環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第72講『2009年霧中の旅―新春呆談』
第71講『いまこそ「時のアセス」を!』
第70講『憂鬱なる硬派―「人類は絶滅する」考』
第69講 「激動の9月」
第68講 「夏の夜の夢―キョージュの2030年論」
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No. 第71講『いまこそ「時のアセス」を!』
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Issued: 2008.12.05
H教授の環境行政時評(第71講 その4)
COP14前夜

Aさん―ところでいよいよ明日からポーランドのポズナニでCOP14が始まりますね。

H教授―うん、その前に、気候変動問題に関して、前講以降の動きを整理しておこう。

Aさん―えーと、まず昨年度のGHG排出量の速報値が出ました【17】。過去最大だそうです。

H教授―うん、2006年度より2.3%増え、対90年比では8.7%の増加となる。最大の原因は中越沖地震でいまだに柏崎刈羽原発が停止していることだ【18】
それでもギブアップ宣言をせず、京都議定書の目標は達成可能だと言い続けている日本政府の神経を疑うね。
ギブアップ宣言をしたうえで、今後はあらゆる政策手段をとるべきだ。

Aさん―政策手段というと、国内排出量取引【19】と国内CDM環境税【20】、再生可能エネルギー固定価格買取制度【21】ですね。
【17】 温室効果ガス排出量の平成19年度速報値
環境省>地球温暖化国内対策>我が国の温室効果ガス排出量
【18】 柏崎刈羽原発の停止
第55講(その1)「中越沖地震と柏崎刈羽原発」
【19】 国内排出量取引
第62講(その2)「国内排出量取引制度の検討開始へ」
【20】 国内CDMと環境税
第9講(その3)「温暖化対策税の在り方を巡って」
第35講(その2)「環境税と特会見直しと第二約束期間」

H教授―カーボンフットプリントやカーボンオフセット、フィフティ・フィフティ【22】の制度化、電気料金など公共料金制度の見直しからはじまって、化石燃料の輸入制限まで視野に入れるべきだろう。
それらについて、どういう問題点があって、それをいつまでにクリアして、いつ導入するかという行程表をつくるべきだと思うよ。

Aさん―そんなこと、麻生サンはおろか、民主党内閣ができてもムリなんじゃないですか。

H教授―まあね(肩を落とす)。

Aさん―あと、環境省が新たに環境税に関する提案をしましたよね。

H教授―うん、いつかボクもいったように、既存の化石燃料にかかるエネルギー関連税をガラポンして、CO2排出量に比例するように見直すという提案だ【23】。名を捨てて実を取るという戦略だろうね。
ヨーロッパ諸国に較べれば、日本の化石燃料にかかる既存の税は低く概ね半分以下、石炭や天然ガスはデンマークに較べるとなんと数%なんだぜ。

Aさん―米国と較べれば?

H教授―そりゃあ高い。だけど、その米国流のやりかたこそが元凶なんだ。

Aさん―で、反応は?

H教授―政府税調の答申がまとまったけど、まるで無視。ひどいものだよ。
福田サンは税制の大幅環境シフトを明言したけど、完全に消えてしまった。
【21】 再生可能エネルギー固定価格買取制度
第70講(その1)「経済危機と温暖化対策」
【22】 カーボンフットプリントやカーボンオフセットとフィフティ・フィフティ制度
第66講(その2)「温暖化対策最新動向」
第59講(その3)「カーボン・オフセットとフィフティ・フィフティ」
【23】 化石燃料に係るエネルギー関連税の見直し
第64講(その1)「福田内閣低空飛行」

Aさん―ま、ま、そう落ち込まないで。あれほど中期目標を総量目標にすることを嫌っていた経団連ですけど、先進国や大量排出国については容認しました。

H教授―そりゃあ、そうだろう。オバマさんは大統領就任前に、はや自らの所信を示している。先進国の中期目標を総量目標にすることに経団連だけが反対すれば、それこそ世界の笑いものになる。
オバマさんが国内排出量取引や環境税を連邦レベルで実施するとなれば、やはり追随することになるだろう。

