環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第69講 「激動の9月」
第68講 「夏の夜の夢―キョージュの2030年論」
第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
第66講 「福田ビジョンを超えて」
第65講 「08年5月、神戸のG8環境大臣会合をめぐって」
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No. 第68講 「夏の夜の夢―キョージュの2030年論」
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Issued: 2008.09.04
H教授の環境行政時評(第68講 その1)

H教授―いよいよ8月も終わりだなあ。お盆明けから朝夕は急に涼しくなった。ところでキミ、しばらく姿を見せなかったが、どこに行ってたんだ。

Aさん―うふっ、内緒です(上機嫌で思い出し笑い)。

H教授―またオトコか、つくづく懲りないやつだなあ。

Aさん―放っておいてください。夏は恋の季節なんです。

H教授―ふうん、「ピンキーとキラーズ」か

Aさん―また訳のわからない呪文を言ってるわ。
そんなことよりセンセイは何をしていたんですか。
レンジャー100人の意識と意見

H教授―第49講で取り上げたレンジャーへのアンケート調査【1】を、「レンジャー100人の意識と意見」という形でまとめた。

Aさん―それって、一昨年の卒論でKサン、そして去年の卒論でそれを引き継いだHクンがまとめたものをレビューしてリライトしたんですか。

H教授―うん、ただボクは改めてそのアンケート原文を読んでみて、自由記述欄にびっしりと書いてあった100人を超すレンジャーの生の声を電子ファイルに整理しておこうと思ったんだ。そこには夢や希望、抱負が書かれている。そしてそれ以上に叫びがあり、苦悩がある。さらには地方事務所と現地保護官の意識のズレ、そして世代間や採用種別間の微妙な葛藤などの生々しい書き込みがある。これを三択や四択の統計解析に押し込めることは適当でないと思ったんだ。

Aさん―でもそうすると個人が特定されるんじゃないですか。

H教授―だからできるだけ原文を尊重しつつも、個人が特定されそうな部分は削除や趣旨を変えない程度に改変した。一方、その書き込みのバックグラウンドも明らかにしておく必要があるから、採用種別や、ベテランか中堅か若手か、地方事務所勤務か現地保護官かなどある程度のグルーピングもした。
【1】 レンジャーアンケート
第49講(その4)「レンジャーアンケート」
第47講(その3)「世界遺産と国立公園見直し」

Aさん―それは論文にして何かに発表するんですか。

H教授―いや、しないというかできない。一部の関係者にのみ配布して、希望するレンジャーにも届けることにした。だから研究業績にもカウントされないし、経費は全部持ち出しになったんだけど、このことでレンジャーへの刺激になり、かつレンジャー間の活発な交流と議論のきっかけになればいいと思ったんだ。ま、レンジャーOBとしての最後のご奉公というところかな。

Aさん―余計なお世話だと思われるだけかも知れませんよ。

H教授―はは、それも覚悟の上さ。
北京オリンピックの光と影

Aさん―ところでセンセイ、この夏は何といっても北京オリンピックでしたよねえ。
終盤になって、陸上の400mリレーで悲願のメダル! 朝原サン、とてもうれしそうだったわ。2冠の北島クンといい、銀メダルをとったフェンシングの太田クンといい、本当によかったですねえ。

H教授―うん、日本はまずまず善戦したんじゃないかな。女子ソフトは金だったし、バドミントンではオグシオの影に隠れて目立たなかったスエマエが世界ランク1位の中国ペアを破る大番狂わせ、その後に敗れたとはいえ、気持ちのいいプレイを見せてくれた。女子バレーの栗原もよかった。それに卓球では平野早矢香の求道者のような面持ちがよかったねえ。マラソンの野口みずきの欠場は残念だったけど。

Aさん―センセイ、なんだか女子ばっかりじゃないですか。もう。

H教授―え? キミだって挙げたのは男子ばっかりだったぞ。
Aさん―あ、そうでしたかねえ(照れ笑い)。
で、オリンピック全体を通しての感想はどうだったんたんですか。第20講のようなショービズムがどうこうなんて言うのはなしにして【2】

