環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
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No. 第81講「鳩山革命の行方は?」
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Issued: 2009.10.13
H教授の環境行政時評(第81講 その2)
鳩山内閣と公共事業

Aさん―さ、本線に戻りますよ。鳩山内閣ですが、八ツ場ダムや川辺川ダム【6】でも随分がんばってますね。

H教授―うん、川辺川ダムは地元に強力な反対派がいて、知事も白紙撤回を主張していたから問題は少ないだろうが、八ツ場ダムは地元住民も首長も建設中止という方針に猛反発している。

Aさん―八ツ場ダムの必要性はどうなんですか。
【6】 八ツ場ダムや川辺川ダム
第5講(その2)「川辺川ダム高裁判決」
第69講(その2)「脱ダムの流れ本格化 ―川辺川、淀川水系」

H教授―うーん、もともとの計画が生まれた何十年も昔だったら効果はあったろうが、今では社会状況もすっかり変わっている。
首都圏の水も今ではあまり気味で、水需要もなく利水面からの必要性は乏しい。治水も、いろんなダムが各地にできた今となっては、その効果はほとんどないと国土交通省の内部資料でも言っているらしい。
はっきり言って、建設業や関連業界への経済効果、雇用効果だけと言っていいだろう。

Aさん―つまり景気対策。ダムは要らないがダム事業は必要だってわけですね。

H教授―地元はもともと何十年間も反対し続けてきた。それを脅したりすかしたり、札束で頬っぺたをひっぱたいたりして、ようやく反対の矛を収め、ダム建設を前提としてのまちづくりを考え出した矢先のことだから、まあ、気持ちはわからないわけではない。
でも、そこは「かつて建設に猛反対していた自分たちが正しかったんだ、最後に正義は勝つ」と思ってくれればいいんだけどねえ。補償法案も作ると言っていることだし。

Aさん―補償法案って?

H教授―そもそも動き始めた大型公共事業をやめるための仕組みがないんだ。
ダムの建設を中止しても住民の生活再建のための事業は継続しなければいけないんだが、現在の法律ではダム建設を中止すれば、ダム建設の代替として進めてきた生活再建のための事業もやめなきゃいけない。だから、鳩山政権では、生活再建事業を国の責任として続けるための法律を作ると言っている。「時のアセス法」のようなものと言っていいかも知れない【7】

Aさん―八ツ場ダムや川辺川ダムはともかくとして、あとの大型公共事業については、民主党本部は全面見直しを主張していますが、民主党の地方議員は必ずしもそうじゃなく、公共事業ウェルカムのところも多いんじゃないですか。

H教授―うん、ダムや道路は要らないとしても、ダム事業や道路事業は必要だと考えているんだろう。でも、それは従来システムを前提とした話。
ダムとか道路といった使い道の決まった補助金でなく、使い道の自由なオカネだったら地元住民が本当にダムや道路を選ぶかどうかはわからない。
つまり民主党中央の言う「官僚主導政治の打破」が、地方議員レベルでは浸透していないってことだ。だから首長戦では自民党に相乗りしてまで与党になりたがる。

Aさん―与党になれば、自分たちの政策を実現しやすくなるからじゃないですか。

H教授―だから今となっては政策じゃないんだってば。強いて言えば、政策以前の「構え」のようなものだ。
自治体にしても、縦割り構造は国と同じだし、各部局一律○%カットとなりがちで、メリハリはつけにくいから、結局は、国と同じ「官僚主導」になってしまう。
つまり「政策」は、形式上は議会や有識者、市民の意見を聞いて決めたことになっているが、原案は役人がつくり、役人同士が調整して実質的に決めてしまう。
もはや、有権者のかなりはそういうやり方に飽き飽きした結果の民主党勝利だってことがわかっていないんだね。
だから堺市長選でも、無風だと思われていた相乗りの現役市長が、橋下サンに仕えた府官僚上がりに惨敗しちゃったんだ。ボクに言わせればどっちもどっちだと思うがね。

Aさん―ということは、地域主権とは言っても、首長・地方議員主権じゃないということですね。
【7】 時のアセス
第71講(その3)「「時のアセス」を考える ──泡瀬干潟埋立に画期的判決」

