環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
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No. 第81講「鳩山革命の行方は?」
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Issued: 2009.10.13
H教授の環境行政時評(第81講 その1)
理工系ソーリ誕生

Aさん―センセイ、鳩山内閣が成立して2週間が過ぎました。センセイの評価はいかがですか。

H教授―鳩山サンは工学博士号を持つ研究者出身の総理で、専門は経営工学。一方、副総理の菅サンも応用物理出身だ。政府のトップ2人を理工・技術系出身者が占めたというのは敗戦以降はじめて、いや、ひょっとしたら明治維新以降、はじめてじゃないかな。

Aさん―はあ? また、そんなどうでもいいことを。

H教授―いや、どうでもいいことじゃない。これまで理系離れを嘆いていろんな施策を打つとしてきたけど、例えば公務員のI種試験の合格採用者の過半は理工系でありながら、事務次官・局長といった役人のトップは8割以上を文系、そしてその大半を法律事務官が占めている。こんなバカなことをやっていれば、理系離れが起こるのは当然だろう。
こんな国は世界で日本だけだ。

Aさん―法律事務官が優遇されているのはなぜなんですか。

H教授―法的根拠はまったくないんだ。

Aさん―じゃ単なる慣習ですか。

H教授―というより既得権擁護以外の何ものでもない。このことは以前にも論じたことがある【1】
公式見解では、適材適所を貫いたら結果的にこうなってしまったということになるんだろうが、そんなばかげたフィクションを信じる役人はひとりとして存在していない。
今や総理、副総理が技術系出身者になったんだから、具体的な人事はともかくとして、少なくとも理工系技官が割を食うことのないよう指示を出すことは可能だろう。
今までは、そうした理工系技官の不満をなだめるために、特定部局の行政の大半の実質的権限を技官に与え、技官独立王国化を容認してきた。例えば国土交通省の河川局や道路局がそうだし、八ツ場ダムの問題だって、そうした技官の独立王国化と無関係ではない。
これからは、理工的なバックグラウンドと思考法を持った役人が、専門バカにならずに、広い視野と大局観を持って、いろんな分野で活躍することが必要だと思う。
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【1】 慣習? いや、既得権擁護以外のなにものでもない
第21講(その3)「環境行政の人的側面」
公務員制度、抜本的改革か?

Aさん―そういえば鳩山内閣は公務員の勧奨退職を禁止する方針だそうですね。

H教授―うん、天下りの禁止とあいまって、役人の多くは定年までいることになるし、定年延長だって視野に入れなければいけない。
天下りができないとなれば、同期でも成績によって随分待遇に差が出ることは覚悟しなければいけないし、年下の上司に仕える事だって出てくるかもしれない。
25年・50歳で勇退・天下りするという構造が人件費の抑制に役立ってきたんだが、それができないとなれば、現在の等級号俸制やI種、II種、III種という公務員制度の全面的な見直しも必要になるだろう。公務員にスト権を付与するということも視野に入ってきているんじゃないかな。
いずれにしろ、年功序列型の人事システムの元になっていた勧奨退職がなくなるんだから、今後は、厳しい評価型の人事システムに移行せざるを得ないだろうな。

Aさん―うーん、そういう意味で、公務員制度をめぐっては、大改革というか明治以来はじめての革命がはじまるかどうかということかもしれませんが、政策はどうなんですか。

H教授―その話はもう少しあとでやろう。公務員制度同様、さまざまな役所のシステムが今や急激な勢いで変わっている。
例えば予算。単年度予算システムを複数年予算に変えるだとか、年度間繰越をOKにするとか、以前の常識じゃあ考えられなかったことを鳩山内閣はマジメに議論し始めた。
年度内に予算を使い切るのが当たり前とか、多額の予算を取ってきた役人が優秀だとかいう、そういうこれまでの常識を覆そうとしているようにも思えるぐらいだ。

Aさん―民主党は議員立法を原則禁止するという方針を打ち出しました。
政府と党の二重権力化を防ぐとのことです。

H教授―ボクは鳩山内閣の目指す方向を基本的には評価しているんだけど、評価できないものもあって、その一つがこの問題だ。三権分立の大原則を否定しているようなもので、バカバカしいとしか言いようがない。立法府というのは政府の出した法律案を審議するだけなのか。おまけに党議拘束を敷いているから、議会はまったくの形式だけになってしまう。
あとひとつ、鳩山内閣は官僚の記者会見の禁止ということを言い出した。さすがに強い反発の中で事実上撤回したが、これもトンデモない話だ。
そんなことより役所とマスコミとの馴れ合い・癒着の象徴のような記者クラブ制度を廃止すると言っていたのに、いまだにやっていない。
新聞・テレビは絶対この話は書かないから、声を大にして言わせて貰うけど、記者クラブ制度こそがどの新聞もテレビ局も個性のないつまらないものにしている元凶だし、情報版独禁法違反の最たるものだ。

Aさん―(あやすように)はいはい、わかりました。(小さく)センセイ、よっぽどマスコミには恨みがあるのね。
さ、ぼちぼち現内閣の政策の話にいきましょう。センセイの評価はどうですか。
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■鳩山イニシアティブ
H教授―内閣発足後2週間だけど、総じてよくやっていると思う。
前講でボクが期待したように、鳩山サンは「鳩山イニシアティブ」と称して、GHGの2020年対90年比25%カットを、条件付きで国際的に宣言した【2】し、途上国援助を惜しまないと言っている。

