環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
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No. 第80講「政権交代と環境政策」
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Issued: 2009.09.11
H教授の環境行政時評(第80講 その2)
予算編成と官僚主導

H教授―それから予算だ。予算の仕組みは以前に話したことがあるけど【1】、もう一度おさらいしておこう。
5月くらいから、それぞれの課内の係単位で、来年度予算要求のタマを考える。それを課内、局内とだんだん上に上げ、絞っていく。
一方、夏前には大蔵省──今じゃ財務省だけど──、そこから来年度予算のシーリング(概算要求基準)が示される。
そのシーリングの枠内で、8月はじめには省庁ごとの予算要求案をまとめ、与党の部会の了解をとりつけて、9月早々に財務省に提出するんだ。
そして財務省が基本的な予算編成を行い、政治家はそれにちょこっと注文をつけるだけ。

Aさん―この予算要求もボトムアップなんですね。

H教授―うん、そして各課の各係すべてがなんらかの予算を持っているから、それがいわば既得権になって、あとはスジのいい世間受けしそうな新規予算をどれだけオンできるかということになる。
予算要求で重点事項というのを各省は毎年記者発表しているが、もっともらしいキャッチフレーズごとに、全予算をいくつかのグループに分けているだけなんだ。
つまりこういう縦割り体制下では、総花的にならざるを得ない。「選択と集中」なんて、夢のまた夢なんだ。

Aさん―で、各省の予算要求は今年も出揃ったんですか。

H教授―うん、各省とも財務省に提出したと新聞に出ていた。8月末には衆院選があって、下馬評では政権交代の可能性が強いとわかっていても、やっちゃうんだね。こういうのも官僚主導と言われる原因だろう。
9月1日に強引に発足させ、民主党を怒らせた消費者庁の方は政治主導だろうけど。
その予算なんだけど、各省、もっというと各部局、各課室、そして各係ごとのベースの予算額は決まっているし、例えば公共事業に関して言えば各省ごとのシェアもほとんど決まっていて、大きく変わることはなかった。
組織定員要求に関しても、各省ごとにスクラップアンドビルドするのが原則になっている。

Aさん―つまり時代の流れに即応して変わるようなシステムじゃないんですね。

H教授―うん、これが右肩上がりの時代だったら、パイの大きくなった分を時代が要求する分野に充てればよかったんだが、もう右肩上がりの時代はとうに終わったんだ。
つまり一言で言えば制度疲労を起こしていたんだけど、それを自民党政権はついに変えられなかった。
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【1】 予算の仕組み
第19講(その3)「環境役人生態学―休暇考」
誰のための政治か ─ダブルシンクの怪と天下り

Aさん―ふうん、あと民主党が、官僚主導の政治というのは国民のためでなく、官僚のためにやっているんだ、天下りを見よ!なんて言ってますが、実際のところは、どうなんですか。

H教授―はは、厳しいねえ。省益あって国益なしというわけだね。
あのね、役人というのは、省のため、もっというと、自分の属しているシマのために尽くすことが、国民のためにもなるんだと本気で信じることができるんだ。
この辺りの心理の機微はG・オーウェルの『1984年』を読んでみればいい。この『1984年』の「ダブルシンク ─二重思考」を地でいっているといっていいかもしれない。

Aさん―『1984』ですか? 『1Q84』なら知っているんだけどなあ…。
じゃあ、天下りはどうなんですか。
H教授―今まで何度か天下りに関しても話したはずだよ【2】。25年勤務50歳で大半のキャリア役人は後進に道を譲る不文律があった。そのためには天下りは不可欠だったし、人件費総体の抑制にも役立った。
それに天下りと言ったって、ぼくらレンジャーの世界では収入が下がるのが当たり前だし、自治体だって三役クラスはいざ知らず、ほとんどが収入は大幅ダウンだ。
こういう構造がここ10年すごい勢いで壊れていっているのに、今頃言われてもなあという気がする。
ついでに言っておくと、こういう天下りや談合といったシステムは、マスコミも含め、大企業もみんな同じ構造で、業界によっては今も健在だ。

