環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
第75講「再生するか、国立公園」
第74講「化学物質対策の新展開―化審法改正」
第73講『当たるも八卦、当たらぬも八卦、新たな海域保護制度 ―付:ダーウィン生誕200年』
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No. 第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
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Issued: 2009.05.15
H教授の環境行政時評(第76講 その2)
バカンス革命?

Aさん―まあ、ご荒説はお伺いしますけど、抽象的ですね。雇用促進とか、格差是正について何か具体的な提案はないんですか。

H教授―うーん、そうだなあ。残業規制の徹底と有給休暇の義務制はどうだ。

Aさん―ん? どういうことですか。
H教授―残業は、一応は労働基準法や三六協定【4】である程度規制されていて、月100時間以上などの場合には労働基準局から是正勧告があることになっている。でも、実態はサービス残業も多いし、第一、厚生労働省の本省なんかでも月100時間は平気で残業しているんじゃないかな。
残業規制を徹底して原則残業禁止とすれば、その分失業者の雇用機会が増える。

Aさん―昔はそうだったかも知れませんが、お役所はともかく、民間では不況になってからは、残業がなくなっているそうじゃないですか。残業手当が減って生活が苦しくなったなんて話を聞きますよ。

H教授―残業手当が減った分、自由時間が増える。その分はアルバイトをしてもいいし、なにより余暇を満喫できれば十分じゃないか。

Aさん―いくら余暇があったって、オカネがなけりゃ…。
【4】 三六協定(サブロク協定)
 労働基準法第36条に基づき、時間外労働や休日労働について使用者と労働者代表(労働組合等)が書面で取り交わす協定。日本の法令上、時間外労働が許されるのは、非常事態等において行政許可を取る場合や公務員が公務のために必要な場合、または三六協定を締結して行政官庁に届け出た場合のいずれかに限られるとされる。

H教授―そんなことはない。ブランド品がほしい、いろんな電化製品がほしい、コンサートに行きたい、旅行に行きたいなんていう欲求を全部満たそうというのがそもそもムリなんだ。
ボクなんか石さえ採りに行けりゃ、あとのことは大抵ガマンできる。
カネのかからない楽しみ方を憶えるのにいいチャンスじゃないか。

Aさん―そりゃあそうでしょうけど…。
それに残業規制を厳しくしたら、もともと残業手当のない管理職だけがトクすることになるんじゃないですか。これだって格差拡大につながりますよ。

H教授―管理職だって、実質的には結構サービス残業をやっているという話もある。だから片っ端から管理職にして問題になったことだってあっただろう。それを原則禁止するとともに、非管理職の残業手当の減収に見合う程度の手当ての切り下げをすればいい。

Aさん―それだけですか。現実にはメーカーなんかでは残業がどんどん減っているという現実からすれば、たいして有効とは思えませんけど。

H教授―そこでとっておきの秘策がある。有給休暇の義務付けだ。

Aさん―そんなもの、どこでもやってますよ。有給休暇を与えなければ、労働基準法違反でしょう。

H教授―違う違う。現在の有給休暇は労働者の単なる権利だ。でも実際には100%消化しているかといえばそうじゃない。ボクの役人時代だって、風邪かなんかのときに使うくらいで、実際には大半はとれなかった。
つまり、権利じゃあダメなんだ。有給休暇は強制的に取らなきゃいけない義務にしてしまう。余分に残した場合は、年度末にその分出社拒否をしなければ、法律違反にする。

Aさん―…。

H教授―そうすれば非正規であっても雇用機会は格段に増える。
フランスを見習わなきゃいけない。大恐慌のとき、米国はニューディール政策を取ったが、フランスは強制的な休暇取得政策を取った。
今は非常時なんだ。両方やればいい。そして“働き蜂”という汚名を雪ぎ、オカネがなくても、時間的にゆとりのある生活のエンジョイの仕方を覚えるんだ。
大体どこの量販店でもコンビニでも年中無休、深夜営業や終夜営業が当たり前なんて社会は異常なんだ。深夜や休日は当番制で営業するようにすればいい。
いうならばバカンス革命だ。

Aさん―うーん。

H教授―もちろん、例外は必要だろう。だけど原則をまず明示すべきだ。
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低炭素革命(2)

