しちゃって、自然公園などの保護規制がなされていない地域に限ってエコツー法の特定自然観光資源を指定するようにすれば、もっとわかりやすくなるんじゃないですか。

H教授―そりゃあそうなんだけど、ただ自然公園内で利用調整地区を指定するのは容易ではないという現実があるんだ。
現に、利用調整地区は吉野熊野国立公園の西大台ケ原しか指定できていない。
民有地なら利用調整地区の指定になかなか地権者が同意しないだろうし、国有林の場合だって、国有林当局が環境省の指定には、拒否反応を示すことが多いんだろう。

Aさん―そんなの特定自然観光資源に指定しようとするときだって同じでしょう。

H教授―いや、環境省が指定しようとするなら地権者は抵抗するけど、地元市町村の言うことなら同意するってことも、可能性としてはあるかもしれない。
国有林当局だって、地元とはうまくやりたいから、市町村が言い出せばうんと言うことだってあるかもしれない。
それにね、現実問題として、利用調整地区に指定した場合、環境省の地方環境事務所レンジャー事務所単独で、立入り制限のコントロールができるかっていう、マンパワーの問題だってある。

Aさん―あ、そうか。数人のメンバーじゃあね。かといってバイトを大量に雇えるだけのカネがあるかってことですよね。

H教授―まあ、逆に言えば、自然公園の管理に市町村を積極的にかかわらせるチャンスになるかもしれない。その場合、国立公園内であれば地方環境事務所やレンジャーが協議会の中心になり、エコツー全体構想の策定に寄与することが必要だけどね。

Aさん―そううまくいくかしら。

H教授―うん、心配なのは、エコツー全体構想をとりまとめるのは、どこへいっても東京のコンサルだったりして、全国で金太郎飴のような同じ顔をした全体構想ができてしまうことだね。かつてのリゾート法の時がそうだった。そしてそれを防ぐ手立てはなさそうなんだ。

Aさん―ふうん、他に問題点はありますか。

H教授―パブコメの形骸化だ。

Aさん―は?

H教授―Sさんのブログで知ったんだけど、施行規則に対するパブコメはたったの二通だけで、うち一通がSさんだったそうだ。
しかも施行規則案にはパブコメ募集があったけど、おおもとのエコツー法案そのものには、議員立法だからという理由でパブコメ募集がなかったそうだ。

Aさん―別にエコツー法に限らず、動物愛護法のときもそうだったですねえ。
パブコメ自体のPR不足ですか。だったら、公共放送でパブコメ募集の時間を設けて、人気アイドルがその趣旨説明をわかりやすくするとか、すればいいんじゃないですか。

H教授―PR不足は確かだ。ボクだって知らなかったんだから。
でもそれだけじゃあない。パブコメをフィードバックする仕組みがないことが問題なんだ。だったらパブコメなんてするだけ時間のムダってことじゃないか。
結局のところは、施政者がパブコメを真剣に考えていないということじゃないかな。
いろんな法案は、たいがい、そのもとになる審議会などの答申があり、答申案ができた時点でパブコメにかけられることが多い。だけど、そうじゃなく、答申案についていろいろ議論している段階でパブコメを常時求め、それを審議に組み込むようなことが必要じゃないかな。

Aさん―あ、センセイ、まったく同じことを前に言ってましたよ【14】

H教授―え? そうだっけ、覚えてないな。

Aさん―やだ、やだ。老化現象進行中。
【14】 パブコメのフィードバック──案パブコメから戦略的パブコメへ
第46講(その4)「再び動物愛護管理法」
H教授―う、うるさい。
エコツーは地域の活性化を図るというんだけど、現実にはエコツー業者だけが儲けて、それを地域に還元しないという批判があるそうだ。
税収という形で間接的には貢献しているんだろうけど、エコツーの推進がかえって地域コミュニティを分断させる恐れがなきにしもあらずだ。
だから真っ向から、エコツー法そのものに反対する人もいる【15】

Aさん―ま、地元にとってと、旅行者にとってと、事業者にとってとで、エコツーの持つ意味はまるっきり違うでしょうからね。センセイ自身は旅行者として「エコツー」をどう思われますか。
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【15】 エコツー法への異論
JanJan News >自己矛盾に気付かぬ環境省「エコツーリズム推進法」
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