環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第70講『憂鬱なる硬派―「人類は絶滅する」考』
第69講 「激動の9月」
第68講 「夏の夜の夢―キョージュの2030年論」
第67講 『戦いすんで日が暮れて─洞爺湖サミット終了!』
第66講 「福田ビジョンを超えて」
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No. 第69講 「激動の9月」
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Issued: 2008.10.02
H教授の環境行政時評(第69講 その1)

Aさん―センセ、いやになるほど今月(9月)はいろんなことがありましたね。

H教授―そうだなあ。突然の福田サンの辞任【1】。それに引き続いてミニマムアクセス米の事故米転用問題が発覚し、今もその波紋は広がるばかりだ。で、ついに農水省では大臣も次官も更迭されてしまった。
年金記録の改竄問題、つまり「消えた年金」事件も同じ頃発覚し、国民にショックを与えたし、同じ厚生労働省案件では、スタートしたばかりの後期高齢者医療制度自体を見直すと大臣そのものが言い出している【2】

Aさん―海外に目を向ければ、中国では粉ミルクのメラミン汚染が発覚したかと思ったら、それがたちまち日本にも上陸、今も上へ下への大騒ぎになっています。

H教授―一方じゃ、米国ではサブプライム問題に端を発し、AIGが経営破綻し救済したかと思ったら、リーマンブラザーズが破産、そのあとワシントンミューチアル銀行も破綻で、金融不安が広がるばかり。金融全般への破産連鎖を押さえ込もうと、なんと75兆円もの公的資金の投入が議論されている非常事態で、“金融9・11”などと言われている。そして日本も巻き込んだ国際的な金融再編成が行われようとしている。

Aさん―そんな中、政治は空白状態で、自民党総裁選で5人の候補者が揃って全国行脚。体のいい選挙活動ですよね。それで、ようやく麻生サンが首相に就任しました。
<改革>の象徴であるコイズミさんが突然の政界引退、というサプライズまでありました。
その麻生内閣ですが、発足直後に中山成彬国土交通大臣がとんでもない失言を3連発、その上さらに暴言を重ねた挙句、今日(9/28)、辞任に追い込まれ、苦しい船出を強いられています。

H教授―この人の暴言癖は以前から知られていたんだから、こういう人を大臣にした麻生サンの任命責任が問われて当然だろうな。

Aさん―そんな中で例の橋下サンだけが、「失言・暴言」を評価しています。

H教授―暴言・妄言ということでいえば、2人とも確信犯というか、癖というか、ほとんどビョーキだからな。
今まで挙げた話題だけでも、語りだしたらそれだけで、この時評は終わってしまいそうだな。

Aさん―ま、寸評だけでもしておきましょうよ。
【1】 福田前首相の辞任
内閣総辞職に当たっての内閣総理大臣談話【平成20年9月24日】
【2】 消えた年金問題と、後期高齢者医療制度の見直し
年金記録問題について(社会保険庁)
長寿医療制度の開始について(厚生労働省)
閣議後記者会見概要(H20.09.26(金)10:27〜11:09 省内会見場)
大臣厚生労働記者会挨拶及び共同会見(H20.09.25(木)13:25〜13:57 省内会見場)
キョージュ、国政の混乱を憂う

H教授―じゃ、まずポスト福田サンだな。5人の候補者が立って、財政出動派だ、財政再建派だ、上げ潮派だとか言われていたが、皆目先のことしか言わない。20年、30年先の日本をどうするというビジョンらしいものが、どの候補者からも聞かれなかったのが情けない。
もっともそれは民主党も同じで、根拠のないバラ色の夢をふりまくだけ。
ボクの予測じゃ、総選挙で自民党大敗、自民党は政権の座を降りるが、民主党政権も結局は国民の信頼を得られず、政界再編成で、二大政党制はどっかへ行っちゃうんじゃないかなどとすら思っちゃうね。

Aさん―センセ、もう少し具体的に。

H教授―言い出したらきりがないけど、例えば福田サンは環境革命なんてことを言い出し、「福田ビジョン」を公表した【3】。そして2050年CO2の60〜80%削減を究極の目標とした「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定【4】し、今秋の税制改革には環境シフトを明言したりして、それなりに熱心そうだったけど、ソーリをやめるといった途端に、そういうことはぴたっと言わなくなった。
イギリスのブレアさんが、首相を辞めたあとも、いくつかの案件だけはライフワークとばかりに熱心に取り組んでいるのと大違いだ。
後任は麻生サンになったけど、麻生サンの口からは、景気回復ばっかりで、環境の「カ」の字も聞こえてこない。補正予算を通してからかどうかわからないが、早期の解散総選挙で超短命内閣になりそうな気がする。だから税制改革も吹っ飛んじゃうんじゃないかな。道路特別会計の一般会計化【5】だって見せ掛けだけのものに終わってしまいそうな気がするな。

