環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
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No. 第80講「政権交代と環境政策」
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Issued: 2009.09.11
H教授の環境行政時評(第80講 その1)
衆院選―民主党圧勝、自民党惨敗

Aさん―センセイ、山が動きました! ついに政権交代が実現することになりました。

H教授―うん、すごかったねえ。郵政選挙のちょうど裏返し、いやそれ以上だった。下馬評どおり民主は過半数をはるかに越える300議席超えの圧勝で、社民・国民新党を合わせるとほぼ議席数の3分の2だ。
逆に自公は壊滅的な敗北。派閥の領袖、現職閣僚や党三役も、小選挙区では無名の刺客相手にぼろぼろと落ちていき、まるで無血革命が起きたかのようだったね。
真夜中までテレビをみていて、すっかり寝不足になっちゃったよ。
それにしても小沢サンの辣腕ぶりは聞きしにまさるものがあるねえ。

Aさん―森サン、福田サンはなんとか踏ん張って低空飛行で当選しましたが、海部サンはあえなく落選。それに公明党は党首や幹事長までが落選してしまいました。

H教授―小泉チルドレンがほぼ姿を消し、小沢ガールズをはじめとする小沢チルドレンがどっと出てきた。議員の平均年齢も52歳だって。昔だったら、ボクぐらいの年齢だと政治家の間ではハナ垂れ小僧扱いだったけど、もうそういう時代は終わり、世代交代は一段と進んだようだな。あ、自民党は小泉チルドレンの大量落選で、そうでもないか。
小選挙区制のマジック
Aさん―なんでこうなったんですかねえ。

H教授―その前に議席数に比例するほど、票差はあいてないことを確認しておこう。要は10人のうち2人が、自民党政治に愛想をつかし、受け皿として民主党に投票したんだ。つまり自民党に投票した人と民主党に投票した人の比が6:4から4:6になった。

Aさん―え? たった2人?。

H教授―うん、10人中の比率だけどね。ただ、これが小選挙区制の恐ろしいところだ。前回の衆院選ではコイズミフィーバーで自民圧勝。その2年後の参院戦では民主党が勝利して、野党連合で過半数を獲得。今回はその流れがもっと大きくなったというわけだ。

Aさん―10人中2人が自民党を見放したわけはなんですか。
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「官僚主導政治」とはなにか?
H教授―麻生サンは「責任力」と言ったけど、選挙の洗礼を受けずに安倍、福田、麻生とコロコロ政権が変わったんだぜ、それで「責任力」ったって、まるでマンガじゃないか。
格差が拡大し、リーマン破綻以降の未曾有の不況の中で、もう自民党の個々の政策というより、「自民党的な政治」そのものに見切りがつけられたんだろう。

Aさん―民主党が言う「官僚主導政治」ですね。でも、官僚主導政治ってなんのことだかよくわからないわ。

H教授―例えば法律を作るのは立法、つまり政治家の役割のはずだけど、実際は政府提案、つまり役所が法案を作って国会に提出することがほとんどだ。

Aさん―でも議員立法というのもあるじゃないですか。

H教授―あれだって、実は黒子の省庁がいることがほとんどだ。ま、米国なんかとはそもそも議員のスタッフの数が違うんだから、しょうがない面もあるんだけどね。

Aさん―確かに法案を一から書き上げるのは無理かもしれませんけど、骨子だけでも箇条書きにして、それを役人が法案として仕上げていくっていうふうにはできないんですか。

H教授―だから、それを民主党はやろうとしているんだろう。

Aさん―これまでだって、やろうと思えばできたんじゃないんですか。
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官僚主導の限界―縦割りとボトムアップ
H教授―日本の場合、中央官庁での仕事のやり方は基本的にボトムアップなんだ。所掌業務の改善にしても、新たな施策立案にしても、予算要求にしても、自分たちでまず考えるところからスタートする。
さまざまな業務の分担は省庁部局から課室係まで細分されていて、もっとも下のレベルは「係」。国の場合は、課長補佐がいっぱいいて、それぞれがひとつの係をみるということが多い。つまり課長補佐―係長―係員の3,4人が一つのチームを作って、一定の業務を分担しているし、そのチームの予算というのを持っている。これが仕事の最小単位といっていいだろう。
ここが、ルーチンの仕事をこなしつつ、必要と思われる施策について新たなアイデアを考えるんだ。「事務連絡」や「通知」といったチーム限りでできるものから、法律改正や新法のような上の了解や他省庁との調整を必要とするものまでいろんなレベルのものがあるが、基本的にはこのチームが考え、ボトムアップしていくんだ。

Aさん―上司とか政治家から“これこれこのような法律をつくれ”というような指示はないんですか。

H教授―ぼくの知っている限りではなかった。あったとしても抽象的なものだったり、スポットだけだったりして、体系だったものはまずないと思う。
だって、自分の抱えている分野の業務について限界や問題点を一番わかっているのはやはりこの一番下の「チーム」なんだもん。
「なんか法律改正のタマはないか」としょっちゅうせっつく上司はいたけどね。

Aさん―聞いている限りでは、それが「官僚主導」ということで、打破しなければいけないことだとは思えないんですが。むしろ役人にやる気がある証拠じゃないですか。

H教授―そりゃそうなんだけど、大きな施策を打ち出そうとすると、日本の場合、極端な縦割りの世界だから、たいてい別のチームの業務とぶつかって厄介な調整をしなければならない。
その調整もチームの仕事だけど、もろにぶつかってしまう場合、普通は断念せざるを得ない。なんとか調整がつく場合というのは、相手方の顔も一定程度立てるということだから、大胆な改革というのはできないことが多いし、そもそもがそういうシステムだと、どうせできやしないからと、自主規制しがちになってしまう。
そもそもそういう新たな施策を行ったり、それどころかその可能性を調査するための予算だって、シーリング体制の中では確保することが難しい。
つまり抜本的な改正は、現行の強固な縦割り体制の下、ボトムアップでやろうというのがもともと無理なんだ。

Aさん―「シーリング体制」ってなんですか? それと、政治主導というのもあったんじゃないですか。国鉄の民営化とか、郵政の民営化…。

H教授―シーリングっていうのは、"ceiling"、つまり「天井を設ける」という意味だ。概算要求で金額等に上限の基準を設定して、各省横並びで対前年度何%まで膨らませて予算要求していいかというガイドラインが示される。
政治主導は、もちろんあったさ。でもそれは一内閣でいくつかというくらい限定されたものにならざるを得なかったんだ。逆にいうと、どの内閣も政治課題としてやらねばならない政策以外は、基本的に官同士──強いて言うとそれに族議員同士──の調整に委ねていたんだ。
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