環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
第77講「後退する氷河と増大する氷河湖決壊の危機」
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No. 第80講「政権交代と環境政策」
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Issued: 2009.09.11
H教授の環境行政時評(第80講 その3)
政権移行期間の課題―マニフェストをどうするか

Aさん―でもうまくいくのかしら。今後のスケジュールはどうなっているんですか。

H教授―首班指名は9月16日。それまでにやることは、社民党・国民新党との連立協議だ。

Aさん―民主党は単独過半数だったんでしょう。なぜ連立内閣を目指すんですか。

H教授―参院は民主だけでは過半数に届かない。連立を組んでおかないと安定的な政権運営ができないんだ。ここで政策協議をやるんだけど、同時にもう一方で、まずマニフェストをどうするかの方針を固めておくことだと思う。

Aさん―どうするかって国民との約束なんだから、やらなきゃいけないに決まっているでしょう。あ、そうか、財源がないんですね。

H教授―それ以前に、あのマニフェストにはバラマキみたいなのがいっぱいあったり、他の政策と整合性がとれていないものだとか、いろいろ問題がある。
新聞で読んだんだけど、新聞社の世論調査では、目玉の「子ども手当て」にしたって「高速道路無料化」にしたって、おかしいと思っている人がいっぱいいるそうだ。民主党に投票した人でも、前者で賛成43%、反対37%と拮抗しているし、後者なんかだと賛成が27%なのに対して反対が56%にも達している。
つまり、民主党の政策に賛成したから投票したんじゃなくて、とにかく政権交代を望んだんだと言えるだろう。
だったら、マニフェストの修正をやったっておかしくないだろう。

Aさん―ダメです。それは選挙民への裏切りです。ま、財源的にできないんだったら仕方がないけど。

H教授―(苦笑して)わかった、わかった。だったら、一応、マニフェストを予算に落とし込むことを最優先に考えるとしよう。
それの具体化のためにも国家戦略局が必要になる。
ただ、国家戦略局を作るには法律改正が必要だから、とりあえず規則レベルで設置が可能な「国家戦略室」を立ち上げることとして、そのための組織の構想を今から考えておかなきゃいけない。
一方、すでに出されている各省の来年度予算要求を白紙に戻してやりなおさせること、また、成立した補正予算だって、執行を相当部分凍結して組み替える方針を明らかにしなければいけないだろう。でなければ財源だってどうにもならない。
すでに例の“国営マンガ喫茶”【3】は凍結・廃止する方針のようだし、不要不急とみなした1兆円の基金も凍結・廃止するとのことだ。
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【3】 例の“国営マンガ喫茶”
第77講(その2)「補正予算とキョージュのマンガ論」
予算編成は可能か ─財源論の陥穽

Aさん―でもそれだと年内予算編成は難しいんじゃないですか。
混乱を防ぐためにもとりあえず一年間は従来路線で行って、その間にじっくりとマニフェスト実行の準備を進めたらいいんじゃないかしら。

H教授―だってマニフェストには来年度から実施と書いてあるんだぜ。それに来年夏には参院選がある。だから、マニフェストで掲げたことは、強引にでもそれまでに実施に移さなければ、政権が持たなくなる可能性だってある。

Aさん―でも国家戦略室で予算編成の骨格がすぐにできるのかしら。仮にできたとしても、各省がそれを踏まえて予算要求の作業をするなんて時間的に不可能じゃないですか。
サボタージュだってするかもしれないし。

H教授―これだけ選挙で大勝すればサボタージュはないだろう。
すでにマニフェストが出されているんだ。ま、ボク自身はこのマニフェストにはさっき言ったように、不満は山ほどあるし、そもそも現実的に可能な20年先30年先のシビアなビジョンをまず作るべきだと思うんだけど【4】、それはさておいて、マニフェストをブレークダウンして予算の骨格をつくればいいんだから、それほど難しくはないと思う。各省の方だって、もう内々には作業を始めていると思うよ。

Aさん―そんなこと言ったって、財源はどうするんですか。

H教授―マニフェストの実現のために来年度に必要な予算は、とりあえずは7兆円ほどだそうだ。
義務的経費以外の予算をいったんチャラにしたら、7兆円ぐらいは簡単に出てくると思うよ。

Aさん―じゃあ、問題はないというんですか。

H教授―そんなことはないさ。もしそういう風にチャラにされたら、仕事も予算もなくなってしまう組織が──大は省庁まるごとから、小は一つの係まで──いっぱい出てくるし、そういうところは、それをチャラにすることが、どういう大きな弊害になるかを必死になって訴えると思うよ。
そうしたものを全部却下すれば、役人の意欲は一気に失われかねない。それで生活している企業や団体も多いし、実際に国民生活に欠かせない予算だってあるだろうから、そう簡単にチャラにできないだろう。
これをどう捌くか、捌けるかだ。
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【4】 20〜30年先のシビアなビジョン
第79講(その2)「…日本社会の現実性のある長期ビジョンをつくること…」
■ムダな仕事、マイナスの仕事

Aさん―天下り役人のために、十数兆円の予算を支出しているなんて民主党は言ってますけど、どうなんでしょうか。

H教授―それはあまりにもオーバーで、ためにする物言いだ。
もともと必要な仕事をさせるためにつくった団体で、民間にやらせればかえって高くつくケースだっていっぱいある。
ムダ遣いなんていうけど、まったくのムダ遣いなんてのは、天下り役人のうちでカスのような連中の人件費分くらいだと思うよ。

Aさん―え? ムダ遣いがいっぱいあるんじゃないですか。

H教授―優先順位が低い仕事や、マイナスになる仕事はいっぱいあるだろう。だけど100%ムダな仕事なんてあるわけがない。

Aさん―なんですって! 「マイナスな仕事」って、ムダな仕事に決まっているじゃないですか。

H教授―必ずしもそうとは言えない。例えば、泡瀬干潟の埋立【5】は、トータルではものすごくマイナスな事業だと思うけど、微視的にみれば地域の雇用を生み出したり、隣接する港の浚渫土砂の処理に役立ったりということはある。その意味では、まったくムダな仕事というわけでもないだろうし、まったく無駄な仕事というのもないといえる。
【5】 泡瀬干潟の埋立
第71講(その2)「「時のアセス」を考える ──泡瀬干潟埋立に画期的判決」

Aさん―なんか屁理屈みたいですね…。まあじゃあそれはそういうことにして、まずはまったくムダではないけれど、トータルでマイナスな事業はやめなきゃいけないということですかね。

H教授―うん、例えば八ツ場ダムとか川辺川ダム【6】、泡瀬干潟埋立というのが典型だと思う。ただ、その一方で、地方分権とか地方主権とかいうのが流行になっている。

Aさん―それがどうかしたんですか。

H教授―例えば、泡瀬干潟埋立は、民主党中央では一期工事は中断、二期は廃止と言っているが、そこの首長も、今回当選した当該選挙区の民主党の議員も一期は推進と言っている。
八ツ場ダムだって、当初猛反対した地元も今となっては推進を言っているし、首長もそう言っている。こういうのをどう捌くか、捌けるかだ。
淀川水系4ダム【7】だってそうだ。
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【6】 川辺川ダム
第69講(その2)「脱ダムの流れ本格化 ―川辺川、淀川水系」
第5講(その2)「川辺川ダム高裁判決」
【7】 淀川水系4ダム
第71講(その3)「追い詰められる国交省 ──大戸川ダムと道路整備中期計画」
第69講(その2)「脱ダムの流れ本格化 ―川辺川、淀川水系」
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