環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第75講「再生するか、国立公園」
第74講「化学物質対策の新展開―化審法改正」
第73講『当たるも八卦、当たらぬも八卦、新たな海域保護制度 ―付:ダーウィン生誕200年』
第72講『2009年霧中の旅―新春呆談』
第71講『いまこそ「時のアセス」を!』
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No. 第74講「化学物質対策の新展開―化審法改正」
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Issued: 2009.03.09
H教授の環境行政時評(第74講 その2)
不況とペットボトルリサイクルの関係

Aさん―ほんと、ああいえばこういうですね。わかりました。
ところでオバマ政権がスタート1ヶ月が経ちましたけど、経済危機はなお深刻化しているみたいですねえ。

H教授―うん、もともと実体経済にくらべて信用経済は10倍くらいの規模があったらしい。それが雪崩を打って崩壊してきて、実体経済にも波及してきたんだから、もし、経済は回復するとしても何年もかかると思うよ。
日本もそうだけど、世界のGDPはどーんと下がってきているし、韓国ではウォンの価値が半減だとか、途上国ではGDPが一気に20%ダウンしたとか、空恐ろしいことが進行中だ。
90年のベルリンの壁崩壊にはじまる東側陣営の自壊は衝撃的だったが、それでも東側陣営内だけのことだった。今起きていることは全世界的なことで、衝撃度はそれ以上になるかもしれない。

Aさん―そういえば、ペットボトルの国内リサイクルがうまくいかず、中国に流れていくという話がありましたが【1】、この経済危機で、状況がガラっと変わったようですね。
【1】 ペットボトルの国内リサイクルの崩壊と中国への流出
第42講(その4)「容器リ法見直しの顛末」

H教授―うん、赤字に苦しむ自治体が回収したペットボトルを、国内リサイクルに回さずに、より高値で買ってくれる中国に流してしまうようになり、経済産業省主導で進めてきた国内リサイクル体制は崩壊に瀕していた。
ところが、テレビで見た話によると、この経済危機で中国の需要が激減してしまい日本で回収したペットボトルが中国に売れずに、宙に浮いてしまったらしい。

Aさん―ま、ある意味じゃ神風みたいなもので、よかったんじゃないですか。これで国内リサイクル体制が磐石のものになれば。

H教授―そうはいかない。すでに国内リサイクル体制は設備廃棄などの縮小過程に入っていて、回収したペットボトルの全量をリサイクルできるような状態ではないらしい。かといって、再び設備投資するのにも二の足を踏むだろう。だから自治体の清掃工場の倉庫には、ペットボトルが山積みになって増える一方ということらしい。
環境とかエネルギーとかは、市場経済だけに任すと、ろくなことにならないという見本のようなものだ。グローバル化、グローバル化といって騒いだ挙句がこれで、米国はグリーンニューディール政策でもバイアメリカン条項、つまり「米国内から調達すべし」という条項がつくなど、保護主義的な色合いが濃くなってしまった。
オバマ政権の環境シフトはじまる

Aさん―でも、オバマさんは温暖化対策には熱心みたいですね。

H教授―うん、初の外遊先のカナダで、カナダとの二国間協議の枠組みである「クリーンエネルギー対話」の創設の合意を取り付けたし、家電製品などについても厳しい省エネ基準を設けるよう、エネルギー省に命令した。
施政方針演説では、連邦レベルでのGHG規制と排出量取引にも前向きの姿勢を示している。
温暖化対策だけじゃない。UNEPの管理理事会では水銀についての排出抑制や輸出入の規制のための条約を制定することを決めたそうだ。これについてもブッシュさんは自主的な取組で十分とずうっと拒み続けてきたけど、オバマさんになって条約化を支持と劇的に変わったらしい。
生物多様性条約だって、いまだに米国は加盟してないけど、これだって変わるんじゃないかな。

Aさん―温暖化対策については、確かオバマさんの公約では「2050年にGHGの8割カット」で、「2020年には対90年比ゼロ%」でしたよね。日本の経産省や産業界と大体同じぐらいのものですから、COP15【2】に向けて日本とタッグを組むのかしら。

H教授―それはわからない。今の不況で、国内生産量などは減る一方だから、当然GHG排出量も減少する。だとすれば、途上国やEUとの国際協調を重視して、中期目標ではもっと大胆な線を打ち出す可能性が濃く、日本だけが置いておかれることは十分考えられるよ。

Aさん―オバマさんは、今度の景気対策法で、大幅な財政出動をするというのに、2013年には財政赤字を半減させるといってますよね。そんなことできるんですか。
【2】 気候変動枠組条約のCOP15
COP15 United Nations Climate Change Conference Copenhagen 2009
COP15 サイクリングツアー