H教授―うん、従来型のやり方が通用しなくなったんだ。だから地域主権の担い手は不可視の住民ということになる。
鳩山内閣は大型公共事業はいったんストップし、精査すると言っている。そのとき不可視の住民が見えるようになるか、どうかだ。
田中康夫チャンが長野の知事になり、「脱ダム宣言」はじめ、従来の行政の常識をひっくり返すようなことを随分やった。だが、康夫チャンは早すぎた鳩山サンだったみたいで、県民の意識がそれに追いつかず、ついに退陣。
そのあと登場した村井知事は、以前のやり方に逆戻りして、淺川ダム計画も復活、民主党県連もそれを支持しているが、さて鳩山内閣はどうするのかねえ。
また、大戸川ダム以外の事業続行になった淀川水系4ダムはどうするのか…【8】

Aさん―へえ、本当に課題は山積しているんだ。

H教授―もともと国土交通省の河川局は、技官の独立王国と言われてきて、とにかく治水のためにすべての河川に堤防を築きあげ、築き終えると今度はより安全にと嵩上げを図り、さらにダムを延々と造り続けてきたところだ。
逆に言うと、彼ら砂防技官に広い識見と大局観を持たせるような世界を知らしめないまま、河川局という中に閉じ込めてしまったから、政治屋と結びついて、そういう発想にならざるを得なかった。
ここから脱皮できるかどうかだな。
【8】 事業続行となった大戸川ダム以外の淀川水系4ダムの行方
第68講(その2)「淀川水系4ダムと地方自治体」

Aさん泡瀬干潟もありますよねえ【9】

H教授―うん、こちらは港湾局サイド。河川か港湾かという差だけで、あとはまったく同じ構図だ。
民主党のつくった「沖縄ビジョン」では、泡瀬干潟埋立は一期は中断、二期は中止を謳っているのに、地元選出の民主党議員が一期工事推進と言っている。このネジレをどうするかだ。

Aさん―それだけではありません。新聞報道によると、高速道路についても前政権がどさくさ紛れに6区間の4車線化を決め、補正予算で3千億円もの予算を付けましたが、それを全面凍結する方針を固めたそうですよ。
【9】 泡瀬干潟
第71講(その2)「「時のアセス」を考える ──泡瀬干潟埋立に画期的判決」

H教授―6区間の整備着工を決めたのは国土開発幹線自動車道建設会議、略して「国幹会議」と言われるものだ。たった1時間半審議しただけで決めたというから、形式だけの追認のための会議と言われてもしかたがない。
ま、今までの政府の審議会というのは、こういうタイプのものが大半なんだけどね。
民主党議員もこの国幹会議のメンバーに入っていて、「一方的な説明だけでは判断のしようがない」と異論を述べたらしいが、結局のところ計画案には反対しなかった。
前原サンはこの「国幹会議」の廃止を打ち出し、着工の決定ルールを根底から見直すとしている。
ちょっと前の新聞では、民主党議員も参加しての会議で決めたことの責任は民主党が引き受けざるを得ないと言っていて、何だか高速道路整備だけは容認するのかと思ったけど、方針変更したようだ。

Aさん―あと空港整備特別会計、いわゆる「空港特会」も廃止の方針だそうです。

H教授―うん空港特会は、高額の空港使用料や着陸料、それに航空機燃料税相当分の一般会計からの繰入れ分などを原資として、直轄空港の整備や地方空港への助成を行ってきたんだ。
このために赤字空港をどんどん作ってきた。一方、高額の使用料、着陸料、燃料税に加えて、赤字路線も政治的に飛ばさざるを得ないから、日航は今深刻な経営危機に陥ってしまった。
赤字増大を必然にしてしまう構造的な部分にメスを入れるというんだから、大いに期待できるね。

Aさん―神戸空港【10】やできたばかりの静岡空港にとってはショックでしょうね。でも、やっぱり赤字空港なんか作っちゃあいけないですよね。

H教授―いやボクは必ずしもそうは思わない。神戸空港や静岡空港は不要だと思うが、高速道路も新幹線もないようなところに空港を造り、赤字路線を運行することはあってもいいと思う。離島だってそうだね。高速道路だって、赤字覚悟で造るところがあってもいい。

