環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
第66講 「福田ビジョンを超えて」
第65講 「08年5月、神戸のG8環境大臣会合をめぐって」
第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
第63講 「風雲急を告げる道路特定財源問題と温暖化問題」
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No. 第66講 「福田ビジョンを超えて」
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Issued: 2008.07.03
H教授の環境行政時評 (第66講 その1)

Aさん―6月もいろんな事件やニュースがいっぱいでしたね。
いろんな、そして結構重要そうな国際会議がしょっちゅう行われていたような気がします。国際政治では、米国大統領選の民主党予備選をオバマさんが制しましたし、お隣の韓国では、米国産牛肉輸入再開問題でソウルは連日のデモで沸きかえり、イ・ミョンバク大統領の支持率は10%を切る始末。そして米国が日本の意向を無視して北朝鮮のテロ指定国家解除に踏み切りました。
国内政治では、国会が相変わらずのてんやわんや。沖縄県議選で自公が敗退しましたし、不祥事では居酒屋タクシー事件に、うなぎや飛騨肉の偽装事件。
そして悲しい出来事としては、岩手・宮城内陸地震や秋葉原通り魔殺人事件で、何人もの犠牲者が出ました。

H教授―うん、犠牲者の方々には謹んでご冥福をお祈りしよう。
福田ビジョンの可能性と限界
H教授―さて、環境行政時評だから、話題を絞らなきゃしかたがない。やはり福田ビジョンからだろう【1】

Aさん―今月(6月)9日に発表されましたね。次いで自民党の温暖化対策推進本部もそれに合わせて、温暖化対策の抜本的な強化を目指した強化方策を中間報告として集約【2】、27日に閣議決定した「骨太方針2008」でも低炭素社会実現を目指すとしています【3】
いつかセンセイもおっしゃってましたけど、政策は急展開、どうやら“平時”じゃなくなったみたいですね【4】

H教授―うん、70年公害国会前後の時代の再来がはじまったのかもしれない。
もちろん、その中心軸は温暖化対策だけど、国際的にも食糧危機や水資源、原油価格高騰の問題がクローズアップされてきて、しかもそれらがお互いに絡み合っている。
これから大きく社会のあり方が変わっていくような気がしないでもない。
ま、ひとつひとつ見ていこう。

Aさん―福田ビジョンについてはどうですか。

H教授―長期目標としては「クールアース構想」をG8と主要排出国──つまり中国、インド、ブラジル、韓国などだね──と共有することを目指すとしていて、2050年にはわが国は現在より60〜80%削減して、世界に誇れるような低炭素社会を実現するとしている。
このこと自体はもちろん評価されるが、中期目標になると評価が分かれ、NGOなどからは後ろ向きの国に与える化石賞の第2位とされた【5】

Aさん―発表された頃はちょうど温暖化関連の国際会議が開かれていたんですね。

H教授―うん、気候変動枠組条約の第2回作業部会がドイツのボンで開催されていて、世界のNGOなどが集まっていたんだ。
【1】 福田ビジョン
福田内閣総理大臣スピーチ
「低炭素社会・日本」をめざして(日本記者クラブにて、平成20年6月9日)
地球温暖化問題に関する懇談会提言 〜「低炭素社会・日本」をめざして〜(平成20年6月16日)
【2】 自民党の温暖化対策推進本部中間報告
地球温暖化対策推進本部中間報告「最先端の低炭素社会構築に向けて ―来たるべき世代と地球のために―」
【3】 骨太方針2008
経済財政諮問会議(平成20年第16回) 「基本方針2008」に向けて
【4】 “平時の指摘”への対応困難
第54講(その1)「温泉の爆発事故」
【5】 日本の中期目標に対するNGOの評価
第60講(その2)「検証:COP13」

Aさん―中期目標が後ろ向きってわけですか。

H教授―はっきりと中期目標として明示したわけじゃない。それは来年末までに発表するとしたんだけど、「EUが対90年比で2020年20%削減を言っている」「これは現状から14%削減で、日本でもこの程度の削減は可能だ」というようなニュアンスの発言だったらしい。

