環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
第75講「再生するか、国立公園」
第74講「化学物質対策の新展開―化審法改正」
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No. 第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
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Issued: 2009.06.04
H教授の環境行政時評(第77講 その2)
破綻する医療体制と戦略なき日本社会

Aさん―うーん、そうなのか。
ところでアタシ、前から疑問に思っていることがあるんです。地域医療の崩壊だとか、患者のたらい回しだとかが騒がれているじゃないですか。少子高齢化だとか人口減少は昔から予測できていたはずだのに、どうしてそうなっちゃったんですか。

H教授―医療だけじゃないよ。例えば年金問題だってそうだ。
役人の任期はせいぜい3年。10年先、20年先のことを真剣に見通した政策なんて立てられっこない。…いや、そうでもないか。10年先、20年先のことを考えるとこうしなければいけないってことがわかっていても、できないんだよ。長期戦略がなく、考えられるのは短期戦術・政策だけだ。

Aさん―どうしてですか。
H教授―そのためのカネがないから。大蔵省──今の財務省──が認めっこない。限られたパイしかなくて、どこの役所もしゃかりきになって増やそうとするんだから、結局、シーリング体制で対前年何%の増減で横並び。
こういうことを抜本的に考えて構造改革するのが政治家の役目だけど、彼らは選挙民がコワイから選挙対策に役立つことしかしない。
今だってそうだ。そのいい例が「低炭素化社会」だと言っていいだろう【3】
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【3】 低炭素化社会
第66講(その1)「福田ビジョンの可能性と限界」
低炭素化社会―戦略の不在と高炭素化政策
Aさん―どういうことですか。

H教授―閣議決定で、2050年には60〜80%のGHGを削減すると決めたし、そのための基本法をつくろうという方向で動いてもいる【4】

Aさん―いいことじゃないですか。
【4】 低炭素社会基本法
第76講(その2)「低炭素革命(2)」

H教授―じゃあ、なんで「休日に高速道路を1,000円で乗り放題」なんてことにするんだ。それだけじゃない、盆休みや年末年始にも「1,000円乗り放題」にするなんて言い出している。
ま、ボクんとこなんかだと渋滞も少ないし、個人的にはありがたいといえばありがたいが、やっぱりヘンだろう。
しかも今度の補正予算で道路予算は大幅アップ、高速道路網の拡充なんてことを言い出している。
つまり、40年先に「低炭素化社会」というお題目を唱えながら、実際にやっていることは「高炭素化社会」づくりにしかなっていないじゃないか。

Aさん―どうしてですかねえ。

H教授―40年先のお題目のことなんて、麻生サンはじめ政治家は誰も真剣に考えていないからだ。
国民の意識は低いかもしれないが、もっと低いのが政治家だって言われたって仕方がないだろう。民意を代表するのが政治家だけど、民意と言ったって“即自的な民意”と“対自的な民意”がある。“即自的な民意”を“対自的な民意”に変えなければいけないのが本来の政治家だろうと思うけど、政治家のアタマの中には選挙のことしかないからだ。

Aさん―「即自的な民意」「対自的な民意」って、何ですか、それ?

H教授―即自的、対自的がわからないか。もともと哲学用語で辞書をみても難解なことしか書いていない。だから元の意味からはズレているかもしれない「H用語」だと思ってくれ。
即自的というのは「未熟な現在の自分」「今ある自分」ということで対自的というのは「こうありたい自分」「自分の理想とする理性的存在としての自分」ということだ。

Aさん―??
H教授―例えばキミが道路で10万円拾ったとき、瞬間的には「ラッキー!」とネコババしたい自分がいるだろう。
単にヒトが生物的存在だとしたら、それが自然だ。これが「即自的」。
だが、社会的存在、理性的存在としてのヒトは「落とした人は困っているだろうな」と思い、交番に届けるだろう。これが「対自的」だ。
「定額給付金」だとか「高速道路の料金引き下げ」を即自的には喜びはすれども、対自的にはヘンだと思うっていうようなことだ。
国民だってそうバカじゃないだろう。
だからこそ、麻生サンの支持率は一向に上がらないんだ。ウルトラCのはずだった西松建設問題にはじまる小沢一郎サン叩きにしても──真相は知らないが──、マスコミのバックアップもむなしく効果はイマイチで、むしろフレームアップだとの検察批判が強まっている【5】
名古屋市長選やさいたま市長選の結果をみても、「一度は民主党にやらせてみよう」という国民の方が多数派になって、政権交代が実現する確率は高そうだ。
一方の民主党だって、どこまで本気で低炭素化社会に向けて社会の仕組みを変えていけるかは別問題だけど。

