環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
第79講「新たな政策形成回路創出に向けて―わが国の政権運営の行方は」
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No. 第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
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Issued: 2009.11.11
H教授の環境行政時評(第82講 その3)
「コンクリートから人へ」―八ツ場、泡瀬干潟、普天間基地、鞆の浦…

Aさん―じゃ、ぼちぼち鳩山内閣の環境政策を見てみましょうか。
キャッチフレーズの一つが「コンクリートから人へ」。
前原サンはダム以外の治水、総合治水【7】ということを言い出しましたね。

H教授―うん、総合治水というのを考えるのならば、それこそ他のいろんな組織との連携が必要になってくる。縦割り社会の官僚主導政治では「言うは易く行うは難し」で、まずはムリ。
だから治水というと、河川区域内だけでやれる対策ということになってしまう。そして、その世界に閉じ込められてきた専門技官が主導し、政治屋と組んで、延々とダムの設置と堤防の嵩上げだけでやってきたんだ。
他の公共事業もおおむね同じ構造だ。

Aさん―でも同時に前原サンは、八ツ場ダムでもやみくもに「中止」を言うんじゃなく、必要性の再検証をまずはするって言い出してますよ。

H教授―中止が本音だけど、戦術として一歩下がったというところだろうと思うよ。やはり住民との対話が必要だろうしな。

Aさん泡瀬干潟埋立の行方も見逃せませんね。
【7】 総合治水
第22講(その2)「時評2 ─総合治水」

H教授―うん、10月15日に控訴審判決があり、基本的に地裁判決を支持し、「土地利用計画が定まっていないのに埋立を行うのは、経済的合理性を欠く」として公金の支出を差し止めた【8】

Aさん―で、県と市は上告しなかったんですよね。

H教授―うん、だけど一期工事を中止する気はないようで、東門沖縄市長は経済的合理性のある土地利用計画を至急決めれば工事は続行可能だと言ってるらしいし、県もそのようだ。

Aさん―センセイ、どう思われます。

H教授―(失笑して)「経済的合理性のある土地利用計画」だと誰が判断するのかな。
ま、前原サンはその翌日、今年度の入札をとりやめ、埋立中断を表明し、あとは「土地利用計画」を見てから判断するとしているが、おそらくやる気はないだろう。
経済的合理性があると思うなら、県と市が国の支援なしでやってみりゃあいい。ただし、結果的に失敗に終わり赤字を出した場合は、それを主導した首長や政治家は、せめて赤字分の半額は自分たちの私財で補填するぐらいの責任を取るべきだと思う。
ま、東門サンが自分ではじめた事業じゃないけど。
【8】 泡瀬干潟の控訴審判決
第81講(その2)「鳩山内閣と公共事業」
第71講(その3)「「時のアセス」を考える ──泡瀬干潟埋立に画期的判決」

Aさん―同じ沖縄では普天間基地の移転問題でも、鳩山内閣は苦戦しているみたいですよ。

H教授―うん、閣内不一致も目立つしね。
これまでの内閣は辺野古へ移転ということで進んできたんだが、民主党は国外・県外移設を公約としてきた。だが、米国の壁は厚く、沖合いに出すかどうかはともかくとして、辺野古への移設を容認する方向に進んでいるようだ【9】
岡田サンは嘉手納基地との統合を主張しているようだが、これも難しそうだ。
ボクは基地撤去で徹底抗戦すべきだと思うけどね。

Aさん―また、リアルポリティックスを無視した発言を。
あと、埋立がらみの話では、鞆の浦埋立に地裁はノーの判決を下しました。

H教授―県は告訴したからどうなるかはわからないが、埋立面積はわずか2ヘクタールで住民の利便性は随分増すらしいから、歴史的景観を損ねるとしても、以前なら文句なしに認められた埋立だろう。

Aさん瀬戸内法の規制は及ばなかったんですか
【9】 普天間基地の移転問題と辺野古への移設
第26講(その1)「辺野古沖埋立ての新転回」
第21講 「時評2−普天間飛行場の辺野古沖移設を巡って」

H教授―瀬戸内法は埋め立てについては瀬戸内海の特殊性に配慮せよとしているだけで、もともと確たる規制をしているわけじゃない。
具体的には審議会の答申で「埋立の基本方針」というのを定めている。その前文で「埋立は厳に抑制すベし」としていて、やむをえず埋め立てる場合の基本方針を列挙しているんだ。
鞆の浦の埋立はこれらからみると、直接は違背しないんじゃないかな。
公有水面埋立法の免許だって、この規模じゃ小さすぎて、環境省は関与できないし、県の環境部局だってフリーパスだったんじゃないかと思う【10】
そういう意味では、ほんとうに時代が変わったんだと思うな。

Aさん―センセイのご意見は?