H教授―イラクからの撤退で膨大な軍事費を減らし、一方じゃあ、ブッシュ時代の富裕層への減税措置をとりやめ、増税するといっている。

Aさん―そんなこと言ったって、オバマさんはアフガンには増派するんでしょう。

H教授―今はそう言っているが、本心は違うと思うな。
第二のベトナムにならないうちに、撤退することを考えていると思うよ。EUも逃げ出したがっている。過渡期の策として、日本にアフガンへの派兵協力を求めてくるかもしれないが、敢然と断った方が、オバマさんに感謝されるかもしれない。

Aさん―ふふ、だいぶ、センセイの願望というか、希望的観測が入ってそうですね。

H教授―そうかもしれない。ま、オバマさんに期待しているのは事実だが、オバマさんの政策がうまくいくかどうか、わからない。経済は上向きになるどころか、しばらくはさらに下落が続くことは間違いないだろう。オバマ人気が失速するか、国民の価値観自体が変わっていくかの競争だろう。
温暖化対策の新たな動向

Aさん―ところで温暖化対策ですが、日本の動きはどうなっているんですか。

H教授―いろんなところで、いろんな動きがあるが、政治がまったく機能していないみたいだな。

Aさん―といいますと?

H教授―中期目標を検討している官邸の懇談会【3】、絞り込めないまま、90年比で7%増から、25%減までの6案を提示した。昨年から大幅な減産が続き、何もしなくてもCO2排出が減少していくというのに、第一案の6%増だの、第二案の7%増〜2%減なんてのを選択肢に選ぶ懇談会の神経を疑いたくなるけど、6月までには麻生サンの政治決断で決まるということだ。

Aさん―えー? そもそも麻生サンがその頃までソーリでいられるんですか。
どう考えてもムリだと思いますけど。
【3】 中期目標検討委員会(地球温暖化問題に関する懇談会)
第73講(その2)「日本の中期目標をめぐって」
首相官邸「地球温暖化問題に関する懇談会 中期目標検討委員会」開催状況等

H教授―はは、まったくだね。
一方では、経産省はRPS法で電力会社に義務付けている新エネルギーの発電量を引き上げる方針という記事が出ていたし、さらには各家庭での太陽光発電に対して、「固定価格買取制度」を2010年度から導入という記事も出ていた【4】

Aさん―へえ、「固定価格買取制度」の日本への導入は、センセイの長年の主張だったですよね。やっと経産省も重い腰を上げたんだ。

H教授―うーん、それが新聞報道で見る限り、何とも中途半端な制度だ。
現在でも家庭での太陽光発電の余剰電力は、電力会社が自主的に買い取っているんだけど、その価格を倍にして、10年間の買取を義務付けるんだそうだ。
【4】 固定価格買取制度
第70講(その1)「経済危機と温暖化対策」
第68講(その2)「「低炭素社会づくり行動計画」閣議決定」

Aさん―じゃあ、小規模水力風力発電は? それに本家本元のドイツでは固定価格買取制度により、市民の共同出資による発電も盛んになったんでしょう? そういうのは対象にしないんですか。

H教授―うーん、新聞記事による限り、そういうことにはまったく触れていない。
家庭での太陽光発電の設置費用は250万円で、うち50万円は補助があり、200万円は自己負担なんだけど、自家消費による電気代の節減分と売電代で、元をとるには20数年かかるらしい。その買い取り価格が倍になれば、15年間で設置費の元がとれるというんだけどねえ。
これで一気に普及するかって言えば、ちょっと首を傾げるな。

Aさん―センセイの家はしないんですか。

H教授―我が家は中古で、家自体があと10年も持つかどうか怪しいからムリだよ。
それはともかくとして、太陽光発電装置を設置した家屋には、固定資産税の減免措置を講ずるとかすればいいと思うんだけど、政治が動かないから、ムリだろう。
キミが言った小規模水力や風力発電、太陽光発電に対しては、自治体、非営利法人や、民間企業にはNEDOの助成があるらしいんだけど、余剰電力の売電価格は、電力会社の販売価格の半分程度で、元をとるどころか、修理費にもならないらしい。だから古い小規模水力はその修理費が工面できず、廃止するところが増えてきているらしい。
こういったものも買取価格を大幅アップするとともに、税の減免措置をとれば少しは違うと思うんだけどな。

Aさん―うーん、日本版グリーンニューディール、道遠しですねえ。
環境省や他省庁の動きはどうなんですか。
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