環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
第75講「再生するか、国立公園」
第74講「化学物質対策の新展開―化審法改正」
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No. 第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
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Issued: 2009.06.04
H教授の環境行政時評(第77講 その3)
間近に迫る日本の中期目標選択とキョージュの転向
Aさん―そういえば、6月中には麻生サンは2020年中期目標について対90年比+4%から△25%までの6つの案から政治決断することになってますね。もうすぐです。いったいどうするのかしら。

H教授―さあ、経団連の+4%は論外としても△25%は選びそうもない。経済同友会の主張する△7%からよりラジカルな△15%あたりが、落としどころかもしれない【7】
もうひとつ、対90年比という90年を基準年を変え、05年を基準年とするように主張している。オバマさんが05年比で2020年△14%と言い出したので、この点については米国とタッグを組めば心強いと思っているんじゃないかな。

Aさん―そうすると対90年比+4%でも05年比では△4%となり、削減しているとみせかけられるというわけですね。

H教授―まあ、それなりの理屈がないわけじゃないが、姑息と言われても仕方がない。
一方じゃあ、産業界でも、熱心に取り組もうと意欲的な削減目標を掲げるコピー機業界のような業種や企業も出てきて、決して一枚岩じゃない。
実はね、ボクは対90年比+4%でも構わないと思い出したんだ。
【7】 2020年中期目標の政治決断
第76講(その3)「低炭素革命(3)」

Aさん―え? センセイ、今まで言ってきたこととまるで違うじゃないですか。転向したんですか。それは無責任すぎるんじゃないですか。

H教授―社会の仕組みを抜本的に変え、価値観まで変えるには、準備期間も必要だし、日本社会はそのためには10年くらいはかかるかもしれない。
だから、2020年までは準備期間だとして、同時に2030年、2040年の目標も決め、そのためにどういう政策を展開するかという具体的なロードマップをつくればいいんじゃないかな。

Aさん―そんなの空文に終わるだけじゃないですか。
H教授―だったら△25%という目標を掲げたところで同じじゃないか。京都議定書の△6%の轍を踏まない方がいい。
炭素税の導入【8】、拡大国内排出量取引制度の導入【9】自然エネルギーへの転換の具体的展開、電気料金の逓増制度の導入、低炭素化製品・商品の税制上の優遇措置と高炭素製品・商品の課税強化、吸収源整備の計画的実施、新規建築物の低炭素化義務付け等々の考えられるメニューについての具体的スケジュールとそれによる削減率等を明示して、「2020年には準備期間のため対90年比+4%に終わらざるを得ないが、2030年には△30%とする、2040年には△50%を達成する」と宣言すればいいんだ。
その目標を担保するために、目標年次に達成率が満たない場合は、未達成率1%につきGDPの0.1%を国際環境基金に拠出すると公約すればいい。2割未達成だったら10兆円近い額だ。
そうすれば2020年対90年比+4%でも、間違いなく日本の国際的評価は上がると思うよ。

Aさん―うふふ、もしそうするとすれば、経団連や経産省はどうするつもりなんでしょうね。
【8】 炭素税の導入
第35講(その2)「環境税と特会見直しと第二約束期間」
【9】 拡大国内排出量取引制度の導入
第69講(その3)「ポスト京都へ ─国内排出量取引制度開始前夜、政府のポスト京都案」

H教授―そんなこと何にも考えてないさ。2050年△60〜80%なんてお題目は自分が生きているうちの話じゃないから異議を唱えてないだけだ。
あるいはその頃には核融合とか、SFに出てくるような超画期的な発見・発明があることに、かすかな期待をかけているのかしれない。
だけどできるかどうかわからない技術革新に期待しちゃあいけない。△60〜80%と幅があるのは、下限の60%というのはそういう技術革新が皆無だったとしても、達成しなければいけない義務だと考えなくちゃいけない。
だからこそ、エネルギー総需要抑制につながるような政策を考えなきゃいけないんだ。
Aさん―その観点からみると、政府のはじめたエコポイント制度はどうですか【10】。滑り出しは上々のようですが。

H教授―今話題のエコポイント制度だって、大型家電ほどポイントが高くなっている。
つまり大型化を容認というか推進しているようなものだ。大型になればなるほど電力などの消費エネルギーは増えていく。それをエネルギー効率のアップで押さえようとしているんだけど、政策的にむしろ進めるべきは「小型化・コンパクト化」であり、「使用時間の減少」だということを、環境省も含めてどこかに置き忘れているんじゃないかと思っちゃうね。
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【10】 エコポイント制度について
第76講(その1)「低炭素革命(1)」
世界に目を転じると…

Aさん―ところで、今までは国内の話ばかりでしたが、世界にも目を向けましょうよ。ここでもいろんな動きがありました。
先進国では米国で今日、明日にでもゼネラル・モーターズ(GM)が破綻しそうですし【11】、英国でも多くの国会議員のデタラメな手当ての使い道が発覚して、国民の信用が失墜。
最大の火種はお隣の朝鮮半島で、北朝鮮の核実験、短距離ミサイル発射で、全世界に衝撃を与えましたし、一方、韓国の前大統領ノ・ムヒョンさんが自殺し、韓国政界も波乱含みです。
【11】 GMの経営破綻
米国ビッグスリーの一角を占めた大手自動車メーカーGMは、脱稿直後の6月1日に、いわゆる“Chapter 11”と呼ばれる米連邦破産法第11章(=日本の民事再生法に相当)の適用をニューヨーク市の破産裁判所に正式に申請した。
今後8月末を目標に、新会社への資産譲渡など破産手続の完了をめざして、販売規模を縮小した「新生GM」として再起を図ることになる。
北朝鮮の核実験
H教授―それだけじゃない、ネパールやスリランカといったアジアの小国も激動の真っ最中だ。まあ、ここは政治時評じゃないからパスした方がいいのかも知れないが、北朝鮮の核実験について、一言だけ言っておこう。
ぼくは北朝鮮の金王朝体制は大嫌いだし、核実験や核保有にも当然反対だし、世界の国民が反対するのは当然だと思う。
だが、したり顔で「世界の平和への恐怖」だとか「安保理決議違反だ」とかなんだとか言って、核保有国の政府首脳やその核の傘に入っている日本政府首脳が非難する倫理的資格はないと思うな。そんなものはエゴイズムに過ぎない。
「米国は核廃絶に向けて行動する道義的責任を有する」と言ったオバマさんは、そのことを自覚し、メッセージを発したんだからエライよ。

Aさん―随分オバマさん贔屓ですね。麻生サンに爪の垢でも煎じて飲めと言いたげだわ。
でも、ネパールにスリランカって?
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