Aさん―そりゃあそうかもしれませんが、今だってワタリを繰り返してとんでもない高給を取っている元高級官僚がいるじゃないですか。

H教授―それは事実だし、ボクだってけしからんと思うよ。でも、多分、彼らは彼らなりに「天下りすることが国民のため」と思い込んでいるんだろう。自分の大学時代の同級生で銀行の頭取になった奴より、オレの方がアタマもよかったのに、収入が少ないのはけしからん! と思い込んでいる輩もいるかもしれないぜ。
あと一つだけ言っておくといわゆる特権官僚にしても個人差が大きい。
天下り先でなんの仕事もせず、ふんぞりかえって皆の顰蹙を買うような下司もいれば、一生懸命仕事をし、分け隔てなく部下と接し、部下から慕われている人もいるんだ。
【2】 天下りについて
第53講(その1)「談合と天下り余聞」
第45講(その2)「25年50歳体制の崩壊」

Aさん―あ、そうか。大学のキョージュもそうですね。
研究にも教育にも熱心でダンディな教授もいれば、(チラッとキョージュをみて)研究業績ゼロで学生をいびるだけの、いけすかないメタボなエロ親父もいますもんね。

H教授―…。

Aさん―それにそういう天下りできるような財団を作ることが、現役役人の仕事だって聞いたこともありますよ。

H教授―そりゃあ、ちょっとオーバーだが、その場合でもそういう団体を作ることが、国民のためでもあると本気で思い込めるんだ。ダブルシンクの極致といっていいかもしれない。
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民主党政権は官僚主導政治を打破できるか ─国家戦略局構想
Aさん―じゃあ、民主党はその何十年と続いてきたシステムをガラッと変えるというんですね。どういうふうにするんですか。

H教授―政府に100人の政治家を送り込むと言っているけど、今だって6〜70人送っているはずだから、数の問題じゃないと思う。
各省の大臣というのは内閣の方針をその省で徹底させるために就いたはずなんだけど、実際には内閣の方針というのがこれまでは曖昧模糊としていたから、役人のご進講を受けて、その省の省益の代弁者となってしまっていたんだ。

Aさん―つまり内閣の方針というのを、きちんと作っておかなきゃいけないということですね。あと、事務次官会議を廃止すると新聞に出てましたが。

H教授―まあ、廃止したっていいけど、ほとんど意味がないと思うな。

Aさん―どうしてですか。

H教授―だって、事務次官会議自体が、各省間の調整が終わった案件しか扱わないんだもん。

Aさん―え? 調整をする場じゃないんですか。

H教授―だから日本はボトムアップの文化なんだってば。調整は下々の方でやるんだ。調整がつかなかった案件は、いつまで経ったって陽の目を見ない。それこそコイズミさんのような<変人>が介入しない限りは。

Aさん―じゃあ、やはり本丸はさっき言った「内閣の方針」を具現化することと、首相直属の「国家戦略局」なんですね。ここで予算や政策の骨格をつくり、その具体化を各省にやらせるというわけだ。その構成はどうするんですか。

H教授―さあなあ。政治家に民間のシンクタンク、NGO、学者…。役人もある程度入れなきゃあ仕事は進まないと思うが、その場合は出身省庁の省益の代弁者にならないよう、片道キップで来させるなどの工夫が必要だろう。問題はトップに誰を据えるかだね。
実は自公政権だって、近年は経済財政諮問会議を設けたりして、予算編成の方針を出していたりするんだけど、結局のところ事務局が原案を作っちゃうから、やはり官僚主導と言われても仕方がなかったんだ。
事務局に原案を作らせない予算、政策の骨格作りが果たして可能かどうかが問われていると言っていいだろう。
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