環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
トップページへ
第84講「2010年新春呆談―平成維新のその先は?」
第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. 第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
page 1/4 
1
234
Issued: 2009.12.04
H教授の環境行政時評(第83講 その1)
鳩山劇場―事業仕分け顛末

Aさん―センセイ、「必殺仕置き人」見ました?。とっても痛快だったですよ。

H教授―ボクは藤沢周平なんかの江戸物の小説は好きだけど、テレビの時代劇はほとんど見ないんだ。

Aさん―違いますって。現代の話ですよ。来年度予算要求で、各省の担当者の説明を仕置き人が木っ端微塵に粉砕しちゃうんです。ちょっとお役所の担当者の方が気の毒に思えてしまうくらい。

H教授―ばか、それは「仕分け人」。行政刷新会議がやっている「事業仕分け」のことだろう。

Aさん―仕置き人も仕分け人も似たようなものじゃないですか。
あれは財務省の査定の露払いのようなものなんですか。

H教授―別に財務省の査定と100%連動するという決まりはないが、多分そうなるだろう。従来は財務省主計局の主査と各省の課長がやっていたような、密室でのやりとりをオープンにしたことに意義があるんだろう。
でも、なんとなく人民裁判みたいな雰囲気であまり好きじゃないなあ。

Aさん―え? センセイ、チェ・ゲバラのファンなんでしょう。だったら、人民裁判バンザイじゃないんですか。

H教授―いちいちうるさいなあ。冷静なやりとりというよりは、国民の喝采を狙ったような仕分け人の一方的な決めつけかたが好きじゃないんだ。
もちろん、事業仕分けがコイズミ劇場を上回る鳩山劇場として、大成功したことは認めるし、内容的にもっともな点も多々あるのは否定しない。
ま、それはともかくとして、あの事業仕分けにはいくつも疑問が残る。

Aさん―仕分け人の選定基準が明確じゃないですよね。かなり恣意的な気がします。
それに、そもそも国のやるべき事業とは何かを、まず明確にすべきだと思います【1】

H教授―うん、いずれももっともだ。他には?

Aさん―予算のムダ遣いということで、官僚が天下りしている団体へのオカネに厳しい仕分けが相次ぎましたが、天下り役人が皆仕事もせずに高給を取っているみたいに決め付けるのは、おかしいんじゃないですか。

H教授―うん、仕分け人の方が高給取りってことの方が多いんじゃないかな。
齋藤デンスケ氏のことは前講で話したが【2】、鳩山内閣は人事院総裁に厚生労働省事務次官だった江利川氏を任命した。
別にボクはこれに反対というわけじゃないんだけど、ダブルスタンダードはいただけないよねえ。

Aさん―他には何かありますか。

H教授―うん、そもそも3,000もある事業の中から447を選定したんだけど、それをどうして選んだのかがさっぱりわからない。
あらかじめスケープゴートとして、財務省が選んだような気がする。昔なら、各省と内々折衝して、人身御供として各省の方から出させたということも考えられるが、今の時代だと一方的に財務省が選んで、因果を含めて申し渡したんじゃないかな。
役人OBとしては、財務省に牛耳られるってのは面白くないなあ。
【1】 国のやるべき事業とは何かを、まずは明確にすべき
第82講(その1)「概算要求をめぐって」
【2】 齋藤デンスケ氏のこと
第82講(その2)「大蔵省の復活?」

Aさん―センセイ、自称「役人生態学のプロ」なんでしょう。選び方に何か傾向は見られないですか。

H教授―うーん、そうだなあ。どうも枝葉ばかり刈って、幹は残したような感じがする。

Aさん―どういうことですか。

H教授―いわゆる公共事業は、事業仕分けの対象事業に挙げられていても、結果は10%程度の予算縮減を求めるものが大半だ。
廃止だとか予算見送りとされたのは、ソフト事業などもっと額の小さいものが多い。
つまり巨額のハード事業に甘く、額の小さいソフトに厳しいと言えるんじゃないかな。

Aさん―ははあん、だから結果は「廃止」が50事業ほどで1,300億円、「予算計上見送り」が20事業ほどで1,600億円、予算削減が70事業ほどで4,500億円、〆て一兆円弱で終わっちゃったんですね。

H教授―他に公益法人や独立行政法人の基金からの返納が8,400億円で、事業仕分けの効果は1.6兆円に終わった。
基金からの返納分は、額面上は8,400億円かもしれないけど、実際はタンス預金ではなく、金融商品で運用しているだろう。だとすれば、巨額の含み評価損があるはずで、取らぬタヌキの皮算用に終わる可能性もあるんじゃないかな。

Aさん―例え1.6兆円が1兆円になったとしても巨額じゃないですか。

H教授―概算要求額は95兆円、事項要求のみのものをカウントすれば97〜8兆円だ。
今年度の政府当初予算は88兆円台だ。たかが1兆円や2兆円の切込みじゃどうしようもないだろう。

Aさん―10兆円を越す補正予算から、3兆円を執行停止にして取り戻したそうじゃないですか。

H教授―だけどまたもや補正予算を目論んでいる。菅サンは2.7兆円と言っているけど、亀井サンはそんなチンケなものじゃダメだと言っている。

Aさん―センセイならどうしました。

H教授―土建屋国家からの脱却のためにも、巨額のハードをざっくり切るのを主眼にすべきだろう。
どこどこでやるどんな規模のどんな施設かって明示していれば──これを「箇所付け」というんだけど──必要性の判断もある程度できるだろうけど、箇所付けもしていない公共事業なんてのは、来年度はとりあえず半減させりゃあいいと思うけどなあ。

Aさん―環境省の予算も、温暖化対策の普及啓発みたいなソフト予算は、ばっさりやられてますね。

H教授―たしかに定量的な効果を測定できないというのはその通りだね。
ただ、温暖化対策に関して言うと、他省庁や産業界の反対で、定量的な効果を見込める対策を取ろうと思っても取れなかったんだ。
でも鳩山内閣の出現で状況はすっかり変わった。来年度は定量的な効果が見込める施策を打ってほしいね。

Aさん―でもどうして財務省は、巨額のハード事業に甘いんですか。
土建屋国家の発想が抜けてないんですかねえ。

H教授―というよりも、公共事業でメシを食っている人たちはいっぱいいる。大量の雇用が失われることを恐れたんだろう。
あと以前にも言ったよね。予算には必ず人というか組織がくっついている。巨額のハードを「不要」などとしたら、一つの係や課にとどまらず、局自体がまるまる不要になってしまうところだって出てくる。
さすがにそれは避けたいというのがあったんじゃないか。
事業仕分けの対象事業の選び出しにしても、仕分け結果にしても、係なり課なりの組織がまるまる不要となるようなことは、避けるような配慮があったのかも知れない。

Aさん―ところで来年度の政府予算案は、いつ決まるんですか。COP15の結果なども、財務省の査定に反映させなければいけないでしょう?

H教授―年内に上げるそうで、12月30日と言っている。
ボクは査定実務のことはとんと疎いんだけど、COP15の結果の反映なんて、時間的にできないんじゃないかなあ。

Aさん―いずれにしても、せめて90兆円以下には抑えなければいけないですね。
財務省は、事業仕分け結果以上に、大鉈を振るえるのか、まずは高みの見物ですね。
 ページトップ
page 1/4 
1
234
次のページへ

Copyright (C) 2004 EIC NET. All rights reserved.