環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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No. 第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
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Issued: 2008.07.31
H教授の環境行政時評 (第67講 その4)
「とりまとめ予算」の謎

Aさん―ところでセンセイ、今頃各省は予算要求作業中なんでしょう。環境省予算は環境省のホームページをみればすぐわかりますけど、他省庁分を含めての環境保全のための全体予算って一体いくらあるんですか。

H教授―うーん、それは難しい。
ま、一応、環境省予算の今年度2240億円は環境保全予算と言ってもいいだろうけど、他省庁の予算の場合、どうカウントするかだよね。
主目的は別だけど、副次的な目的として環境保全を挙げている予算が結構あるし、環境保全を目的としてはいないが、結果的に環境保全に寄与する予算もいっぱいある。執行に当たって環境保全に配慮しなければいけない予算なんかも含めれば、あっという間に10兆円はいってしまうだろう。
それらをどう見るかで、結果は大きく違ってくる。
一応は環境省がとりまとめた環境保全経費というのがあって、白書でその結果は出している。今年度2兆2千億円で、環境省予算の約十倍だ。それはべらぼうに高く見積もりすぎという見方もできれば、圧倒的に少なすぎるという見方も可能だ。
たとえば、原発立地促進予算は環境保全予算に入れるか入れないか、見方はさまざまだろう。以前は入れていたんだけど、批判も強くて、最近の白書では入れて計算した場合と入れない場合と両方の試算を載せている。2兆2千億円というのは入れた方のケースじゃなかったかな。
ま、どっちにしても他省庁の予算なんて、環境省がどうこう指図できるわけでもないからなあ。

Aさん―ふうん、環境省予算の10倍ですか。でも聞いてみると伸縮自在みたいだから、なんだか、インチキくさあい。

H教授―何言ってるんだ。こういう「取りまとめ予算」はもっと極端なケースだってある。
これはボクの友人の話だけど、あるネット掲示板に「たかが男女共同参画のために防衛費や公共事業よりも多い9兆円も注ぎ込み、サヨクやフェミニストの食い物にされている」という書き込みがあったそうだ。
一時、テレビのお笑い番組や週刊誌でも同じようなことが言われていたことがあったんだね。それを真に受けているんだ。

Aさん―そんなバカなことあるわけないでしょう。

H教授―で、その友人が調べたところ、内閣府の男女共同参画局のとりまとめた予算は、一番多い年度では11兆円近くもあり、20年度は6兆円弱だったんだ。
で、その中身はというと、かつては厚生労働省予算である老齢年金国庫負担金5兆円が入っていたんだ。最近はいくらなんでもというので、さすがに年金の5兆円は外したんだ。だから、予算はがらっと減ったんだけど、それでもこの中には厚生労働省の介護予算の2兆円が丸々入っているんだ。
要は典型的な「とりまとめ予算」なんだ。「風が吹けば桶屋が儲かる」式の屁理屈でもって、男女共同参画に資すると強弁し得る予算を片っ端からただ列挙しただけの話。

Aさん―ばっかばかしい。
で、その男女共同参画局自体が所掌している予算、つまり男女共同参画を主目的にした予算はいくらなんですか。

H教授―数億円。つまり99.99%が人の褌なんだ。こういう調子で取りまとめていけば、格差是正予算だって、メタボ対策予算だって、地震対策予算だって、すぐに10兆円ぐらいにはなってしまうだろう。
ところが、その旨を懇切丁寧に説明して、その掲示板に投稿したんだけど、頑として聞く耳を持たず、相変わらず「何兆円もたかが男女共同参画のために費やしている」を繰り返しているらしい。世の中にはまったく対話不可能な人がいるもんだと呆れていたよ。

Aさん―そうかもしれませんねえ、アタシだって、対話したくても対話不可能な男性がいますもんねえ。
H教授―それは意味が違うだろう! キミの場合は、相手にしてもらえないだけじゃないか。
ま、来年度予算はそれなりに低炭素社会に配慮した予算になると思うよ。だけどカネじゃないんだ。システムなんだ。税制などのシステムさえ変えれば、カネがなくても低炭素社会は可能だと思うよ。

Aさん―出ました! 持論ですね。でもシステムの意味がわからないわ…。
ところで、いよいよオリンピックですね。日本はいい成績とれるかしら。頑張ってほしいですね。

H教授―オリンピックにせよ、高校野球にせよ、何でこんな真夏にするんだ。
選手のコンディションだってよくないだろうし、観客だって熱中症で倒れる人が出てくる。テレビやエアコン等による環境負荷もすさまじいものがあるだろう。
こんなの開催時期を2ケ月ずらすだけで、だいぶ変わると思うぞ。これがボクのいうシステムを変えるという一つの例だ。どうだ、カネなんてかからないだろう。

Aさん―…。

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(平成20年7月28日執筆 同月末編集了)
註:本講の見解は環境省およびEICの見解とはまったく関係ありません。また、本講で用いた情報は朝日新聞と「エネルギーと環境」(週刊)に多くを負っています。
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