環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第74講「化学物質対策の新展開―化審法改正」
第73講『当たるも八卦、当たらぬも八卦、新たな海域保護制度 ―付:ダーウィン生誕200年』
第72講『2009年霧中の旅―新春呆談』
第71講『いまこそ「時のアセス」を!』
第70講『憂鬱なる硬派―「人類は絶滅する」考』
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No. 第73講『当たるも八卦、当たらぬも八卦、新たな海域保護制度 ―付:ダーウィン生誕200年』
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Issued: 2009.02.09
H教授の環境行政時評(第73講 その2)
EUの温暖化対策提案

Aさん―ふふ、センセイ、コトバとは裏腹に期待感の欠片もみえないですよ。
ところでEUの欧州委員会が温暖化対策の新提案をまとめたそうですね。
なんでも2020年には年間規模21兆円ぐらいの投資が必要だとか。

H教授―うん、年末にコペンハーゲンで開催されるCOP15でのEU提案の原案だ。
先進国は2020年までにGHG排出を対90年比で30%減少させる。途上国に対しては義務とはしないものの、何も対策を講じなかったときに較べて、2020年では15%〜30%カットする対策を求めていて、21兆円の半分以上をそうした途上国対策に費やすとの計画だ。

Aさん―その財源はどうするというんですか。

H教授―GHGの排出量に応じて先進国が拠出するとしている。

Aさん―日本や米国のそれへの対応は?

H教授―まだ報道されたばかりだから、よくわからない。ただ、途上国は好意的に受け止めるんじゃないかな。

Aさん―先進国対策としては何か提案しているんですか。

H教授―京都議定書で対象外となっている国際航空と船舶分野も対象とすることを提案しているし、OECD加盟国に対して2013年までにEUと同じような排出量取引制度を導入し、2015年にはそれの国際市場を導入するとしているそうだ。
排出量取引制度に関しては、オバマさんも乗ってくる可能性があるんじゃないかな。
Aさん―日本はやっと試行を始めたばっかりですから【7】、かなりしんどいですね。

H教授―うん、どうもEUには先手先手を打たれているような気がするな。
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【7】 排出量取引制度の導入
第72講(その3)「自然エネルギー復興に向けて ──拡大PPP論」
日本の中期目標をめぐって
Aさん―日本の中期目標の検討はどうなっているんですか。

H教授―官邸の「中期目標検討委員会」は1月23日に第3回会合が開かれ、はじめて本格的な数値論議に入った【8】
翌日の朝日新聞では、2020年のGHG排出量は対90年比で+6%、△4%、△15%、△25%の4案が検討されたと出ていた。最初の2つは昨年5月に経産省がまとめた「長期エネルギー需給見通し」の努力継続ケース、最大導入ケースにそれぞれが該当する【9】
【8】 首相官邸「地球温暖化問題に関する懇談会 中期目標検討委員会」
首相官邸>第3回 議事次第と配布資料
首相官邸>地球温暖化問題に関する懇談会の開催状況
第71講(その4)「COP14前夜」

Aさん―+6%なんて恥ずかしくて、国際社会に言えないんじゃないですか。

H教授―まあ、新聞報道は少し誤解されそうな書き方だったけど、上の4つに加えてさらに△40%の5ケースを仮置きして、社会・経済への影響を仮分析したり、いくつかの指標で国際比較してみたりということで議論されたそうだ。
こうした分析はRITE(地球環境産業技術機構)のDNE21というモデル、国立環境研究所のAIMモデル、それに日本エネルギー経済研究所の開発したモデルの3つを用いたそうだ【10】

Aさん―あ、じゃあ、議論はそのモデルの分析結果についてだったんですね。結論は?

H教授―そんな簡単に出るわけないじゃないか。「90年比で数%、せいぜい10%減がやっと」という経産省寄りの見解と、「90年比で25%カット、さらには30%カットも可能で、限界費用等で国際的に同じ条件にした場合は概ね15%カットになる」という環境省寄りの見解の対立だったようだ。

Aさん―ふうん、ということは10から15%カットのどこかで、というところが落としどころですね。「足して2で割る」んだ。
【9】 GHGの排出量試算と長期エネルギー需給見通し
第63講(その2)「「長期エネルギー需給見通し」の陥穽」
【10】 地球温暖化影響予測のための気候モデル
(財)地球環境産業技術研究機構>統合評価モデルDNE21の概要
(独)国立環境研究所>AIMモデル(Asian Pacific Integrated Model)
地球温暖化の影響と対策効果プロジェクト(独立行政法人国立環境研究所)

H教授―バカ言っちゃいけない。2050年とか22世紀からのバックキャスティグ方式で考えなければいけないんだけど、日本は依然としてそこを考えようとしてせず、現在のトレンドからスタートさせようとしているところが問題なんだ【11】
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【11】 トレンド予測ではなく、バックキャスティング方式で
第63講(その2)「「長期エネルギー需給見通し」の陥穽」
難航する公務員改革―人事院総裁の反乱
Aさん―はは、センセイの持論ですね。
ところで公務員制度改革ももめていますね。今日明日にでも決まるかと思っていた内閣人事局構想に、人事院総裁という“渡り鳥”の役人が真っ向から抵抗しています。

