環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第68講 「夏の夜の夢―キョージュの2030年論」
第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
第66講 「福田ビジョンを超えて」
第65講 「08年5月、神戸のG8環境大臣会合をめぐって」
第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
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No. 第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
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Issued: 2008.07.31
H教授の環境行政時評 (第67講 その2)
洞爺湖サミットを振り返る

Aさん―ハイハイ。さて今月の話題はなんですか。何といってもG8洞爺湖サミットをどう評価するかでしょう。

H教授―その前に基本的なおさらいをしておこう。そもそもG8とはどんなものなんだい。

Aさん―年1回開かれる、米英仏独日加伊露の8カ国の首脳会談、つまりサミットでしょう。

H教授―うん、サミットとは75年に始まった西側諸国の経済協調のための首脳会議のことだ。
最初はロシア、カナダを除く6国で、翌年カナダが加わった。そして経済問題だけでなく環境問題なども話し合われるようになった。91年に東側陣営が自己崩壊してソ連が解体。98年にはロシアが加わって現在のG8体制になった。
ところでG7というのを知ってるか。

Aさん―ロシアが加わる前のサミットのことじゃないんですか。

H教授―そういう使い方がされたこともないわけではない。
ただ、今でも“G7”は年3回開催されている。
これはG8からロシアを除いた主要七カ国の蔵相・中央銀行総裁会議のことで、国際金融問題だとか通貨問題がテーマだ。
混乱のもとだから、サミットのことをG8というのはやめた方がいい。
それに今回のサミットで明瞭になったのは、もはや8カ国だけではどうにもならなくなったということだろう。
来年のサミットはイタリアで開かれるが、8カ国ではなく、13カ国とか16カ国くらいにしなければいけないんじゃないかな。G8というのはいずれ死語になると思うよ。
事実、日本は反対しているが、サミット参加国を増やすべきだという意見がサミット首脳からも相次いでいる。

Aさん―そういえば、洞爺湖サミットでも平行して多くの国が参加した会議がありましたね。

H教授―うん、第一に言えることは、世界主要8カ国、G8だけで世界の今後を決めるのはますます不可能になったということだろう。
今回の洞爺湖サミットを見てみよう。サミットの首脳宣言では、「2050 GHG半減」ということを持って回った言い方ながら入れられたが、同時に開催された主要排出国会議(MEM)首脳宣言ではついに“50%”という文言は出てこなかった。

Aさん―MEMってなんでしたっけ。

H教授―MEMはMajor Economies Meetingの略で、日本では主要排出国会議と訳しているけど、直訳すると主要経済国会議になる。もともとは英名でも主要排出国会議の名称にしようと思ったらしいが、途上国の反対で、主要経済国会議になったとのことだ。
米国主導で昨年からはじまった、G8+インド、中国、メキシコ、南アフリカ、ブラジルの新興5カ国+豪州、韓国、インドネシアの16カ国よりなる会議のことだ。
米国の思い通りにはならず、独自に前日開催された新興五カ国の共同声明では、先進国は2050年までに80〜95%カットすべきだと言い放った。
今回の洞爺湖サミットで明らかになったことは、サミットの首脳宣言でも食糧危機や原油価格高騰に対してこれという解決策は提示されなかったことだ。世界はますます多極化していて、8カ国のサミットという枠組自体の有効性が問われるようになっている。
これからは温暖化問題でも、サミットよりも、このMEMの方が主役になるんじゃないかな。米国の意図とは異なる効果をもたらしたといっていいだろう。

Aさん―でもサミットって一回だけかと思ったら、環境大臣会合とか財務大臣会合とか、エネルギー担当相会議だとか、いろんな会議をやるんですね。なんだかお祭りみたい。

H教授―うん、そのお祭りにかける費用も莫大なものだし、それに伴う環境負荷もバカにできない。それに見合うだけの効果があったかどうか、というところで評価が分かれるんだろう。
それと今回のサミットの特徴はEU vs 米国 vs 途上国 といったお馴染みの対立構造だけじゃなくて、米仏日 vs ドイツという新たな対立軸が顕在化したことだ。

Aさん―原発問題ですね。

H教授―うん、仏は原発大国で、技術の蓄積も大きく、温暖化対策で原発ということになれば、経済的なメリットも大きく、原発こそが温暖化対策の鍵だと意気込んでいる。米国もブッシュ政権になってからは原発回帰が進んでいるし、日本はもともと原発をひとつの温暖化対策と位置づけている。英国でも原発再評価の動きがあるそうだ。
一方、同じEUでも、ドイツはチェルノブイルのこともあり、いまだ反原発脱原発の旗を降ろしておらず、省エネ技術+自然エネルギーでなんとかしていこうという構えを崩していないんだ。

Aさん―で、結局、どうなったんですか。

H教授―首脳宣言では、「気候変動の対応策の一つとして原子力計画に関心を示す国が増加している」旨の客観的な記述が入っただけで終わった。
こういう場合は玉虫色の表現にするか、価値判断を加えない客観的な状況を述べるにとどめるのが万国共通のルールなんだろう。

Aさん―あとは食糧危機との関係でバイオ燃料についても議論があったそうですね。

H教授―うん、だけどブッシュ政権はバイオ燃料推進路線を崩していないし、EUだってある意味そうだから、ほとんど何も方針めいたことを決められないまま終わり、途上国からは批判があがった。ただ、新興国でもブラジルなんかはバイオ燃料まっしぐらだしな。

Aさん―で、結局「2050 GHG半減」については、温暖化対策にネガティブなブッシュさんの許容し得るぎりぎりの持って回った言い方だけど、サミットの首脳宣言に何とか盛り込めました。でも、MEM首脳宣言では長期目標を共有することを言っただけで、数値目標については触れずじまいだったわけですね。

H教授―うん、ただ中期目標については「先進国は野心的な中期の国別総量目標を掲げ実施する」ということまでは、サミット首脳宣言に謳い込めたから、まあ、これが成果と言えば成果かな。

Aさん―でも、中期の国別総量目標について、数値目標を首脳宣言に盛り込むことをEUは主張したんでしょう。

H教授―そりゃあそうだけど、そんなことができっこないことは重々承知の上のパフォーマンスに過ぎない。ブッシュ政権が飲むわけがないし、第一、議長国の日本自体が中期目標についての国内調整ができてないんだから、首脳宣言に盛り込むなんてできるはずがない。

Aさん―そういえば、サミットって、首脳がぶっつけ本番で会議していろんなことを決めるんだと思ってたけど、実際には半年も前からいろんな調整をしているんですね。

H教授―そりゃそうさ。当たり前じゃないか。
各国首脳の代理人のような役割をするシェルパと言われる人がいて、何度も何度も会議をするんだ。福田サンのシェルパは外務省の審議官だった。
シェルパが各省の意見を集約し、官邸とも調整した上でシェルパ会議に臨むらしい。「2050 GHG半減」については、ギリギリまで米国が抵抗したとのことだ。で、本番までもつれ込んで、ようやく妥協点が見出せたんだけど、そのおかげで、きわめてわかりにくい、持って回った言い方になったんだ。
サミット直後にも、ブッシュ政権は温室効果ガスの排出規制を命じた連邦最高裁判決を拒否したし、一方ではガソリン高騰への対応策として、環境対策の一環として沿岸での石油開発を禁じた大統領令を18年ぶりに解除するなど、相変わらずの温暖化対策不感症ぶりを発揮している。
ま、でもあと半年の辛抱だ。米国はガラッと変わるよ。福田サンもそれがわかっているからこそ、それなりにがんばったんだと思うよ。
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