Aさん―うーん、お先真っ暗ですね。で、コイズミさんの引退劇はどうですか。

H教授―コイズミさんが小池サン支持を打ち出したけど、まったく反響はなかった。それが引退へつながったのかもしれない。負の遺産だけが目立つコイズミ改革の完全なる終焉だな。
【3】 福田ビジョン
第66講(その1)「福田ビジョンの可能性と限界」
【4】 低炭素社会づくり行動計画と、その閣議決定
第68講(その2)「「低炭素社会づくり行動計画」閣議決定」
低炭素社会づくり行動計画について(平成20年7月29日 閣議決定)
http://www.env.go.jp/
press/press.php?serial=10025
【5】 道路特別会計の一般会計化
第64講(その1)「道路特定財源の一般財源化で変わること変わらないこと」
食品不祥事 ―事故米転売、メラミン入り食品

Aさん―いつまでもこの話はなんですから、次にいきましょう。
事故米の転売事件というのはヒドイですねえ。三笠フーズなんて滅茶苦茶じゃないですか。金儲けさえできれば、国民の健康なんてどうでもいいってわけでしょう。

H教授―だけど、農水省もどうかしているぜ。事故米を工業用糊製造に転用するというんだけど、そんなものをなんで食品業者に売れるような仕組みになっているんだ。第一、糊のメーカーじゃ米の澱粉なんか使ってないなんて話だってある。
まあ、あえて農水省のために弁解すれば、ミニマムアクセス米の輸入義務だとか、事故米を売らなきゃいけないような枠組を作ったのは行政じゃなくて政治。政治が決めた枠組の中で、行政が一生懸命やろうとすれば、ああなっちゃうのも仕方がないという面もあるだろう。それは社会保険庁の年金記録改竄問題にしてもそうじゃないかな。
だいたいミニマムアクセス米自体、需要がほとんどないというんだけど、だったら全量、ODAとして現物支給すりゃあいいじゃないか。

Aさん―そして、中国の粉ミルク事件。メラミンが増量剤として混入されていて、何万という乳幼児に腎臓結石ができ、死者まで出ています。対岸の火事だと思っていたら、実は日本の食品メーカーの中国工場で、メラミン入り粉ミルクを使用した加工食品がつくられ、日本に輸入されていたんですね。水際で輸入をストップできなかったんですか。

H教授―もともと日本ではメラミンを食用にすること自体想定していなかったから、検査もしなかったらしい。

Aさん―こちらは厚生労働省ですね。やはり消費者庁が必要だわ。これを決めたのは福田サンの功績じゃないですか。

H教授―でも食品に関してはちゃんと食品安全委員会という独立機関があって、形式上はかなりの権限を持っているんだ【6】。にもかかわらず…。
だから、組織をつくったからって改善されるとは限らない。
食品安全委員会のホームページをみると、毎週一回定例の委員会が開かれているんだけど、事故米転用事件やメラミン入り食品事件が発覚したあとも緊急の委員会が開かれた様子もなく、定例の委員会ですら取り上げていないようだ。ホームページには厚生労働省や農水省からの公式情報がアップされているだけ。実に情けないねえ。

Aさん―ところで事故米転用やメラミン入り食品の健康影響はどうなんですか。

H教授―事故米はメタミドホス入りのものとアフラトキシン入りのもの、それに正体不明のカビ入りのものがあるらしい。
メタミドホスの方は、基準を超したものが見つかっている。ただ、基準そのものが「一生食べ続けても大丈夫」という基準だから、直ちに健康影響が出るということはないと思う。
アフラトキシンは発がん性が強いもので、リスクは摂取量に応じてだから、ごくわずかだろうけど発ガンリスクは増える。
カビの方は正体不明だからわからない。
健康影響を過度に心配する必要はないとは思うけど、だからといって農水省は免責されるわけではないし、とんでもないことに変わりはない。
メラミンの方は、まだよくわからないが、加工乳製品だから粉ミルクを毎日飲んだ中国の乳幼児に較べれば、摂取量はごくわずかだろうから、健康影響が出るほどのものじゃないと信じたいね。
【6】 食品安全委員会
第55講(その3)「食品不祥事と食品安全委員会」
米国破産への第一歩か ─リーマン破綻と公的資金投入

Aさん―ガラッと話は変わりますが、米国のリーマンブラザーズの破綻などの連鎖倒産は、まさに“金融9・11”みたいな状況ですけど、日本に影響はないんですか。

H教授―ないわけはないし、ひょっとしたら甚大な影響があるかもしれないが、ボクは株とか証券とかにはまったく縁がないし、経済オンチなのでさっぱりわからない。ただ、間違いなくドルは暴落し、基軸通貨としての信用は落ちるんじゃないかな。
経済政策ではブッシュさんと同じ市場原理主義だったはずのマケインさんもここへきて、宗旨替えしたかの如くの発言をしているし、大統領選も一時接戦と言われていたが、この事件のあと、オバマさんにぐいと水をあけられたようだ。
ボクが予言した通り、ブッシュさんは史上最低最悪の大統領として、その名を世界史に残しそうだね。
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