環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第84講「2010年新春呆談―平成維新のその先は?」
第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
第81講「鳩山革命の行方は?」
第80講「政権交代と環境政策」
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No. 第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
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Issued: 2009.12.04
H教授の環境行政時評(第83講 その3)
原発の動きープルサーマルと老朽化対応

Aさん―温暖化の話はこの程度にして、あとはCOP15を見守りましょう。
久々に原発の話題です【11】
プルサーマルがいよいよ動き出したそうですね。

H教授―うん、佐賀県の九州電力玄海原発3号機で試運転がはじまり、来週には営業運転に入るという話だ。これを皮切りにプルサーマルが本格始動することになりそうだ。
また原発関連の話では、来年で運転40年になる福井県の関西電力美浜原発1号機が、あと十年間廃炉にせずに運転延長する申請を出したとのことだ。

Aさん―国はOKするんですか。

H教授―これから原子力安全・保安院で半年かけて審査するんだ。
もともと使用年限や耐用年数に明確な規定はなかったんだが、96年には、運転開始から30年を過ぎた原発は10年ごとに老朽化対策の報告書をつくり国に提出することを義務付けた。国はその報告書をもとに安全性に関してチェック、審査することとしたんだ。そして最大60年までは運転可能とする方針を打ち出しているんだ。

Aさん―そして安全性が担保されなかった場合や60年を過ぎた原発は廃炉にするわけですね。廃炉って結構大変じゃないんですか。
【11】 原発の話題
第18講「キョージュ、無謀にも畑違いの原発を論ず」

H教授―そうらしいね。福井県の日本原電敦賀原発1号機は、美浜原発1号機より半年早く運転開始した、国内最古の商業用原発なんだ。代替の3号機が2016年に運転開始するのを待って、廃炉するらしい。
作るときに廃炉のことまで考えて設計施工しているわけじゃないし、テレビでやってたけど、建設当時の設計図も完璧に揃っているわけじゃあないみたいで、結構いろんな問題が起きるんじゃないかな。そういう意味ではこの面でも原発は「トイレなきマンション」なんだね。

Aさん―国際的に温暖化対策との絡みで、原発の評価はどうなんですか。

H教授―原発を温暖化対策の切り札として捉えているのは日本とフランスくらいだろう。チェルノブイル以降欧米は一気に脱原発に傾いた。その後、米国やドイツ、イギリスなどで温暖化対策に関して原発再評価の動きは出ているが、それはあくまで補完的なものだ。この点に関してもCOP15の議論をみてみる必要があるね。
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生物多様性COP10に向けて

Aさん―さて、12月はCOP15の話題で持ちきりでしょうが、いよいよ年が明ければ生物多様性条約のCOP10の年ですね。

H教授―うん、生物多様性は何度もこの時評で取り上げているんだけど、もう一つ認知度が低いのが残念だ【12】
国際的には気候変動=温暖化対策と並ぶ大問題だと捉えられているし、気候変動が生物多様性に重大な影響を与えることや、生物多様性の宝庫である熱帯雨林などの森林が、GHGの吸収源、ストックとしての役割を果たしているんだけどなあ。

Aさん―生物多様性条約は、気候変動枠組条約と同じ92年の地球サミットで採択されたんですよね。

H教授―うん、生物多様性の保全、生物多様性の構成要素の持続可能な利用と、遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分という三つの目的があるんだ、

Aさん― 一番最後の「利益の公正かつ衡平な配分」というのは、それまではそうじゃなかったということですか。
【12】 何度も取り上げた「生物多様性」の話題
第49講(その3)「生物多様性保全を巡って」
第57講(その3・4)「第三次生物多様性国家戦略案まとまる」「Hキョージュ版 幻の生物多様性国家戦略」

H教授―うん、例えば熱帯雨林の植物から得られた薬などの利益は、特許に守られて、原産国ではなくほとんどを開発国、つまり先進国側が得ているというのが途上国側の姿勢。
ほとんどの先進国も、一般論としては受け入れざるを得ないとして批准したんだけど、国益第一主義の米国だけは頑として拒否し、いまだに批准していない。
オバマ政権に変わったんだから、一日も早く議会を説得して批准してほしいね。

Aさん―締結国会議COPが隔年で開かれ、来年はその第10回目。そして、日本の名古屋で開催されるんですね。

H教授―うん、そして重要なのは、2010年を節目の年として「現在の生物多様性の損失速度を2010年までには顕著に減少させる」とする「2010年目標」を掲げていること。このCOP10ではその総括と新たな目標を決めねばいけない。