Aさん―その場合、高速道路にしても、空港にしても、なんらかの整備に関する優先度の基準のようなルールが必要でしょう。

H教授―うん、皆が納得しうるようなルールがつくれるかだね。そのためには首長や民主党の地方議員の意識が変わらなければいけないし、赤字必至の公共事業の場合は、受益者、つまり住民自体が、例え一戸あたり1万円でも自己負担するような覚悟もいると思うよ。

Aさん―うーん、ところで環境問題についての民主党のマニフェストは温暖化と大型の公共事業だけなんですか。
【10】 神戸空港
第6講(その4)「コーベ空港・断章」

H教授―いやそんなことはない。マニフェストの要約版では温暖化や八ツ場ダムのことしか言ってないけど、実際に「民主党政策集INDEX 2009」には、それこそ総花的に色々書いてある【11】
新法だけで「化学物質政策基本法(仮称)」「シックハウス対策2法」「殺虫剤規制2法」「石綿対策総合的推進法」の制定を目指すとしている。
また、生物多様性COP10が来年日本で開かれるんだけど、「湿地保全法」制定だとか、干潟・サンゴ礁の保全を言っているし、SEAの義務化も言っている。アセス法の見直しも開始したところだし、この面でも期待したいんだが…【12】

Aさん―だが?

H教授―ま、本当に全部出来るかどうかは、マンパワーのことを考えただけでも疑問だけど。

Aさん―じゃあ、いずにせよ、鳩山内閣の前途は大いに期待できますね。
【11】 民主党政策集INDEX 2009
「民主党政策集INDEX 2009」
【12】 SEAやアセス法についての話題
第17講「SEAの必要性・可能性 ―付:S湾アセス秘話」
第2講(その3)「環境アセスメント私論」
H教授―さあ、それはどうかわからない。というか人気の高さ、期待の大きさとは裏腹に危険いっぱいの前途だと思うよ。
今挙げたような問題のほか、子ども手当て、農家戸別補償、まるで徳政令のような中小企業の銀行への借金返済猶予問題、嘉手納基地普天間飛行場の辺野古移設問題【13】、郵政民営化見直し問題等々難しい課題がいっぱいあるし、医療・年金・雇用だって依然として大問題。
どれかひとつでも一歩処理を間違えれば、内閣の人気が急降下どころか内閣が空中分解しかねない。その場合は、民主党分裂だとか政界再編ということもでてきかねないと思うなあ。

Aさん―じゃあ、案外1〜2年で自民党政権に戻る可能性もあるんじゃないですか。

H教授―ただ、“ルビコンは渡ってしまった”んだ。万一、自民党政権に戻ることになっても、かつてのような「官僚主導の政治」を行うことはできないだろう。
ま、それでも別の形での「官僚主導」というか「官僚共導」のやり方があるんじゃないかとは思うけどね。ボトムアップで今までやってきたということは、それだけ日本の役人のやる気を示していて、これを捨てさせてはいけないと思う。

Aさん―センセイの十八番。「盥の水と共に赤子を流すな」ですね。

H教授―いずれにせよ、経産省、国土交通省、農水省、外務省、法務省、防衛省といった省庁は、従来の発想から180度の変換を強いられて大変だろうが、環境省はこれまでやりたくても他省庁との関係でやれなかったことができるかもしれないと大張り切りじゃないかな。
【13】 辺野古移設問題
第21講(その1)「時評2−普天間飛行場の辺野古沖移設を巡って」
第26講(その1)「辺野古沖埋立ての新転回」

Aさん―さあ、どうでしょうか。案外過労死寸前の状態で、鳩山サンを恨んでいるかもしれませんよ(笑)。
ところで民主党はパートナーの国民新党や社民党とうまくやっていけるんですかね。

H教授―さあ、とりあえず来年の参院選までの連立だろうが、これから一波乱も二波乱もありそうな気がする。民主党は原発推進の立場だけど、社民党は反対だとか、真っ向から相反する政策を掲げていることもあるもんね。

Aさん―さて、ここまでは政局がらみの話ばかりでしたが、それ以外の環境ネタも少し紹介してください。
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