環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
第75講「再生するか、国立公園」
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No. 第78講『日本政府、「中期目標」決定』
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Issued: 2009.07.15
H教授の環境行政時評(第78講 その1)
M・ジャクソンとアメリカンドリーム

Aさん―センセイ、M・ジャクソンが急死しましたね。ワタシの母が嘆き悲しんでました。

H教授―お母さんには悪いが、ボクはビートルズ世代だから、M・ジャクソンのことはほとんど知らないし、あまり興味もない。ただ、面白いと思ったのは、彼以前のアメリカンドリームに乗った黒人シンガーは、ナット・キング・コールにしてもベラフォンテにしても、常識的なジェントルマンだった──あるいはそう装っていたよね。
それに比べると、彼はあまりに破天荒な生き様で、世間の顰蹙を買うことも多かった。だいたい、なんであんなに整形に次ぐ整形で顔を変えなきゃならなかったんだ。まるでわからない。

Aさん―え〜、ひどいなあ。マイケル・ファンからの苦情が殺到しますよ。
センセイは“破天荒”って言いますけど、いつまでも子どもの心を失わない純真さがマイケルの素晴らしさじゃないですか。

H教授―まあ、ぼくの偏見だ。彼の孤独な死と、荒涼とした遺書は、アメリカンドリームの持つ危険な側面を現しているかのようだし、もしかするとアメリカンドリーム自体の変質を意味しているのかもしれないな。
 
選挙の夏近し
Aさん―また、お得意の、意味あり気に思わせるだけの、どうでもいいテキトーなセリフが出たわ(キョージュ、にやっとする)。
それはともかくとして、都議会選挙もはじまりました。解散総選挙も近そうですし、いよいよ夏、政治の季節ですね。
千葉市長選では民主党の無名候補が快勝しました。横須賀市長選でもコイズミさんまでが応援した与野党相乗り候補に、新人無名候補がマサカの勝利をおさめました。自公与党の苦戦やサプライズが続いています。やはり自公政権はもう持たないんじゃないですか。

H教授―そのことと民主党が勝利するかどうかはまた別問題。今日行われた兵庫県知事選は民主党は独自候補を立てず与野党相乗りだし、静岡県知事選は候補一本化に失敗するし、もう一つ、しゃきっと日本を変えるって姿勢が見えない。
それに決定的な汚点にまではなりそうにないが、鳩山サンの献金疑惑も表面化しているし、厚労省女性局長の逮捕にまで発展した、障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用した事件では、民主党の大幹部であるI氏の名前も取り沙汰されている。だから、これから解散総選挙まで何が起こるかわからない。
ただ、何が起きたとしても麻生サンの続投はないだろうという気がする。
ま、ボク個人としては、麻生サンはお粗末には違いないが、愛すべきキャラクターだと思っている。
もっと恐いのは橋下=東国原新党なんてのができて、それが一挙に台風の目になって、そちらと組んだところが勝利しちゃうってことだ。そうすれば「お笑い無責任内閣」。
ま、万一、そんなポピュリスト政権ができても、すぐに幻滅の嵐が襲うだろうけどね。

Aさん―ポピュリスト?
H教授―大衆迎合ということだ。いわば前講で言った「即自的な民意」をおだてあげるような政権だ【1】

Aさん―でもどうして“幻滅の嵐”が襲うのですか?

H教授―税金はできるだけやすく、福祉や行政サービスはできるだけ手厚く、しかも公共事業で道路も鉄道も空港も整備なんてのはできるわけもない。破綻するに決まってるじゃないか。
ま、「お笑い無責任内閣」ができるくらいなら、まだいいが、そのあとはもっと恐いのは、××のようなファシストまがいが政権をとったりすることだ。
もうこれで下らないおしゃべりは終わりにしよう。“環境行政時評”なんだから。
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【1】 即時的な民意
第77講(その2)「低炭素化社会―戦略の不在と高炭素化政策」
「中期目標」と「低炭素社会」ビジョンの変遷

Aさん―ぷっ、下らないおしゃべりをしているのは、さっきからセンセイですよ。
さて、6月の最大のトピックは、麻生サンがとうとう「中期目標」を発表したことですね。大体前講で予想した通りで、「足して二で割る」を地で行ったかのように、対90年比で△8%でした【2】

