環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
トップページへ
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
第76講「低炭素革命雑感 ─附:漂着ごみの行方」
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. 第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
page 3/4  12
3
4
Issued: 2009.07.30
H教授の環境行政時評(第79講 その3)
太陽光発電普及策の検証

H教授―そんなことはないぞ。じゃあ、具体的な政策論にいこうか。
例えば、太陽光発電の普及策として、経済産業省は余剰電力を電力会社が従来の倍で買い取るように義務付けるようだし、それだけじゃなく設置者への補助金も復活させた。
太陽光だけでなく、他の自然エネルギーもそうすべきだという話はあるが、それはひとまず置いておこう。
一方では、自治体でも太陽光発電設置のための補助金制度を設けているところがあり、太陽光発電ブームに乗って予算は一気にパンクしそうだ。現にパンクした自治体も続出している。自治体はどうすればいい?

Aさん―そりゃあ、太陽光発電を普及させることが温暖化対策としていいことなんだから、国は補正予算を自治体に手当てしてでも、普及に全力を尽くすべきじゃないですか。

H教授―そんなことすればいくらカネがあっても足りなくなる。そういうのをバラマキというんだ。
地域によっては国、都道府県、市区町村の三つから補助がもらえるところもあるそうなんだけど、それでも初期投資にはウン百万円必要だ。で、10年か15年で元が取れるという話なんだけど、何だか少しおかしいと思わないか。

Aさん―どこがおかしいんですか。

H教授―つまりウン百万円を用意できる人たちへの優遇策じゃないか。格差拡大につながるとは思わないか。

Aさん―そりゃあ、まあ、そうかもしれませんが…。じゃあ、センセイはどうすればいいと?

H教授―自治体、特に市区町村レベルでは独自でできる温暖化対策はほとんどない。そんなときに割高な太陽光発電への補助策はパフォーマンスとしての意味はあった。
でも国が倍額の買取を電力会社に義務付けるんなら、自治体は、そして国も、太陽光発電設備設置のための補助金などやめて、そのカネを別の方面に使うべきだ。

Aさん―でも、それだったら普及に弾みがつかないんじゃないですか。

H教授―その代わりに、貧しい人でも設置できるよう、無利子、あるいは低利子で太陽光発電設備の資金を融資するようにすればいいじゃないか。10年か15年で元がとれるということは、設置後も設置前と同じように毎月の電力料金相当額を10年か15年払い続ければ返済できちゃうということだろう。補助金をなくしたって、それが15年か20年払い続けることになるだけで、新たな負担が生じるわけじゃない。
 ページトップ

G8とMEF

Aさん―…ご荒説はうかがいました。
ところで国際的な動きはどうなんですか。

H教授―今月(7月)上旬、イタリアのラクイラで行われたG8と新興国も含めたG20とも言うべき「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」(MEF)だけど、なんとなく前途に不吉な予感が漂った。

Aさん―え、どういうことですか。
H教授―G8の国々は、なんとしても新興国にポスト京都で定量的な削減の枠組みに加わらせねばいけないし、そのための前提として2050年全球でのGHG排出量半減に同意させるべく、先進国はよりラジカルな削減案を出さなければならないというので「先進国全体で90年比または最近の複数年比で80%またはそれ以上削減する」というG8首脳宣言を出した【5】

Aさん―麻生サンの中期目標の前提は、2050年に日本の排出量は60〜80%カットじゃなかったんですか。

H教授―そう、中期目標を出して一月も経ってないというのに、その前提が否定され、無理矢理80%を飲まされた。ま、ボクは90%でも当然だと思うがね。
それはともかく、そうまでして首脳宣言を出したというのに、MEFは2050年全球での排出量半減に同意しなかったんだ。
もっともMEF会合では中国の胡錦濤主席はウイグル暴動で慌てて帰国するというハプニングが起きた。少数民族問題はこれからも中国のアキレス腱になりそうな気がするな。

Aさん―うーん、ホントにCOP15でポスト京都がまとまるのかしら。
明るい話はなかったんですか。
【5】 MEF(イタリア・ラクイラ)
G8ラクイラ・サミット(概要)
第78講(その2)「今後の見通し」

H教授―工業化以前の水準より気温上昇は2℃を越えないという目標が合意されたことかな。IPCC第四次報告書では政治的な配慮で2〜3℃としていたんだ。すでに0.7度上昇しているから、あと1度ちょっとだ。でもねえ、2℃上昇ということは、やがてほとんどのサンゴが白化することを容認【6】するということでもある。悲しいねえ。
 ページトップ
page 3/4  12
3
4
前のページへ 次のページへ

【6】 サンゴの白化
第69講(その4)「サンゴ礁の危機」
Copyright (C) 2004 EIC NET. All rights reserved.