Aさん―それがNGOなどの逆鱗に触れたんですね。対90年比だと、4%の削減しか意味しないじゃないかというわけですね。

H教授―うん、だけど現時点では国内の意見が集約されていないんだから、ああ言うしかなかったような気がしないでもない。

Aさん―政策面ではどうだったんですか。

H教授化石エネルギー依存からの脱却を正面から掲げたところは評価できると思うよ。気候変動対策の途上国支援に最大12億ドルを拠出し、「環境エネルギー国際協力パートナーシップ」を提唱している。
一方、国内対策じゃあ、太陽光発電世界一の座の奪還を謳いあげるなど、今まで遅れをとってきた再生可能エネルギーにも力を入れるとしている。
原子力も含めた再生可能エネルギー比を50%以上に引き上げるというんだけど、原子力については、ボクは再三言っているようにネガティブにならざるを得ない【6】

Aさん―つい先日も岩手・宮城内陸地震があったように、日本は地震と火山の巣ですものねえ。

H教授―そしてこの秋までに国内排出量取引の試行を開始するとしている。この点はあとで触れよう。
それに、秋の税制改革では、これまでずうっと先送りにされてきた環境税導入を匂わせている。
それだけでなく、税制グリーン化をもっと推し進めるとしているし、製品やサービスなどのCO2排出の「見える化」にも前向きで、来年度から試行的な導入実験を開始するそうだ。

Aさん―「見える化」?

H教授―うん、いろんな製品やサービスにCO2排出量を明示するってわけだ。フードマイレージなんかもそのひとつだろうけど、CO2排出の「見える化」によって、消費者が的確な選択を行うための情報を提供するってことだ。カーボン・フットプリントと言っていいだろう。

Aさん─カーボン・フットプリント?

H教授─うん。環境容量の指標として有名なエコロジカル・フットプリント──これは第三次環境基本計画などでも指標の一つとして設定されているが──に対して、特に人間活動が地球温暖化や炭素循環に与える影響に着目したカーボン・フットプリントという指標が注目されているんだ。
それはともかく、福田サンは別のところでは消費税増税にも言及しているけど、この「見える化」によって、税率を変えるなどすれば面白いと思うけどな。
いずれにしても歴代のソーリの中では一番意欲的で、環境省や経産省からのホットラインがあるんじゃないかと思うよ。
【6】 原子力推進に対するキョージュの見解
第18講『キョージュ、無謀にも畑違いの原発を論ず』
第45講(その3)「原発とエネルギー」

Aさん―その割りに人気がないですね。

H教授―人気がないからこそ、人気取りにあたふたすることなく、意欲的になれるとも言えるんじゃないかな。

Aさん―センセイ、福田サンには点が甘いですね。同じことを安倍サンやコイズミさんが言い出したとしたら、もっと点が辛いんじゃないですか。
ま、それはともかくとして、同じ日に連動して自民党の推進本部の中間報告が出されたんですね。

H教授―うん、福田ビジョンの側面支援と言っていいだろう。
低炭素社会形成推進基本法の議員立法での制定を前面に打ち出し、今後の政策展開の方向性を包括的に示している。国内排出量取引は今秋からの試行的実施を踏まえて、2010年から準備的運用を始めるとしている。
目新しいところでは、カーボンオフセット推進法、電化製品のCO2表示義務化などがある。また、「2008年ピークアウト宣言」を出し、2009年以降は着実に削減を進めることを内外に示し、それから以降10年間の特別行動期間を設定し、政策の総動員体制をとるとしている。
その言やよしといったところかな。

Aさんサマータイム制度の導入も打ち出しているんでしょう。

H教授―(渋い顔で)うん、これには同意できないけどね。
サービス残業を増やし、サラリーマンの疲労度を増すだけのような気がする。
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