H教授―うん、6つの案の真ん中が対90年比△7%だったけど、それに1%上乗せして、それを対05年比として表わすとキリがいい△15%になるそうだ。
05年比でいうとEUは△14%らしいから、それを上回っていると言いたかったのかもしれない。対90年比でいうと米国は±0%で、EUは△20%だけど、米国の数字は△28%ぐらいまでの可変性をもっているという話だし、EUも条件付で△30%までの隠し球を持っている。
それはともかく、対90年比がこれまでの国際標準だったのを、麻生サンはなんの臆面もなく05年比にしちゃったんだけど、そのことを正面切って批判したメディアはどこもない。それどころか、当たり前のように追随しちゃって(対05年比で)△15%というのはあきれちゃったな。
ボクは意地でも対90年比を使わせてもらうけどね。

Aさん―ま、いずれにせよ、これで先進国の「中期目標」の提案はほぼ出揃ったわけですね。
それにしても随分紆余曲折がありましたよねえ。一度きちんと振り返っておきましょうか。
【2】 政府の中期目標
第77講(その3)「間近に迫る日本の中期目標選択とキョージュの転向」
H教授―そうだな。ポスト京都の議論は以前から行われていたけど、日本で大きく話題になったのは一昨年5月のことだ。当時の安倍ソーリが国際交流会議「アジアの未来」晩餐会で「美しい星への誘い」として演説したのが「美しい星50」。2050年までには全世界の人為的なGHG排出を現在の半分にしようと訴えた【3】
で、それからまもなくして「21世紀環境立国戦略」を閣議決定。ここでも2050全球GHG半減を訴えていた【4】

Aさん―産業界や経済産業省はそれを飲んだんですね。

H教授―だって、45年も先の未来のお話だもん。
ただ、今後5年、10年先の具体的定量的な政策には、一切触れてなかったのが特徴的だった。
当然、「中期目標」もパスだし、第一、2050年に全球半減はいいけど、日本はどの程度カットするかにも触れていなかった。

Aさん―そしてその数ヵ月後、参院選惨敗。それでも続投宣言した安倍さんですが、ある日、唐突に政権を投げ出しちゃったんですね。
【3】 安倍ソーリによる「美しい星50」の提唱
第53講(その1)「「美しい星50」戦略を祝す」
【4】 「21世紀環境立国戦略」の閣議決定
第54講(その4)「「21世紀環境立国戦略」再説」

H教授―うん、あとを継いだのは福田サン。福田サンもそれなりに温暖化対策には熱心だったようで、昨春には産業界の反対を押し切って、国内排出量取引制度の試行の導入の方向性を打ち出した【5】
また、経済産業省が「中長期エネルギー需給見通し」(→63講その2)で牽制球を放ったにもかかわらず、洞爺湖サミットを控えて、「福田ビジョン」を公表。これをその後「低炭素社会づくり行動計画」として閣議決定した【6】
そこでは2050年には日本は現状より60〜80%カットと明言していた。そして税制の環境シフトも行うとしていた。

Aさん―60〜80%カットは、多くの先進国ですでに言明していた削減の範囲と軌を一にするものでしたけど、それなりに2050年の日本を「低炭素社会」にするという意志を鮮明にしたんじゃないですか。

H教授―だけど、同時に多くの先進諸国は、すでにそのための中期目標としての2020年のGHG排出量の目標を明言していたけれども、それには一切触れていなかった。
触れようと思ったって、何にも決まってなかったからだけどね。

Aさん―そしてその方向性すら打ち出せないまま、昨秋、福田内閣もまた政権を投げ出しちゃいました。センセイ、怒ってましたねえ。
でも、福田サン、いいときにやめたんじゃないですか。そのあとリーマンブラザース破綻に始まる経済危機が日本を直撃したけど、やめなかったら火達磨になってましたよね。
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【5】 国内排出量取引制度の試行導入
第62講(その2)「国内排出量取引制度の検討開始へ」
第72講(その3)「自然エネルギー復興に向けて ──拡大PPP論」
【6】 洞爺湖サミットと、「福田ビジョン」「低炭素社会づくり行動計画」の策定
第66講(その1)「福田ビジョンの可能性と限界」
第68講(その2)「「低炭素社会づくり行動計画」閣議決定」
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