環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第68講 「夏の夜の夢―キョージュの2030年論」
第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
第66講 「福田ビジョンを超えて」
第65講 「08年5月、神戸のG8環境大臣会合をめぐって」
第64講 「エコツーリズム推進法と小笠原」
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No. 第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
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Issued: 2008.07.31
H教授の環境行政時評 (第67講 その3)
ポスト洞爺湖雑談

Aさん―そういえばガソリン高騰はひどいですねえ。そのうちリッター200円になるんじゃないですか。漁民が悲鳴を上げているそうですね。

H教授―この高騰は原油の枯渇というよりは、投機マネーが流入しているからだろう。
サミットでも、解決に向けて、これという手立ては見出せなかったようだ。こういう国際的なカネの流れに関しては、規制するというよりは、高い地球環境税のようなものを課してカネの流れを抑制するとともに、その税収をプールして国際基金にすべきだと思うよ。
一方じゃあ、クルマの使用が減ったり、小型車へのシフトが進んでいるという話もある。
クルマ社会依存の構造を直すチャンスだと思うけどなあ。

Aさん―福田サンはサミットも終わって──残念ながら支持率アップにはならなかったようですが──、先週一週間は夏休みを取られてたんでしょう。内閣改造のことを考えられてたのかも知れませんが、人気取りの政策でなく、そういう30年・50年先を見据えたこの国のあり方もじっくり考えておられたのなら嬉しいですね。

H教授―ほう、いいこと言うなあ、で、キミは夏休みはどうするんだ。

Aさん―(きっぱりと)決まってます。海へ行って彼氏を見つけてきます。
第66講のさまざまな話題のフォロー

H教授―やれやれ。さあ、あと前講で取り上げたことについて、いくつか補足しておこう。
まずは温暖化対策からだ。(その2)「国内排出量取引制度と都内排出量取引制度」で取り上げた、東京都のCO2規制・排出量取引・CDMだけど、東京都のCO2の大発生源って、どんなところだと思う。

Aさん―んーと、どんな大工場があるんでしょう。ちょっと思い付きませんが…。

H教授―ぼくもびっくりしたんだけど、上位には、いわゆる工場なんてほとんどないんだ。
サンシャインシティだとかNHKだとか六本木ヒルズだとかで、トップはなんと東大だそうだ。いわゆる工場などは都内から追い出してきたからな。

Aさん―はあん、だから経団連なんかも徹底抗戦しなかったんですね。

H教授―だけどCO2の排出に関しては、産業部門よりもオフィスや民生・運輸部門の排出量が増えているんだ。だからこそ、やらなきゃいけないことだとも言える。
やはり1000万都市が不夜城だなんて異常だよ。

Aさん―ということは、霞ヶ関の大省庁や合同庁舎なんかも規制の対象になるんですね。いいことじゃないですか。

H教授―うーん、どうなんだろう。

Aさん―それから(その4)「捕鯨小論」で取り上げたグリーンピースジャパンの鯨肉告発事件、センセイは不起訴にしろというご意見でしたが、やはり窃盗ということで起訴されたそうです。

H教授―確信犯で、まったく改悛の情がみられないのでそうしたんだろう。だけど、国際感覚のない愚かな判断だと思うよ。
確かに外形的事実からすれば窃盗といえば窃盗だが、被害額だって微々たるものだし、初犯だし…。起訴すりゃあ、国際的に物議を醸すだけだのになあ。

Aさん―それから(その4)「諫早干拓で原告勝訴」の続きですが、やはりセンセイの予想通り、国は控訴したそうです。

H教授―ただ、一方では水門の開門調査が可能かどうかの環境アセスメントを実施するそうだ。

Aさん―へえ、なんでまた。環境省がそんな主張をしたわけですか。

H教授―いや、新聞情報だけど、農水省と官邸は即時控訴すべしという意見だったけど、鳩山法務大臣が控訴すべきじゃないと頑強に主張した結果らしい。

Aさん―へえ、法務省がまたなんで?
回想―ビートルズプラン
H教授―いや法務省というよりは、鳩山サン個人が頑張ったということのようだ。なんせ、あの大臣は蝶マニア、生物愛好家として有名なんだ。生物の宝庫である干潟を潰して干拓するなどもってのほかだと以前から思っていたんじゃないかな。
もう30年も前になるけど、ぼくが自然保護局にいるとき、「ビートルズプラン」という提言をつくるためのプロジェクトチームを作ったことがあって、ボクがそのリーダーをやらされたんだけど、そのとき、ちょっとだけ鳩山サンとかかわりがあった。