Aさん―その中期目標ですが、官邸に設けられた中期目標検討委員会は、選択肢として複数の総量目標を示すことにしたようですね。

H教授―他の諸国の出方をうかがってということもあるだろうけど、環境省と経産省の主張には隔たりがありすぎて【24】、両論併記にして、あとは政治決断に任せるしかないということじゃないかな。
COP14を目の前にして、オバマさんの所信も含めると、先進国はすべて中期目標としての総量目標値を出しているのに、日本だけがギリギリまで出さないで済ませようとしているのは、いかにも情けないね。
で、委員会の座長は前・日銀総裁の福井サン。不祥事が発覚しても居座り続けた人【25】だ。彼のインタビュー記事が出ていたけど、相変わらず経済成長を至上命題にしているようで、こりゃあ、ダメだと思ったね。

Aさん―で、COP14のみどころは?
【24】 中期目標に対する環境省と経産省の主張の隔たり
第63講(その2)「温暖化対策の国内動向」
【25】 福井前日銀総裁の不祥事
第42講(その1)「世事―国内編」

H教授―ブッシュさんが一応はまだ米国大統領なんだから、さしたる進展はないだろう。
ただ、今の経済危機が各国の主張にどう影響を及ぼしているかということには興味があるね。
あと、日本の主張する、セクター別アプローチや途上国から新興国を分けるという提案、さらには基準年として90年を絶対視すべきではないという意見がどう受け止められるかだね【26】

Aさん―センセイのご意見は?

H教授―日本の主張はそれぞれある意味もっともなところがある。
でもねえ、それは日本がやるべきことをすべてやり、中期目標でも高い旗を掲げていてこそ、はじめて説得力が出てくるんだ。
ただ単位GDP当たりの排出量が低いというだけで、中期目標の数値も明示せず、ODAは減らす一方で、環境税も国内排出量取引も本格実施せず、再生可能エネルギーへの大幅導入も消極的だったら、およそ相手にされないんじゃないかなあ。
【26】 セクター別アプローチなど日本の主張について
第63講(その2)「温暖化対策の国内動向」
遠慮しつつも「ぼく自身のための広告」

Aさん―まあ、蓋を開けてのお楽しみですね。この時評がアップされる頃にはわかっているんじゃないですか。他に何かありますか。

H教授―前々講で予告していたボクの著作の第二弾がでた。自主流通本だけど、発行部数も5割増しだ【27】

Aさん―例のオタク本ですね。で、発行部数は?

H教授―(答えず)あと、ひとつはボクのホームページ(http://www.prof-h.net/)があらかた復元した。

Aさん―確か、立ち上げはゼミ生のY君にやってもらってたんでしょう。で、センセイのポカで炎上しちゃったんですよね。
彼はもうとっくに卒業して東京ですよねえ。へえ、センセイ、やっと自分でそういうことができるようになったんだ。

H教授―…。

Aさん―え? 違うんですか。

H教授―Y君は東京生活もようやく慣れてきたらしく、勤務終了後シコシコと復元作業をしてくれていたんだ。
【27】 Hキョージュの著作第2弾
新刊『Hキョージュの鉱物冗報通信 四人組・誤認組編』

Aさん―情けない。パワーポイントも使えない、ホームページも自分でいじれない大学教員なんて、全国探してもセンセイくらいじゃないですか。

H教授―キミがやってくれればよかったんだ! キミはそういうことに関してはボク以下だもんなあ。ホントに情けないよ。

Aさん―(弱々しく)類は友を呼ぶってやつなんですかねえ。

H教授Aさん―…(激しく落ち込む)。
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(平成20年11月30日執筆、12月1日編集了)
註:本講の見解は環境省およびEICの見解とはまったく関係ありません。また、本講で用いた情報は朝日新聞と「エネルギーと環境」(週刊)に多くを負っています。
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