環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
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No. 第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
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Issued: 2009.07.30
H教授の環境行政時評(第79講 その2)
自公政権の落日―新たな政策形成回路創出に向けて

Aさん―あ、ぼちぼち政治の話題にいきましょうか。都議選では自民党は歴史的な大惨敗。自民党内はその責任問題で一時分裂騒ぎかと思われましたが、もはやそういうエネルギーも喪失したのか、そのまま7月21日、衆院を解散、総選挙に突入してしまいました。8月18日公示で30日投開票だそうです。
麻生内閣も自民党も支持率が下がる一方の中での解散ですが、このまま自民党は下野しそうな雰囲気ですね。

H教授―ボクの偏見かもしれないが、今年に入って検察とメディアはつるんでるんじゃないかと思うほど、民主党バッシングに走った。もちろん、民主党の側に、それだけの隙というか弱みもあったということなんだけど、いろんな首長戦から都議選まで民意はほとんどぶれず、民主党に軍配を挙げた。
これからまだ一月以上あるから、この延長線上で自民党の歴史的な惨敗、民主党圧勝に終わるのか、それとも意外なほど自民党が善戦して、民主党辛勝という結果になるかはわからないが、自公で過半数ということはありそうにないね。

Aさん―ということは、ようやく本当の二大政党時代になったということですか。

H教授―もちろんその可能性はある。社民党も姿を消し、二大政党+共産、公明という時代が来て、選挙ごとに政権交代の可能性があるということだってないとは言えない。だけど、別の可能性だってあると思う。

Aさん―別の可能性って?

H教授―自民党が惨敗すれば、一気にいくつかの小政党に分裂してしまうかもしれない。
それに民主党だって一枚岩でいられないかもしれないよ。つまり政界再編成みたいなことが生じる可能性は小さくないと思う。

Aさん―また勝手なこと言って。なにか根拠はあるんですか。

H教授―民主党のマニフェストを見る限り、やれそうにない、あるいはやるべきでない“バラマキ”がいっぱいある。また一方では、例えば「GHG 2020年△25%」という温暖化対策を言っておきながら、高速道路の無料化だとか、ガソリンの暫定税率廃止【3】などというまるっきり辻褄の合わないことを言っている。

Aさん―そういえば国土交通省はコイズミ時代に高速道路整備計画9,342キロ以外の新規着工はいったん白紙に返したはずだのに、この4月には新たに4路線の「新直轄方式」での高速道路建設を決めました。また、便益が小さいとして着工済み国道18路線についても、この3月に凍結したはずなのに、今月に入ってうち17路線で工事再開が決まったそうですね。

H教授―うん、つまり政府与党は総選挙対策としてバラマキを再開、コイズミ改革の事実上の全否定に踏み込んだ。これに対して民主党の地方議員にもこのバラマキ再開を支持する声が大きい。

Aさん―地方の住民が望むからという理由ですね。

H教授―地方の住民に道路をほしいかと聞けばほしいと答えるだろう。でも、そのオカネを、道路も含めて自分たちで自由に使ってもいいよといえば、また違った答えが出たかもしれないじゃないか。
ま、いずれにしても戦後日本を、よい意味でも悪い意味でも主導してきた自民党政治が、今、音を立てて崩壊している。決して麻生サンというタマが悪かったわけじゃあないんだ。「おもしろうて やがて悲しき 鵜飼かな」って芭蕉の句が思い浮かぶな。
【3】 ガソリン暫定税率廃止
第61講(その2)「ガソリン税暫定税率延長をめぐる混迷」

Aさん―さっきのバラマキの話は地方向けですよね。つまり自民党も民主党も都会派と地方派に再編成されるかもしれないということですか。

H教授―いや、そうとは言えない。むしろ政治家と役所との関係、役割分担をどう考えるかということでいくつもの分岐が出てくるということだろう。

Aさん―え? どういうことですか。

H教授―右肩上がりに成長していく中で、パイをどう再配分するかというのが経済成長期の政策だよね。財務省、つまり旧大蔵省の予算編成権を軸に、基本的にはそのための具体的な政策形成も政策間調整も役所に丸投げしていた。
政治家は基本的にどれかの省庁の応援団になる他は、自分の選挙区や自分の支持母体に有利になるように圧力をかけるだけ。
これが前講で言ったように、全省庁一律対前年何%という横並び主義がはびこるようになった元凶だ。高度成長期にはそれでもよかったんだが…。