Aさん―低炭素化社会実現に自民党以上に熱心そうにみえる民主党も、高速道路無料化を主張していますものね。
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【5】 フレームアップだとの検察批判
第75講(その1)「イチローの秘書逮捕起訴」
補正予算とキョージュのマンガ論
Aさん―ところで15兆円にのぼる補正予算が国会で決まりました【6】が、その中身も随分ずさんですねえ。ハコモノばっかりで。

H教授―ハコモノは造ったあとも維持管理に毎年膨大なカネがかかるうえ、50年先には更新か廃止かという選択を迫られる。更新にしろ廃止にしろさらに巨額のカネがかかるということをまったく考えてないみたいだねえ。

Aさん―国立メディア芸術総合センターという名前の国営マンガ喫茶117億円には思わず笑っちゃいました。麻生サンはマンガが大好きらしいですね。
【6】 補正予算の中身
第76講(その1)「低炭素革命(1)」

H教授―ボクだって大好きさ。日本のマンガはカラオケと並んで、戦後日本が世界に巨大な文化的貢献をした数少ない例だと思うよ。アメリカのコミックスとは質がまるで違い、エンターテインメントでありながら、芸術の域にまで達しているものがたくさんある。
もちろんひんしゅくを買うようなくだらないものが多いのも事実だが、手塚治虫や白土三平、つげ義春の作品などは世界に誇っていいものだと思うよ。水木しげるや永島慎二だってそうだ。最近のものだと岩明均の『寄生獣』や、山田貴敏の『Dr.コトー診療所』…。

Aさん―(遮る)ストップ! もう、マンガのことになるとすぐ熱くなるんだから。

H教授―う、まあとにかくアニメのことはよく知らないけど、マンガには日本オリジナルと言っていい素晴らしいものがあるのは確かだ。
だが、そのこととでかい公営、国営の「ハコモノ」をつくることとはまったく関係ないことだ。カネよりも知恵、ハードよりソフトだということを政治家や行政はまず肝に銘じることだ。
だいたいぬくぬくの環境の中で、ホントの偉人なんて育ちやしない。英才教育なんてたががしれているんだ。
松本清張は激貧のなか、ホウキの行商をしながら、ちびたエンピツで書いた「或る小倉日記伝」でデビューしたんだし、トキワ荘というオンボロアパートで赤貧洗うがごとしの漫画家生活を送っていたのが、その後に大マンガ家として大成した、藤子不二雄、赤塚不二夫、石森章太郎、寺田ヒロオなどだ。
古橋広之進は、戦後の貧しい日本でプールも水泳教室もない中、フジヤマのトビウオとして世界に名を馳せた。

Aさん―センセイ、脱線し過ぎです。何を時代錯誤したトンチンカンなことを言っているですか。

H教授―う、悪い、悪い。とにかくバカバカしいほどお粗末な補正予算のばらまきをしたんだ。景気対策というより選挙対策の側面の方が強いといったって言いすぎじゃないと思う。

Aさん―で、その肝心の選挙なんですけど、人気があがらないうえ、鴻池官房副長官のスキャンダルなどもあって、解散総選挙もどんどん先送りされそうですね。
厚生労働省分割論を突如言い出したかと思ったら、その舌の根も乾かぬうちにどうやら撤回しそうです。軽いというかなんと言うか…。

H教授―もともと厚生労働省にしても国土交通省にしても、複数の省庁をくっつけただけの中央省庁再編なんてのはボクも反対だった。麻生サンも当初から反対だったんならまだわかるが、そのときは何も言わずに、今頃になって言い出し、すぐに撤回するなんてねえ。
郵政民営化見直し論とまったく同じパターンだ。こんな人がソーリかと思うと情けないなあ。
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