環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
第78講『日本政府、「中期目標」決定』
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No. 第81講「鳩山革命の行方は?」
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Issued: 2009.10.13
H教授の環境行政時評(第81講 その3)
最新環境ネタ─PM2.5、健康に関する水質環境基準、小笠原自然遺産、ツキノワグマ事故

H教授―ひとつはPM2.5と言われる粒径2.5ミクロン以下の大気中に浮遊する「微小粒子状物質」【14】大気環境基準を9月9日付けで告示したことだ。
年平均値で評価する長期基準と日平均値で評価する短期基準の2つだ。米国の基準値が採用され、より厳しいWHOの大気質ガイドラインの値は採用されなかった。

Aさん―達成方策はどうするんですか。

H教授―答申では排出実態把握や科学的知見の蓄積がなお十分でないと指摘している。ふつう、環境基準を設定するときは連動して規制強化が図られるが、今回はパス。測定体制の整備や排出インベントリの作成を先行するとのことだ。
パブコメは1万通を越したそうだが、多分に組織的なものじゃないかな。

Aさん―これは大気環境基準ですが、水質の方もいろいろと検討されているそうですね。
【14】 PM2.5
第10講(その1)「ディーゼル排ガス規制強化― トピック・1」
第49講(その1)「PM2.5の環境基準制定へ動き出す?」
「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について」(答申)(案)(PDF)
H教授―うん、中央環境審議会水質部会で健康に関する環境基準の見直しについての第二次報告が先月発表された。新規に健康保護に関する水質環境基準項目として1.4-ジオキサンの追加、また地下水環境基準として1,2-ジクロロエチレン、塩化ビニルモノマー、1.4-ジオキサンの3項目の追加を目指しているようだ【15】

Aさん―あと小笠原諸島世界自然遺産登録も前進したそうですね。

H教授―9月25日付けで政府は世界遺産委員会事務局に推薦書(暫定版)を提出した。
硫黄島を含む小笠原諸島の陸域6千ha、海域1千haを推薦区域としている。
あとは管理計画をとりまとめ、推薦書の正式版を提出、IUCNによる現地調査を経て、平成23年夏の登録を目指すそうだ【16】

Aさん―うまくいくといいですね。自然遺産はこれで打ち切りですか。

H教授―政府としては琉球奄美も狙っているようだが、世界遺産委員会のハードルは高いようだ。やんばる国立公園化とかいろいろ構想はあるようだが、泡瀬のような開発計画との調整もあって、まだ相当の時間がかかるんじゃないかな。
【15】 健康に関する環境基準の見直し論議
水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第2次報告)(PDF)
【16】 小笠原諸島の世界遺産登録に向けて
「小笠原諸島」を世界遺産一覧表に記載するための推薦書(暫定版)の提出について(お知らせ)
第64講(その4)「小笠原の旅」

Aさん―あと、不幸な事故もありました。乗鞍岳の山頂付近でツキノワグマが出現、人を襲い射殺されました。

H教授―ああ、あれはショックだった。
乗鞍スカイラインの終点を畳平というんだけど、ぼくが平湯でレンジャーとして赴任していたときに開通したんだ。だから畳平には何十回も行った。とても見晴らしのいいところで、あんなところに臆病なはずのツキノワグマが出てきて、人を襲うなんてのはちょっと信じられなかった。
一日も早く専門家による再発防止策、それもハードでなくソフトな対策を検討してほしいね。
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廃消火器と適正処理困難物の謎

Aさん―ほかにも残念なことがありました。古い消火器の爆発事故が相次いで起きました。
廃消火器の廃棄物処理法上の処理責任はどうなっているんですか。

H教授―うん、家庭ごみの回収処理の責任は市町村にあるんだけど、例外もあるんだ。
廃棄物処理法第6条の三では「市町村の技術や設備では適正に処理することが困難な一般廃棄物」を環境大臣が指定できることになっていて、市町村長がメーカーや販売者に協力を求めることができるし、環境大臣はその事業を管轄する大臣に必要な措置を要請することができるとされているんだ。
これを環境省では「適正処理困難物」と呼んでいる。

Aさん―なあるほど、廃消火器は適正処理困難物なんですね。ウチの市のゴミ回収のチラシにも「消火器、ガスボンベ、廃タイヤ…などは回収できません」とあったわ。

H教授―(困惑顔で)いやそれが、廃棄物処理法6条の三に基づいて環境大臣が指定しているのは、廃スプリングマットレス、廃ゴムタイヤ、廃テレビ、廃電気冷蔵庫の4種類だけだそうなんだ。

Aさん―おかしいじゃないですか。第一、使用済みのテレビや電気冷蔵庫は家電リサイクル法の適用製品だから、わざわざ指定しなくても禁止されているじゃないですか。市町村の条例で決める「適正処理困難物」ってなんのことなんですか。

H教授―自治体は一般廃棄物処理計画を作成し、それにのっとって回収処理をするんだけど、その計画の中で「排出禁止物」として、回収を行わないものを条例で定めることができる。
自治体によって少しずつ異なるが、廃消火器だとか、廃ボンベなどは大抵これに指定されているんだけど【17】、これを条例で「排出禁止物」でなく「適正処理困難物」という名称をつけているところが結構あるんだ。
廃棄物処理法を改正して6条の三を追加する前から、自治体によっては排出禁止物のことを「適正処理困難物」と呼んできたんだから、廃棄物処理法で6条の三を追加したときに、「適正処理困難物」とせず別の名称にすればよかったと思うけどね。
本当に廃棄物処理法ってのはわかりにくい法律だ。図解入りでわかりやすいものにしてほしいね。
【17】 自治体の指定する「適正処理困難物」
第22講(その4)「時評5 ─混迷・漂流する廃棄物問題」

Aさん―ふだんの不勉強がたたっているんですよ。

H教授―うるさい、だけど法律こそは国民にわかりやすいように作らねばいけないものだ。それを一部の法律専門家だけにしかわからないようにしてしまうというのが、冒頭で言ったように、明治以来の法律屋の陰謀で、理工系差別の元凶だと思うぞ。
それにしても環境省は、廃消火器はじめ個々の自治体が条例で回収しないとしているものの実態調査なんかはしているのかな。
廃棄物処理法6条の三のものと合わせて、これこそ拡大生産者責任(EPR)の適用が必要だと思う【18】。一日も早く法改正をしてほしいね。
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【18】 拡大生産者責任の適用
第9講(その2)「夏のできごと・2 ──環境基本法見直しに向けて」
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