Aさん―…ちょっと考えてみます。
ところで話を戻して、低炭素社会基本法の方はどうなんですか。

H教授―反対はしないが、すでに温暖化対策法があり、一方では環境基本法があって、2050年低炭素化社会に向けてのいろんな閣議決定もなされている。
だから問題はその中身だ。6月中に決めるとされている2020中期目標とセットらしいが、その中期目標がどうなるかだ。
Aさん―すでに官邸は6つの案について、検討を進めているみたいですね【5】

H教授―うん、そして経団連に代表される産業界は、第一案のGHG排出の対90年比+4%か、第二案の対90年比+1%―△5%しか受け入れられないと表明している。

Aさん―両方とも国際常識からは非常識ですよねえ。大体、+4%から△25%までって、あまりにも選択肢が広すぎるんじゃないですか。

H教授―結局、環境省と経産省の対立がそのまま持ち越したってわけだ。
【5】 低炭素社会基本法と6つの案
第73講(その2)「日本の中期目標をめぐって」
脱線―ポリティカル・アポインティーについて
Aさん―でも各大臣は総理大臣が任命するんですよね。将来は低炭素社会にするって内閣の方針が決まっているんなら、それでもって大臣は自分の省にそれをやらせなきゃいけないんじゃないですか。

H教授―日本の場合、各省の大臣はその省の役人の代弁者になってしまうんだ。
そうさせないためには、高級官僚も同時に代えなきゃいけない。米国なんかは大統領が変わるたびに、高級官僚は総とっかえになってしまう。
いわゆるポリティカル・アポインティー、つまり政治任命制度だ。

Aさん―なぜそうしないのですか。
H教授―政治任命制度がいいとは限らないよ。いい面も悪い面もあるということをまず押さえておかなきゃいけない。
ブッシュさんが大統領になった途端、京都議定書を離脱するなど、米国連邦政府の環境政策は最悪なものとなっただろう。これが政治任命制度の欠陥だ。
もっとも首長や大臣の個性が発揮されるってことは、日本の制度でだっていくらでもある。
田中長野県知事のときに脱ダムをやった【6】し、石原サンはあのとんでもない「新銀行東京」を作った【7】。「かんぽの宿」問題だって鳩山邦夫サン(総務大臣)の個人プレーだろう。
【6】 田中知事の脱ダム宣言
第33講(その2)「時評2年半を振り返る ─1」
【7】 石原都知事の新銀行東京
第63講(その1)「新銀行東京に桜は咲くか」

Aさん―そういえば、環境省は温暖化対策で原発推進に舵を切り替えたそうですね。あれも斉藤大臣の方針ですか。

H教授―うん、その話はもう少し後でしようと思うが、斉藤サンは大学での専攻は原子力工学で、原子力利用には思い入れがあるのかもしれない。
ただ、一般的には日本のシステムでは、長は「君臨すれども統治せず」で、対外的には役所の代弁者になりがちだと言うことは知っておいた方がいい。

Aさん―で、センセイの「政治任命制度」に対するご意見は?
H教授―平時には日本のような制度の方がいいのかも知れない。ただし、急速に方向転換しなければいけない時期には、日本流では対応できなくなるのも事実だし、今がまさにそのときだろう。
この緊急時に、いまだに泡瀬干潟埋立【8】だの八つ場ダムだの静岡空港だのの建設を続けているし、経済危機だ、補正予算だというと待ってましたとばかりに「三大都市圏の環状道路早期完成」だとか「第二名神高速早期完成」だとかというのが騒がれるのがその証拠だ。
このままじゃあ、「低炭素革命」なんてコトバだけが上滑りして、日本の未来があるんかなと心配してしまう。

Aさん―だから“若者が政治と将来に絶望する”んですね。
【8】 泡瀬干潟埋立問題
第71講(その2)「「時のアセス」を考える ──泡瀬干潟埋立に画期的判決」

H教授―はは、赤木智弘の『若者を見殺しにする国―私を戦争に向かわせるものは何か』(双風舎 2007年)を読んだな。でも、ボクのゼミ生たちを見ているとそんなふうじゃないけどな。キミだってそうだろう?
ボクは経済学は門外漢だから池田信夫氏の論が正しいかどうかわからない。彼の温暖化軽視論はナンセンスだと思うけど、4月19日付けのブログの記事「希望を捨てる勇気」には膨大な数のコメントが寄せられていて【9】、いろいろ考えさせられる。
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【9】 池田信夫氏のブログ記事に対する膨大な数のコメント
4月19日付けブログ記事「希望を捨てる勇気」
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