環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
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No. 第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
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Issued: 2009.11.11
H教授の環境行政時評(第82講 その1)
東京オリンピック流れる

Aさん―東京オリンピックが流れましたね。ちょっと残念だわ。

H教授―仕方ないだろう。途上国が経済発展の起爆剤にしたいと、あの手この手で頑張っているんだから、もともとムリだったんだと思うし、立候補すべきじゃなかったと思うよ。
それでもブラジルに決まったときには、内心コンチクショーと思っても、にこやかにエールを送るのが当たり前だというのに、石原サンは悪態をついたと言うんだから、ちょっと人間として情けなくなっちゃうね。
で、ムダになった税金が100億円。新銀行東京では…【1】

Aさん―センセ、センセイ。世間には石原ファンも多いんですから、押さえて、押さえて。
そうそう、鳩山内閣発足から一ヶ月半が過ぎました。悪戦苦闘しているようですね(強引に話をそらす)。
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【1】 新銀行東京
第63講(その1)「新銀行東京に桜は咲くか」
友愛政治とはなにか ─鳩山所信表明
H教授―(渋々)うん、いよいよ国会が開幕。就任後初の所信表明演説を行った。
ふつうは役所が原稿を書くものなんだけど、鳩山サンは役所には書かせなかったようで、友愛政治というのを前面に打ち出した。

Aさん―「友愛」ってなんだか甘ったるいコトバですね。

H教授―フランス革命の旗印は「自由・平等・博愛」だったって習ったけど、この博愛は友愛とも訳すらしい。そして「友愛」はフリーメーソンの合言葉。
鳩山サンの祖父、鳩山一郎元総理がフリーメーソンだってのはよく知られている話だけど、それと関係があって使ったのかどうかは知らない。

Aさん―な、なんですって。フリーメーソン! 世界転覆の陰謀を企んでいるユダヤの秘密結社じゃないですか。

H教授―なにをバカなことを言ってるんだ。そんなのは一部の陰謀論系のトンデモさんの妄想に過ぎない。フリーメーソンなんて、今じゃあライオンズクラブとかロータリークラブと大差ないもんだと思っても間違いはないと思うぞ。

Aさん―えっ、そうだったんですか。
それはともかくとして、所信表明で特徴的なことは?

H教授―「政治主導・国民主導の政治への転換」「国民生活と弱者の重視」「地域主権」「コンクリートから人へ」等々、美しいコトバを羅列したけど、それが財源との絡みの中で、どこまで具体のものになるかだよね。
やや下降気味ながら、依然とした高い支持率と期待のなかで、マニフェストをめぐって相当苦悩しているようにみえる。“友愛”どころか“憂曖”といっていいのかもしれない。

Aさん―政府与党内あちこちに不協和音も聞かれます。そんな中で、いよいよ始まった国会の論戦、無事乗り切れるんですかね。
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政治家と官僚のビミョーな関係
H教授―数だけからいえば問題ないだろう。論理で勝てるかといえば、危ういところもあるけど。
それに官僚との関係を巡っては、朝三暮四のようなところもあり、混乱している感が拭えない。

Aさん―どういうことですか。

H教授―例えば、官僚の国会答弁を禁じるとしたんだけど、細々した事実関係のことを国会で質問されても、大臣や政務官が全部答えられるわけがない。大体、課長だって自分の課のことをすみずみまで知っているわけじゃあないからな。
かと思えば、総理も官房長官も知らないうちに、首相官邸から総理答弁資料の作成要領を各省に示し、あわてて取り消しただとか、与党議員の国会質問をやめさせるかどうかだとか、毎日のように新聞ネタになるような混乱が生じているみたいだ。
「質問取り」も官僚に行かせないとしていたが、方針変更、やはり官僚に行かせるようにしたそうだ。政治家が質問取りに行ったって、質問の意味がわからないようじゃあどうしようもないもんな。

Aさん―「質問取り」ってなんですか。

H教授―やれやれ質問取りも知らないのか。
国会の本会議では、あらかじめどういう質問にするかの通告があるんだけど、委員会などでは質問通告がなされるようになっていない。だから、どういう質問が出るかわからないので、事前に各省の補佐クラスが議員会館を回って、どういう質問をするか探ってくる。これを「質問取り」といっている。