H教授―現場を知らないから何とも言えない。
ただ受益者負担がゼロなら、住民の多くが埋立を望むのはある意味当然だろう。
住民の大多数が一戸あたり一万円でも負担する覚悟があるのなら、認めてもいいように思う。だけど、その覚悟がないなら、中止が妥当だろう。

Aさん―これも公共事業がらみの話ですけど、これまでタブーとされてきた羽田のハブ空港化を前原サンが言い出しましたよね。

H教授―うん、便利さじゃあ、成田とは格段の差だから、羽田周辺の住民が反対しないなら、ある意味当然だろう。
でも、だったらなんで激烈な反対運動を踏み潰してまで成田に空港を作ったんだということになるね。

Aさん―ちょっと伊丹と関空の関係のようですね。

H教授―うん、伊丹廃港を叫んでいた周辺市町は関空の整備が決まる頃になってから、伊丹存続に180度転換したものな。
関空を神戸沖に作ることに猛反対した神戸市も、ある日180度転換して、神戸空港建設に動き出した。
ホント、みな節操というものがないのかな。
【10】 埋立の基本方針
第10講(その4)「瀬戸内法行政の先駆性・先見性と限界」

Aさん―君子は豹変するんですよ。でも神戸空港は大赤字で大変なようですねえ。

H教授―自業自得さ。空港推進派だった元の市長サンや議員サンには私財でせめてその一部でも補填してもらってもいいんじゃないかな。

Aさん―センセイ、まだ20年前の恨みが残っているみたいですね【11】
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【11】 20年前の恨み
第6講(その4)「コーベ空港・断章」
温暖化対策最前線
Aさん―さ、次に温暖化の話です。毎講毎講、温暖化の話が絶えませんが、仕方ないですよねえ。いろんなニュースが次々と飛び込んでくるんだから。

H教授―うん、まずはポスト京都の枠組はCOP15で決めるとしていたが、気候変動枠組条約のデブア事務局長は新たな議定書の採択は「物理的に不可能だ」との認識を示し、政治的合意文書の作成に全力を尽くすとしている。
となると、京都議定書から新しい議定書が発効するまでの間の、空白期間ができる可能性だって出てきた。

Aさん―その合意文書はまとまるんですか。

H教授―さあなあ。先進国、新興国、途上国との溝はまだ埋まらないみたいだし、米国の温暖化対策法の成立にオバマさんは熱心で、下院では可決されたけど、上院での可決のメドはまだ立っていないようだ【12】。だとすると、かなりの苦戦が予想されるなあ。

Aさん―そうした中で、条件付ですけど、鳩山サンは2020年対90年比25%カットを打ち出しました。でも、その具体的な中身はまだ見えないですね。

H教授―うん、そもそも25%カットのうち「真水」がどれくらいかも決まっていない。

Aさん―真水?

H教授―うん、「真水」とはつまり国内の実際の排出量ベースでどこまで減らすのかということ。途上国へのCDMや、排出権購入などの京都メカニズムをも利用しての25%だろうけど、どの程度利用するつもりなのかも決まっていない。
いろんなケースでのシミュレーションをようやく開始した段階だし、またその場合の経済への影響も試算しなおしている。

Aさん―そういえば、麻生内閣のとき、2020年25%カットの場合の国民負担は年間36万円に達すると、経済官庁や産業界は大キャンペーンを張ったけど、計算ミスが発見、実は22万円だったと下方修正される一コマもありましたね。
しかも産業構造の低炭素社会への転換によるプラス分も、カウントしていないようですから、もっと下方修正される可能性だってあるんじゃないですか。

H教授―いずれにせよ鳩山サンはすべての政策手段を導入と言っているんだけど、まずは何が考えられる?
【12】 温暖化防止に関する世界の動き・米国の動き
持続可能な社会を考える 地球温暖化問題

Aさん温暖化対策税の創設を含め、税制の環境シフトですよね【13】。そして一日も早く国内排出量取引を試行だとかの間の抜けたことを言ってないで、厳しいキャップを課した本格導入を行い、国際市場と連携していくこと【14】フィードインタリフ(FIT)、即ち自然エネルギー固定価格買取制度の大幅拡充なんかですよね。
でもセンセイはどれが一番効くと思われます?

H教授― 一番効くかどうかは別にして、温暖化対策税がいよいよ本格的に導入されそうだ。昨年までは環境省の出した案は、税収が高々3600億円程度のもので、それすら産業界や経済官庁からの激しい集中砲火に晒され、流産したが、今回はまるで様変わり。
政府税調でも議論が開始されたばかりで、具体的な設計はまだできてないようだが、税収は2兆円から3兆円に達するという本格的なものになりそうだ。

Aさん―鳩山サンも必死ですよね。なんとしても国際公約を遵守しなくちゃあいけないし。
あ、そうか。それだけじゃないですね。むしろ、ガソリンの暫定税率撤廃による減収2兆5千億円をカバーしなきゃあいけないからですね。

H教授―鳩山サンは名家のボンボンだから、そんなことは言わず、国民の理解を得られるかどうかだなんて言ってるけど、財務省なんかはそうなんだろうなあ。

Aさん―国内排出量取引も現在は試行中ですけど、本格実施も早まるんじゃないですか。

H教授―そうだろうね。ただ国際的な排出量取引市場というのは、マネーゲームの場になっている感じがするね。実際の削減効果はどうなんだろう。
途上国援助は無論必要だが、排出量取引の国際市場には余り深入りしない方がいいんじゃないかな。まあ、無責任な直感だけど。
それよりは国内で厳しいキャップをかけ、それでもって国内のCDMにも力を入れた方がいいような気がする。
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【13】 温暖化対策税の創設を含む税制の環境シフト
第35講(その2)「環境税と特会見直しと第二約束期間」
第34講(その2)「環境税と特会見直し」
第9講(その3)「温暖化対策税の在り方を巡って」
【14】 国内排出量取引の本格導入
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」
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