Aさん―そういう意味では、ほとんど目標を達成できてないんじゃないですか。

H教授―ブラジルやインドネシアは、温暖化対策としての意味もあって、熱帯雨林の保全を重要視しはじめたじゃないか。日本だって、生物多様性の宝庫としての「里山保全」について、総論として異議を唱える人はほとんどいなくなったし、生物多様性基本法もできた【13】
ただ、政治家レベルでも生物多様性の保全というのは総論どまりのことが多いんだよねえ。

Aさん―そういえば構想日本の「政策棚卸し」で、「SATOYAMAイニシアテイブ」が叩かれていましたね【14】。環境省でもその後、いろいろ新たな動きがあったんでしょう。

H教授―この時評で取り上げた自然公園法改正だって、外来生物法だって、海洋基本法にしたって全部生物多様性に関係あるといえばある。泡瀬干潟の問題だってそうだよね。最近では大西洋の本マグロに続くクロマグロの規制強化だってそうかもしれない【15】
もっと直接的なものとしては、この夏に「生物多様性民間参画ガイドライン」を公表したことがあげられる【16】
生物多様性保全への活動を民間が行う際のガイドラインで、実例もいっぱい挙げている。
企業のPR戦略やイメージアップのためのCSRとして活用してくれればいいけど、この不況だろう、企業としては、このガイドラインに拠って活動することによる具体的なメリットが付与されないと、なかなか動きがはじまらないのではと危惧するな。
【13】 生物多様性基本法の制定
第65講(その4)「生物多様性基本法成立」
【14】 政策棚卸しでも叩かれていた「SATOYAMAイニシアティブ」
第72講(その2)「「政策棚卸し」の行方」
【15】 時評で取り上げた話題
自然公園法改正
第73講(その2〜3)「自然公園の新たな海域保護制度を予想する」
外来生物法
第25講(その4)「バスに乗り遅れるな ──特定外来生物ドタバタ劇」
海洋基本法
第70講(その2)「海洋保護区の設定、検討開始」
泡瀬干潟の問題
第71講(その2)「「時のアセス」を考える ──泡瀬干潟埋立に画期的判決」
大西洋の本マグロ問題
第71講(その3)「マグロとクジラ」
【16】 生物多様性民間参画ガイドライン
環境省報道発表(8/20) 「生物多様性民間参画ガイドライン」の公表について(お知らせ)

Aさん―滋賀銀行は、取引先の生物多様性保全に向けた取組を評価・格付けし、評価の高い企業には融資金利の優遇策を講じることにしたそうです。

H教授―うん、そういう動きがどんどん出てくればいいんだけどねえ。
あと、先月神戸で「神戸生物多様性国際対話」が開催された【17】

Aさん―センセイ、行ったんですか。

H教授―申し訳ない。開催されるということすら知らなかった。

Aさん―ダメですねえ。

H教授―校務で忙しかったんだから、仕方がないだろう。第一、英語だろうし、聞いたってわからないだろう。

Aさん―ぷっ、それが本音ですか。
【17】 神戸生物多様性国際対話
環境省報道発表(10/20) 「神戸生物多様性国際対話」の結果について(お知らせ)

H教授―う、うるさい。
とにかくこの神戸の会合で、「ポスト2010年目標日本提案(素案)」が提示された【18】

Aさん―その中身はどんなものなんですか。

H教授―2050年の中長期目標として、「生物多様性を現状以上に豊かなものにする」ことを謳いあげている。で、そのために2020年の短期目標として、3つばかり挙げているんだけど、これは抽象的過ぎてよくわからない。
むしろ、そのあとに挙げている個別目標の方がわかりやすい。
「A 生物種を保全する活動を拡充し、生態系が保全される面積を拡大する」から「I 生物多様性の保全と持続可能な利用に対する多様な主体の参加を促進する」までの9つの個別目標と、そのための達成手法と評価のための数値指標を挙げている。

Aさん―ま、確かに生物多様性の保全ってコトバ自体がわかりづらいから、日本でもなかなか普及しにくいですねえ。名古屋での会議がきっかけになって、少しでもそういう認識が広がっていけばいいですねえ。

H教授―ま、「里山保全」って言えば、誰だって総論賛成だろう。同じように、多様性保全の具体的な諸問題ごとに、わかりやすいキャッチフレーズと具体的な解決策を考えていけばそれでいいだろう。
あとは生物多様性基本法25条にある戦略的アセスメントの、一日も早い具体化を図ることだ。

Aさん―さ、あとは何かありましたか。
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【18】 「ポスト2010年目標日本提案(素案)」が提示された
環境省報道発表(10/20)添付資料
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