Aさん―そんなこと言ったって、バブルがはじけてもう20年近いんですよ。

H教授―うん、キミが言った通りで、バブル崩壊以降はそうはいかなくなったにもかかわらず、借金を増やすことによって見かけ上のパイを膨らましてきて、同じやり方でやろうとしてきた。

Aさん―それが行き詰ったからコイズミ改革じゃなかったんですか。

H教授―コイズミ改革は、パイがなくなってきたことをなんとかせねばという問題意識の下に、福祉などを切り捨て、公共事業も予算を減らしていき、バラマキを小さくした。
だが、郵政民営化以外の政策形成や政策間調整は今まで通り、基本的には役所に委ねた。しかも米国流のマネー資本主義というか新自由主義の跋扈も許した。その結果が格差拡大だし、一昨年の参院選での与党敗北以来、コイズミ改革の流れは止まった。昨秋のリーマン・ブラザース破綻以降は、コイズミ改革はもはや禁句のようになった。
そして、日本政治に閉塞感が蔓延するようになったんだ。

Aさん―つまりバラマキ路線も、コイズミ改革も同じ穴の狢。政策形成と政策間調整を役所任せにしていることこそがその閉塞感の元凶だと、ようやく国民が気付いたということですか。

H教授―うん、だからこそ、世論は民主党の過剰なまでの役所叩き、役人バッシング路線に拍手喝采したんだと思うな。決して民主党のバラマキ路線を支持しているわけじゃなく、役所と一体になった自民党政権に心底から嫌気がさしたんだと思う。
橋下人気の秘密もそうだよね。役人叩きだ。
だけど、民主党内閣が自らの手でシビアな政策形成や政策間調整ができるかといえば、それはまた別問題。つまり第一に役人との距離をどうとるか、役人をどう使いこなすか、第二にマニフェストに掲げてきた無茶なバラマキを引っ込めるか、新たに借金してでもやろうとするか、そして第三に外交政策も含めた日本社会の長期的なビジョンをどう考えるかで、民主党内で分岐が起こる可能性は十分あると思うな。

Aさん―ま、センセイはもともと二大政党制には批判的だったですものね【4】
じゃあセンセイは、多分誕生するであろう民主党政権はどうしたらいいと思いますか。

H教授―まず第一に日本社会の現実性のある長期ビジョンをつくることだと思う。
少子高齢化の進行、返すあてのない借金の山、破綻確実な年金財政、膨大なハコモノの維持費とその更新、BRICsの成長と輸入大国化等々のシビアな現実に立脚した未来図をどこまで描けるかだ。
土台、人口が減少していくのに、GDPは増え続けていくなんて願望というか妄想をまず捨てなければいけない。国全体としてのマイナス成長は必至だが、幸福度や生き甲斐度は増えるという具体的なビジョンを描くことが先決だ。

Aさん―うへえ、それこそ大変そう。

H教授―で、次に、各省庁部局に、そのビジョン実現のための個別具体的な政策を代替案を含めて出させる。

Aさん―つまり政策形成は役人に委ねて選択権だけは持つというわけですね。

H教授―ただし、政策間調整は役所に一切任せないし、間違っても足して二で割るような調整はやらないことが肝要だ。

Aさん―ということは政策立案は各省、つまり行政の仕事で、立法の仕事ではないということですか。

H教授―(うっと詰まって)い、いや。各党に議員数に応じた数百人規模の政策秘書団を公費で設置させる。各党はそこで各省庁部局の政策を徹底的に検証して、自らの党の政策を決め、国会の場で立法の役割を果たすとともに、与党は総理総裁を通して政府全体を、そして各省庁大臣や副大臣等を通して各省庁をコントロールする。それが議院内閣制ということだ。

Aさん―うふ、なんだか苦しそうですね。
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【4】 二大政党制に批判的なキョージュ
第19講(その2)「キョージュの参院戦総括 ―2大政党制の陥穽」
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