H教授―まあ、どっちもどっちだろう。内閣人事局構想なんてのは、旧総務庁官僚の焼け太り構想に政治家がだまされているだけかもしれないし、人事院は権限を取られたくないから、中立性独立性を盾にとっての徹底抗戦。
つまり役所対役所の争いであって、政治家対役所という構図自体を疑うべきかもしれないぜ。

Aさん―えー、そうなんですか。
だけど、高給とって高額な退職金を何回も取るような「渡り鳥」「天下り」についても、麻生サンはなんか甘いようです。そんなの絶対、国民は許せませんよ。

H教授―まあ、キミの気持ちはわからないでもないし、ボクだって一部の「渡り鳥」や、民間への高給「天下り」についてはそう思うよ。
後者に関して、麻生サンは「押し付け的あっせんによる天下りはさせない」なんて言ってるけど、そんなもの今までの民間への天下りだって、全部民間から要請させた形をとっているんだ。ナンセンス極まりないね。

Aさん―そうなんですか。じゃ、やっぱり行き先が民間であろうが、公益法人であろうが、天下りは完全に根絶させるべきですね。

H教授―うーん、だけど役人が公益法人への天下りをやめたら、そのポストはどっかの銀行の副頭取なんかがなるだけ。つまり官からの天下りから、民からの天下りに代わるだけだ。
もうコイズミ改革の頃から、そういうのはいくつも出てきた。しかも年収2〜3千万円が低すぎるからといって、そうした民間のお偉いさんの成り手がなかなか見つからなかったらしいぜ。あまりにもバカげているじゃないか。

Aさん―じゃ、どうすればいいと?

H教授―大体、天下り、天下りっていうけど、環境省だとか地方自治体なんてのは、天下りしたら給料は大幅ダウンが普通だ。世間で批判されるような高給天下りなんてのはほんの一握りに過ぎない。まあ、他省庁のことは知らないけどね【12】
天下り役員の報酬などの中身をオープンにするとともに、生え抜きの人たちがもっと昇進できるようにすればいいだけだと思うな。
それこそ、天下り一年後に生え抜き職員による勤務実態の評価を行ってもらい、リコールも可能にするとか、いろんな工夫があると思うよ。

Aさん―センセ、センセイ。これは環境行政時評ですから、そういう話はいい加減でやめましょう。
今度の国会では何か環境省は法案を提出しているんですか。
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【12】 天下りの実態
第41講(その1)「公益法人と随意契約再論」
第53講(その1)「談合と天下り余聞」
自然公園の新たな海域保護制度を予想する
H教授化学物質審査規制法、俗称化審法は見直しについての審議会の報告書が出され、パブコメを経て昨年の暮れに答申されたんだ【13】
自然公園法の方も審議会の小委員会報告書が出され【14】、パブコメの提出期限が先日終わったばかりだけど、まだ答申されてないみたいだ【注】
週刊の環境専門誌では、今国会で化審法改正案と自然公園法改正案が出されると書いてたけど、まだ成案がまとまってないんじゃないかな。
化審法の方は次の機会にするとして、今日は久々に自然公園の話をしよう。

Aさん―近々出されそうな自然公園法の改正の目玉はなんですか。

H教授―海洋基本計画を受けての海域保護制度の充実強化だろう。日本の自然公園は海域保護が弱いというのが以前から指摘されていたんだ【15】
もちろん、それ以外のことも報告書ではいろいろ述べられていて、それらも一緒に改正されるんだろうがね。
【13】 化学物質審査規制法の見直し結果と中環審答申
EICネット国内ニュース「化審法見直し合同委員会報告書」まとまり、中環審答申へ 意見募集結果も公表
第3講(その2)「ダイオキシンの虚実」
【14】 自然公園法小委員会報告書
環境省>中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会「自然公園法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(報告書案)」に係る意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)
【注】 編集中の2月5日付で答申されました。

Aさん―確か陸域の国立公園国定公園の前面海域は、国立国定公園としての指定はできるけど、特別地域の指定はできず、規制の弱い普通地域にしかできなかったんですよね。

H教授―うん、埋立だとかの大規模な開発についての届出を義務付けているだけだ。これを何とかしたいというのが厚生省国立公園部時代からの夢だった。
だけど、壁は厚く、環境庁設立前年の1970年になってようやく海中公園地区という制度ができただけだ。
海中公園地区は現在約70地区、面積合計はわずか四千ヘクタール弱で、1地区当たり平均面積は約50ヘクタールと、まるで点のようなものなんだけどね。

Aさん―でも生物多様性の保全上で重要な、浅海域サンゴ礁藻場干潟はそれなりに国立国定公園には指定されているんでしょう?

H教授―藻場が5割、サンゴ礁は4割が指定されてはいるけど、干潟にいたってはわずか1割が指定されているにすぎない。しかも規制はきわめて緩い普通地域がほとんどだ。
つまり海域を保全するための指定でなく、陸域の国立公園の景観を守るための緩衝地帯みたいな位置づけだったんだ。
海中公園地区だけは厳しい規制が課されるが、それが浅海域に占める面積は1%以下という情けないありさまだ。

Aさん―どうしてですか。
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【15】 日本の海域保護
第70講(その2)「海洋保護区の設定、検討開始」
首相官邸>海洋基本計画について
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