H教授―え? そうか…。「たかがスポーツ、されどスポーツ」というのは何度でも言いたかったんだけどなあ。
本来、開催時期を真夏からずらすべきだというボクの意見は変わらないけど、それはそれで、もちろん楽しめたよ。柔道は不振だったけど、それは柔道がそれだけ国際化したということで、悲しむべきものじゃない。スモウだって横綱が外国人というのが当たり前なんだからな。
北京では懸念されてたテロもなかったし、ちょっと中国の応援に品がないというのがあったが、どうせ中国語はわからないから、大して気にならなかった。

Aさん大気汚染が懸念されていた割には世界新もいっぱい出ましたね。ボルト選手の陸上100mなんて信じられないくらい。
【2】 オリンピックとショービズム
第20講(その1)「オリンピックとショービニズム」

H教授―まあ、中国政府も交通規制や工場の操業制限など、それなりに気を遣っていたし、それに64年の東京オリンピックのときの方がもっと汚染されていたからなあ。
もともとオリンピックに出るようなアスリートは頑健そのものだから、少々の汚染はどうってことないのかも知れないな。
ただねえ、一方じゃ中国ではこの5月に四川省大地震で8万人も犠牲者を出し、今も“塗炭の苦しみ”に喘いでいる。そんなときにスポーツの祭典で浮かれていていいのかなという気がちらっとしなかったわけでもない。
もちろん、だからこそ夢を与え、国の一体感を高めるためにやったんだという言い方もできるけどね。
ただ、オリンピック開催の前提となり、中国も約束していたはずの民主化については、結局デモの許可を出さなかったりと、おざなりに終わったね。

Aさん―オリンピックは平和の祭典だというのに、その前夜からグルジアとロシアとの間で突如戦争が起き、今も不穏なままというのはいただけませんね。

H教授―うん、民族自決の原則はもちろん正しいんだけど、実際にはコソボでもそうだったように、大陸では民族というのは入れ子のようになっていてそう単純ではない。
グルジアでは少数派のオセット人が抑圧され、グルジアは反ロ、親米だから、その抑圧されているオセット人は親ロとなる。グルジアの中でも、そのオセット人が多数派の南オセチアはロシアの圧力で自治州として半独立のような状態で、今もグルジアからの完全独立とロシアへの併合を主張している。
グルジアは絶対に独立を認めようとはしないから、グルジア政府と自治州政府との紛争が絶えず、南オセチアには平和維持軍と称してロシア軍が駐屯している。
そもそもは米国の支援をアテにして南オセチアに侵攻したグルジアに非があるのは明白だ。おまけにオリンピックの前夜というタイミングもあんまりだろう。ただ、ロシア側の“大ロシア主義”みたいなものも露骨に感じられ、そうしたロシアの挑発に乗ったという見方も可能だ。
つまり、どっちもどっちと言うしかない。しかもその背後には、米国・ロシア・EU諸国の、パイプラインなどエネルギー確保の思惑が見え隠れする。
オリンピックではスポーツマンシップを通して人間の偉大さ、人間への信頼みたいなものを感じることができたけれど、同時に起きたこの戦争では人間の愚かさ、醜さのようなものを感じざるを得なかったねえ。

Aさん―一方じゃ、例のギョーザ事件【3】と同じようなギョーザの中毒事件が、中国でも7月はじめに起きていたことが発覚。オリンピックを控えた中国政府は、日本側に捜査終了まで公表を伏せるよう依頼したそうで、日本側も了解していたわけです。それを“政府による隠蔽”だとして、読売新聞がすっぱ抜きました。

H教授―しかも向こうの捜査責任者が飛び降り自殺したなんて不可解な事件も起きている。どうやらギョーザへの農薬混入は中国で起きたとみるのが真相のようだ。
ただ、中国政府から日本にそういう通報があったこと自体は評価できる。
もうオリンピックも終了したんだ。一日も早く、捜査結果の全容を日中政府は発表してほしいね。
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【3】 ギョーザ事件
第62講(その4)「中国ギョーザと再発防止策」
第61講(その1)「日本を揺るがせた謎のギョーザ騒動」
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