Aさん―で、鳩山サンはそのための政策を総動員するといったんですね。 
【2】 新政権による2020年中期目標
第80講(その3)「政権交代と環境政策」

H教授―うん、これまで産業界とタッグマッチを組んで、CO2対策に消極的だった経済産業省も、もう抵抗はできないだろう。
温暖化対策税の創設や国内排出量取引の前倒し、太陽光発電に限定されていた自然エネルギー固定価格買取制度の大幅な拡充、オフセット・クレジット制度の環境省と一体となっての拡大等、今必死でメニューの検討、そしてそのための予算要求の再提出の準備をしていると思うよ【3】

Aさん―でも、ついこの間まで官僚たちは不可能と言ってたじゃないですか。

H教授―かつて、「攘夷」を唱えていた連中は、ある日あっさりと開国派になってしまった。「鬼畜米英」と叫んでいた連中は、敗戦でさっさと親米派に転向した。それと同じだろう。
そういう意味では、今革命が起きていると言っても過言ではない。

Aさん―でもサボタージュしませんか? だっていつ自民党政権に戻るかわからないじゃないですか。

H教授―その可能性はごく低いと思うよ。

Aさん―どうしてですか。

H教授―総裁戦で谷垣サンが選ばれたけど、それの対抗馬だった河野サンとはコイズミ改革に対する評価が正反対だ。これじゃ一つの党としての結集軸がなく、あまりにも迫力不足だ。
あともうひとつ最大の理由は、今までの自公政権の闇がオープンにされる可能性が高いことだ。
【3】 温暖化対策税、国内排出権取引、固定価格買取制度、オフセットクレジット等に関する話題
第35講(その2)「環境税と特会見直しと第二約束期間」
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」
第70講(その1)「経済危機と温暖化対策」
第74講(その3)「乱立するクレジット」

Aさん―闇って?

H教授―いっぱいあるじゃないか。米国との核をめぐる密約問題、官邸・外務省の機密費問題、警察・検察のウラガネ問題、そして何よりも公共事業を巡る利権絡みのドロドロした話がいっぱいあると思うよ。JR事故報告書の漏洩問題だって、明るみに出たのは鳩山内閣成立後だ。
こんな政と官が癒着した怪しげな話がボロボロ表に出てくれば、とてもじゃないけど、自民党政権に戻るとは思えない。

Aさん―また話が戻りますけど、その温暖化対策に関連して、一方じゃあ、高速道路無料化とガソリンの暫定税率廃止をマニフェストにあげているのはどうかと思いますね。

H教授―高速道路の無料化は、一般道の渋滞緩和につながるし、一方じゃエコカーも増えるだろうから、CO2は増えないと言っているけど、そりゃあ“三百代言”というものだろう。フェリーやJRなど、公共交通にとっての経営的なダメージも大きいし、クルマ社会化を推進するようなものは政策として誤っていると思うよ。
ま、暫定税率廃止の方は、スジ論としてはその通りだから、温暖化対策税の創設と同時にというのなら構わないと思うけどね。
Aさん―日本の2020の対90年比25%カットは、世界が足並みを揃えられればという条件付きですから、COP15がどうなるかですね【4】

H教授―その条件というか前提は、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意がなされること」なんだ。ただ、草稿にはあったし、新聞などでは予定稿でそう書いているけど、実際の国連での演説ではこの部分は聞き取れなかったという噂もある。
本当かどうか知らないし、本当だったら日本はただの「お人よし」になって国益を損なうんじゃないかと懸念する人もいるだろうが、ボクはひとつくらい国益を無視して人類益に殉ずる国があってもいいじゃないかと思ってるから、気にしていない。
【4】 COP15の話題
第79講(その4)「夏の課題、秋からの見所」

Aさん―そりゃあ、センセイは老い先短いからそれでいいでしょうけど…。
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鳩山内閣の試金石
H教授―じゃ、いいじゃないか(突き放す)。
で、COP15の前の試金石が10月15日に設定された各省の概算要求の中身だろう。各大臣の官僚への統制力がそれでわかる。
またそれに先行して、補正予算の組み換えを図るべく、執行停止・凍結に大号令をかけ、その額も3〜4兆円を期待していたらしいけど、2兆円がせいぜいだろうという話もある。

Aさん―財源論ですか、前途多難ですねえ。
ところで、鳩山サンは訪米、そして国連と外交デビューをしましたが、オバマさんは親米の麻生サンにはなかなか会わなかったのに、インド洋給油の継続をしないと表明し、米国とは距離をとる鳩山サンにはすぐに会いましたね。

H教授―そりゃあ、いつも尻尾を振るのがわかっているやつよりも、いつ離れていくかわからないやつの方に気を遣うのは当たり前だろう。

Aさん―つまりポチの時代は終わったと。

H教授―うん、これからはミオの時代だ。

Aさん―ミオ? ああ、センセイんちの老いた、ちょっと鈍なデブのメス猫ですね【5】。くっだらない。

H教授―そういうなよ。先日、臼井義人サンが遭難しただろう?

Aさん―あ、あの『クレヨンしんちゃん』の。

H教授―うん、ボクはたまに『クレヨンしんちゃん』を見ていたから、臼井サンの無事を祈っていたんだけど、残念な結果に終わってしまった。ご冥福をお祈りしよう。
そのあと、久々に『13年後のクレヨンしんちゃん』という2006年に書かれてウェブで公開されているオマージュ作品を読んだんだ。
で…ミオはもう14歳だと思うと、ぞっとしてきた。

Aさん―まあ、気持ちはわかりますけど、ここは公的なウェブですから、私情を差し挟むのはやめましょう。

H教授―うるさい。ボクは“私情原理主義”なんだ!
【5】 ポチの時代からミオの時代へ
第46講(その3)

Aさん―その駄洒落が言いたかったのか…。
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