Aさん―ビートルズプラン? なんですか、それ。

H教授―都会に蝶やホタルやカブトムシなどの小動物の生息する環境を取り戻す計画だ。
今の言葉で言えば、ビオトープを都会に造ろうという提言だった。当時はビオトープなんていう言葉はまだ使われていない時代だったけど。
街づくりにそういう視点を盛り込むことを目指してレポートを書いたんだ。

Aさん―だって、そんなの環境省──あ、当時は環境庁か──の所掌外だったんでしょう。

H教授―今なら都市内の自然についても環境省が関与しているけど、当時は、都会の中の自然のことは環境庁の所掌外だった。だから一般論だけじゃなく、そのモデルプランとして環境庁の所管の新宿御苑の改造計画も併せて提案したんだ。これを新聞発表したら、即座に当時若手代議士だった鳩山サンから呼びつけられたんだ。
一体何ごとだろうと思い、鳩山サンのことを調べてみたら、蝶マニアらしいということがわかった。そこで、同じプロジェクトメンバーのレンジャー仲間で、蝶に一番詳しいSくんに同行してもらって、議員会館に行ったんだ。
鳩山サンとSくんの間で蝶に関するマニアックな議論がひとしきりあった。あとでSくんに聞いたら、本物の蝶マニアで歯が立たなかったと言ってた。

Aさん―センセイの「石」みたいなものですね。

H教授―もっと本格的なんじゃないかなあ。驚いたよ、ふたりの会話を聞いててもチンプンカンプンだったもの。まるで唐人の寝言を聞いているようだった。

Aさん―で、鳩山サンの用件はなんだったんですか。

H教授―素晴らしいプランだからぜひ実現してくれ、どんな協力でもするからと熱烈なエールを送られたんだ。

Aさん―で、そのビートルズプランは実現したんですか。

H教授―新宿御苑を管理していたのは別の課で、そこの協力が得られなかったから、予算要求もできないまま、ぽしゃっちゃった。
でも後年、京都御苑では、その発想を入れて管理することにしたそうだし、新宿御苑の一部にもそういう場所が造られたから、まったく意味がなかったわけじゃない。
つまり、ただの草っぱらや雑木林、水辺を再評価し、できるだけ保全復元に努めるとともに、その管理は粗放なものでいい、小動物が棲めるような環境を造ろうというような内容だったから、生物多様性だとか自然再生事業の先駆けという評価だって可能だと思うよ。

Aさん―センセイがそのリーダーだったということは、言い出しっぺだったわけですか。

H教授―いや当時のN課長──いまは故人だけど──の発案で、無理矢理リーダーをやらされたんだ。

Aさん―でしょうねえ、センセイなら同じ蝶でも、「夜の蝶」の方でしょう。

H教授―う、うるさい。夜の蝶なんて、ボクにはまったく無関係だ。…そりゃあ、興味がないわけじゃあなかったけど、まったくカネがなかったから縁もなかった。

Aさん―(小さく)オカネさえあれば夜の蝶にいったわけだ。
ま、組織と関係なく、そういうトップの私的な思いが、組織としての公的な意見形成につながることがあるんですねえ。

H教授―うん、よいかどうかは別にして、そういうケースがまったくないわけじゃあない。
石垣空港白保沖案をつぶした【5】のも、本来推進すべき立場の運輸大臣だった石原(慎太郎)サンの個人的な思いだったからなあ。小笠原空港の父島中央部案【6】も都知事だった石原サンがダメだと言ったらしい。
ま、いずれにせよ、ボクのような常識人には到底できないけどねえ。

Aさん―センセイ、そういう私的な思いと公的な立場の矛盾を感じられたことはあるんですか。

H教授―例えば国立公園に道路を作るのを認めざるを得ない場合、道路の法面には緑化をやらせるんだ。緑化が不可能な場合には大概モルタルを吹き付ける。
だけど、個人的には道路をどうしても作らざるを得ないのなら、その法面は緑化したりモルタル吹きつけなどせずに、地層だとか、岩石だとかを学ぶための地学教材用にそのままにしておけばいいと思うんだけど、公的にはそんなこと到底言えなかった。

Aさん―ぷっ、“地学教材用”じゃなくて、“鉱物採集用”でしょう。
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【5】 石垣空港白保沖計画案
第17講(その1)「新石垣空港をめぐって」
【6】 小笠原空港案
第37講(その3)「空港、食う幸」
第64講(その4)「小笠原の旅」
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