Aさん―へえ、カルタ取りの親戚じゃなかったんだ。で、誰が取りにいくんですか。

H教授―国会詰めの職員や総務課の補佐が行き、アウトラインをつかんだら、直接担当する課の補佐が行き、詳細に質問内容を聞いてきたり、場合によっては質問をとりやめてもらったり、変更してもらったりもする。ボクも昔は随分と行ったよ。
当時の与党の議員なんかは、どういう質問をしたらいいか考えてくれなんてのもあった。「質問取り」どころか、「質問与え」だ。

Aさん―県でもそうなんですか。

H教授―K県の県議会の委員会では、事前の質問取りというのはやらなかった。
だから、各課の課長はどんな質問が出てもいいように、ものすごい量の資料を部下に持たせ、質問があれば、部下はその資料を選び出して、課長に見せるんだ。
資料探しに時間がかかるとその間は「暫時休憩」。

Aさん―センセイもそうしたんですか。

H教授―はは、ボクはカッコつけて、うすっぺらい自分で作った資料だけを持って行って、どんな質問に対しても適当に答えてた。
議員サンもそれほど勉強していないのがふつうだから、なんとかなったよ【2】

Aさん―また得意のハッタリで誤魔化したんですか。いつか罰が当たりますよ。
それはともかくとして、国会での官僚の出番についてセンセイのご意見は?

H教授―実際問題として、すべての問題に政治家が答えるなんて不可能だろう。
事実関係の質問だったら、官僚というより担当の役人に答えさせるのが一番だろう。
質問取りはやめて、事前通告制にするか、いっそのことぶっつけ本番で、わからないことはその場でテレビ電話か何かで担当の役人に聞くのもあり、とすればいいんじゃないかな。

Aさん―なるほど、そうすればあまり重箱の隅を突っつくような質問もしなくなるかも知れないし、答える政治家も勉強もするし、いつテレビ電話がかかってくるかもしれないとなると役所でも緊張感も漲るというわけですね。

H教授―面白いとは思うけど、まあ、ムリだろう。そんなことをすれば、国会会期中は全職員が出張できなくなってしまうかもしれないもんな。
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【2】 勉強していない議員
第18講(その6)「断想―原子力安全対策室長の頃」
概算要求をめぐって

Aさん―ふふ、では当分、国会論戦では珍問珍答が聞けるかも知れないですね。
ところで先日、概算要求再提出版が締め切られましたね。

H教授―ああ、総額95兆円、事項要求だけして金額の入ってないものを含めると実質97兆円。

Aさん―来年度の税収見込みは40兆円を切るかもしれないなんて話もありますよね。その倍以上の金額じゃないですか。財源はどうするんですか。

H教授―概算要求が97兆円もあれば、どんなに切り込んだとしても90兆円を割るのは難しく、最終的には赤字国債の大幅増加ということになりかねない。
藤井財務大臣は来年度の国債発行は50兆円に達すると認めている。

Aさん―各省の大臣は、各省の代弁者ではなく、内閣の一員として予算要求を随分切ったというんだけど、到底そうは思えないですね。やっぱり取り込まれちゃったんですか。

H教授―というか、数人の素人の政治家が、この道一筋の役人に理詰めで来られたら敵うわけがない。

Aさん―だから、「行政刷新会議」で3000の項目のうち、大幅圧縮や廃止を見込める240事業程度を選定し、「事業仕分け」という手法で「不要」だとか「民営化」だとかに区分けして、ムダを徹底的に省くというわけですね。

H教授―事業仕分けについては以前にも論じたことがあるが【3】、基本的にはムダかムダでないかというのは、国がやるべきものは何かという原則をきちんと定めない限り恣意的なものになってしまう。

Aさん―その事業仕分けをするメンバーに民主党の新人議員を大量に入れたというので、小沢サンがオカンムリ。人選を一からやり直したそうですね。
でも、本来、それを定めるのは菅サン率いる「国家戦略室」じゃなかったんですか。なんだか影が薄いのが残念ですねえ。
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【3】 事業仕分けの是非
第72講(その2)「「政策棚卸し」の行方」
[編註]脱稿後の11/9(月)、政府の行政刷新会議は事業仕分けの対象として、447の事業・組織等の案を発表した。
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